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2008年1月 5日

読書日記「星の巡礼」(パウロ・コエーリョ著、山川紘夫・山川亜希子訳、角川文庫

 なんとも難解かつ不可解な本で、なんとか通読はしたものの、そのまま放り出していた。

 話しは変るが、今年の元旦の昼に近くの神社の前を通ったら、数年前まで数人しか初参りの人なんていなかったのに、200人前後の人々が道まであふれて並んでいた。友人Mさんの新年メールによると、40年間、閑散としていた自宅近くの神社も同じような状況だったらしい。

 世の中、なにかが、変ってきたのだろうか。

 賀状を整理していると、昔、取材でお世話になったIさん(元・大手家電会社役員)が、ご夫婦で四国八十八カ所霊場巡りを始めておられた。「よりよく生きるための示唆を求めて」と、書いておられる。2年前にすでに霊場巡りを終えられた元・大手銀行監査役のJさんに続いて二人目だ。

 ハッピーリタイヤーされた方々が、必死に自分探しをしておられる。

 四国や熊野だけでなく、海外でも巡礼ブームなのだそうだ。とくに有名なのが「星の巡礼」の舞台でもある、スペイン・サンティアゴ巡礼。フランス北部からサンティアゴまで約800キロを約40日かけて歩く。世界各国から訪れる年間10万人もの人が巡礼する、という。

 昨年夏には、日経新聞が夕刊でサンティアゴ巡礼記を連載、NHKハイビジョンも長期ルポを放映した。1993年に世界遺産に登録された影響も大きいようだが、日経の連載には「ブラジル人作家、コエーリョの『星の巡礼』が巡礼ブームに火をつけた」と書いてある。

 そこで、本棚の本をもう一度、取り出してみる気になった。

 解説などを読んでみると、これはコエーリョ自身の自伝的小説のようだ。主人公・パウロは、RAM教団というスペインのキリスト教神秘主義の秘密結社に出会うが、入会試験に失敗して、再修業のために師匠とともに「星の道」という巡礼路を歩きながら、なんとも不思議な実習を重ねていく。

 各章の終わりに、この自習の内容がコラム風に紹介されている。

 例えば、第一の自習「種子の実習」。「地面にひざまつき、おだやかに呼吸をする。次第に自分が小さな種子であり、土の中で心地よく眠っている感覚を抱く」。この実習を、連続7日間、いつも同じ時刻にする。

 このほか、水たまりをじっと見ながら、直感力を呼び覚ます「水の自習」。ゆったりとリラックスしながら聖人と光のあふれた青い天空にいるのを実感する自習・・・。

 解説者は「誰もがたどることができる道で、すべての人が持つ内なる力を、自分にも発見する物語」「人間のスピチュアリティ、霊性の広がりを追求している」と書く。

 国立民族学博物館の大森康宏名誉教授は、最近の巡礼ブームについて「科学技術がつくりだした現代の仮想社会は、邪魔者をどんどん排斥していく。そんな時にどう生きるか。ゆっくり、ゆっくり目的地を目指す巡礼の旅に身を委ねたくなる」(2007年12月27日、日経夕刊)と、インタビューに答えている。民博は、今週開催した特別展「聖地巡礼 自分探しの旅へ」を、この夏に、古代の聖地、出雲大社で開くという。

 禅宗の座禅や神道の水ごり、中国の気功の修行者たち、そして「千の風になって」の歌に癒され、江原啓之らのスピチュアリティ本が並ぶ書店のコーナーに群がる若い女性たちも、必死に自分探しをしている、ということなのだろう。

 「星の巡礼」に比べると、同じ著者の作品で、やはり世界的なベストセラーになったという「アルケミスト 夢を旅した少年」(山川紘夫・山川亜希子訳、角川文庫)は、もう少し分かりやすい、波乱万丈の自分探しの旅物語。

 ただし、スピチュアリティルなるものが、もうひとつ理解できない私は、途中で放り出したくなったが・・・。


星の巡礼
星の巡礼
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パウロ・コエーリョ 山川 紘矢 山川 亜希子
角川書店 (1998/04)
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4 私もいつか巡礼の旅へ出かけてみたいなぁ
5 人生のバイブル
5 アルケミストの背景がみえる。



アルケミスト―夢を旅した少年 (角川文庫―角川文庫ソフィア)
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おすすめ度の平均: 4.5
3 アルケミスト―夢を旅した少年
5 後悔よりも前に進むこと
4 夢は必ず叶うのか




(追記:2012/6/18)


 映画「星の旅人たち」を見てきた。
 表題の「星の巡礼」とは、まったく関係がないが、この本が火をつけたといわれるスペイン・サンティアゴ巡礼がテーマとあっては、見逃すわけにはいかない。

 神戸の映画館に入って、いささか驚いた。日曜日の夕方からの上映とあって、観客は数十人だったが、そのなかに後ろ姿の髪の毛に白いものが混じった"団塊世代"と思われる男性が5人はいる。「自分探しの旅」を求めて、サンティアゴ巡礼に興味があるのだろうか。

 2008年に、このブログで紹介した、元・大手家電メーカー役員のIさんは、実際にサンティエゴまで出かけたらしい。といっても、フランス国境から800キロは歩かず、主な巡礼地をバスで訪ねながら、ポイントのところを歩くツアーだったようだ。

 日本人で出かける人も、このところ増え続け、NPO法人日本カミーノ(巡礼路の意)・デ・サンティアゴ友の会というNPO法人まで活躍している。WEB上には、いくつか巡礼記がUPされていた。

 映画は、60過ぎのアメリカ人眼科医の男性が巡礼に出発しようとして事故で死んだ息子の代わりの巡礼を決意、肥満が悩みのオランダ人男性、家庭内暴力の傷を持つカナダ人女性、作家としてスランプに陥ったアイルランド男性と、つかず離れず800キロを踏破、互いになにかを見つける話し。
 いささか理屈っぽい筋立てだが、すばらしい世界遺産の巡礼地とスペインの美しい道が、見る人の心を揺さぶり、駆り立てる。