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2007年10月16日

シルクロード紀行① 「天山北路を行く・上」

 九月の中旬から、神戸にあるNPO「黄河の森緑化ネットワーク」の植樹ワーキングツアーに同行して、中国・天山北路を訪ね、黄土高原・蘭州での植樹ボランティアに参加させてもらった。酷暑の日本とは様変わり。あこがれのシルクロードは爽やかな冷気に満ちていた。


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 中国の最北にある新疆ウイグル自治区は、中国全土の六分の一、日本の約四倍もの広さがある。その中央に、長さ2000キロ・メートル、幅400キロ・メートルと、日本の青森から鹿児島をすっぽり入ってしまう巨大山脈、天山山脈が、東西に延々と連なっている。

 飛行機の窓から見ると、9月というのにもう山頂に雪を抱いていた。木が一本もない、山塊だけの風景が一時間以上も続く。 この天山山脈の北側を走るのが、「草原の道」と呼ばれる天山北路。シルクロード三幹線の一つだ。 国境に近い街・イリ(伊寧=イーニン)ら隣国・カザフスタンに向かう天山北路、現在の国道312号線の主人公は、トウモロコシの黄色い帯と茶褐色の羊の群れだった。

 朝8時にホテルを出た貸し切りバスは、トラック、荷馬車、人の群れでごった返す街中で警笛を鳴らし続ける。少し郊外に出て、やっとスピードを上げた。

 歩道だけでなく車道にまではみ出して、収穫したばかりのトウモロコシを広げて乾燥させている黄色い帯が、断続的に続いている。なんと、いくつかの帯の上には鉄製の簡易ベッドが載っている。ベッドで、まだ布団をかぶっている人がいる。徹夜で、トウモロコシの番をしていたのだろう。すでに粉にしたものをクワでひっくり返して乾燥させる作業に追われている人もいる。天山山脈北側の比較的温暖な気候とはいえ、年間降雨量が260ミリ前後と少ないからこそできる“離れ業”だ。

国道に入る道路となると、トウモロコシは遠慮会釈なく道一杯に広げられている。

 14世紀に、この地を支配したモンゴル族の王の陵墓を見学するためわき道に入った時には、トウモロコシの皮をむきながら、無邪気な笑顔でバスの窓を見上げる子どもたちの横を、ようやくすり抜けることができた。

 もっと離合に苦労したのが、冬の間の飼料に使う枯れ草を満載した荷車や三輪車。その山は、車体の3,4倍。枯れ草は、車体から数メートルははみ出している。沿道の農家の軒先には、屋根より高く枯れ草が積まれていた。

 バスが時々、急にスピードを落とす。前を見ると、羊や牛の群れが道一杯に広がってやってくる。警笛を鳴らしながら、ゆっくり進むと、羊の群れは悠々と少しだけ道を空ける。後方で馬に乗ってムチを持っている羊飼いらは知らん顔だ。

 羊や牛、時には馬の群れは、いつも西、天山山脈のふもとからやってくる。山の草原にもそろそろ雪が降るため、ふもとにある“秋の牧場”への引越しラッシュなのだ。

 沿道の草原にポツポツとあるパオ(遊牧民の移動式テント)の横では、蜂蜜のビンを並べて売っていた。しかし、蜂の巣箱は、もう片付けられて、ほとんど見られない。周辺の高山植物は、まだ枯れてはいないが、花はすっかり散っている。

 草原の道・天山北路の冬支度は、真っ盛りだった。