富士通、日本IBM、沖電気工業の3社は全省庁の人事・給与を管理する新型システムの設計を人事院から受注した。政府の基幹業務用で初めて無償基本ソフト(OS)の「リナックス」を使う。電子政府計画が今後進むなか、独自OSと大型コンピユーターを使う旧型から低コストな新型への切り替えが動き出す。政府全体で年間約7千億円の旧型システム運用費の半減が見込まれる。
運用コスト半滅見込む
新システムは職員の人事記録の管理や給与計算など1府12省庁の人事関連業務を一括処理する。これまで各省庁は人事・給与業務を個別に処理してきたが、新システムの導入で2005年度から順次、業務を一本化する。
対象は中央省庁の全職員約80万人で、リナックスを使った国内最大規模のシステムになる。
富士通など3社は新システムの設計を1億88百万円で受注した。設計は2003年度中に終える。2004年夏にシステムの本格開発で改めて入札するが、3社が引き続き開発を手がける可能性が大きい。開発費用は20億−30億円とみられる。
政府の基幹情報システムはこれまで高価な大型コンピユーターを使っている。新システムは小型で低価格な高性能サーバーやパソコンで構成する。また、大型コンピ.ユーターは独自開発のOSを使うが、新システムで使うリナックスは利用料がかからない。機器、ソフトとも安いため、新システムの運用コストは半分以下になるもよう。
サーバーやパソコンで構成するシステム用のOSには米マイクロソフトの「ウィンドウズ」などもあるが、これらと違ってリナックスは無償であるうえにソフトの設計図を公開している。このため、ユーザーはプログラムを自由に書き換えて改良することができ、情報漏えいの防止などシステムの安全対策をしやすいといわれる。
今回の人事・給与システムが本格稼働すると「人件費を含めた人事管理業務の総費用は現行の3分の1以下になる」(人事院)とみている。
自民党の「e−Japan重点計画特命委員会」が昨年12月に発表した調査結果によると、中央省庁が保有する年間運用費10億円以上のシステムは現日本郵政公社を含めて86件で、そのうち41件が大型コンピユーターを使う旧型システムだった。旧型の運用費合計は年約7千億円と全体の8割を占め、同委員会は予算の効率活用のためにシステム刷新を求めていた。
政府は業務の情報技術(IT)化を進める「電子政府構築計画」で旧型システムから新型への移行を加速する方針。
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