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2008年1月14日

読書日記「よく生き よく笑い よき死と出会う」(アルフォンス・デーケン著、新潮社

 昨日13日(日)、西宮のプレラホールというところで「兵庫・生と死を考える会」(会長・髙木慶子聖トマス大学客員教授)の設立20周年セミナーがあった。


 その会場で、講演されるデーケン神父(上智大学名誉教授)の著書十数冊がロビーで販売されていた。「どれが、一番分かりやすいですか」と聞き、秘書の方に推薦していただいたのが、この本。

 2003年1月の教授退官最終講義をもとに発刊されたもの。長年「死生学」に取り組み、「死への準備の大切さ」を説いてこられたデーケン神父の経験、考え方が分かりやすくまとめてある。


 著者は、4歳の妹の死や生死をかけて反ナチ運動に投じた父などの体験を語りながら、死の準備のための処方せんを具体的に説いておられる。


 デーケン神父は、様々な危機や価値観の転換に見舞われる中年期を過ぎた時期を、豊かな老いを生きていくための「第3の人生」と呼んでいる。

 そして「第3の人生」の6つの課題を示している。

  1. 過去の肩書きなどを手放し、前向きに生きる
  2. 人を許し、わだかまりを残さない
  3. 自分の人生を支えてくれた多くの人たちに感謝する
  4. 旅立ちの挨拶をちゃんとしておく
  5. 遺された人たちに配慮して、適正な遺言状を作成する
  6. 自分なりの葬儀方法を考え、周囲に知らせておく
 の6つ。

どれ一つできていない自分に驚きながら、その部分に線を引いた。


 心震わせながらしか読めなかったのが、まもなく死が訪れることを知った人が体験する「死へのプロセスの6段階」という項目。

  1. 死を告知された人は、まず自分が死ぬという事実を否定する
  2. 「なぜ、今、死ななければならないのか」と、怒りの問いかけをする
  3. 医師、運命、神に対し、死を少しでも先に延ばしてくれるようにと交渉を始める
  4. うつ状態になる
  5. やがて、死が避けられないという事実を受け入れる
  6. 死後の世界を信じる人は、永遠性への期待と希望を抱く・・・。


 私は、三年前の9月に女房を亡くした。

 長年わずらっていた重度のリュウマチ治療のために飲んでいた強い薬で腸に穴が開き、緊急入院して3ヵ月ちょっとしたころ。


 見舞いに行くと「きのうの夜は、死神がベッドわきに立っていたが『まだ死なないわよ。帰りなさい』と、怒鳴ってやったら消えてしまった」と、ちょっと得意げに話した。

 まだ、完治を目指して治療に当たってもらっていた時期だったが、彼女は、心のどこかで死を意識していたのだろう。


 死の数週間まえには「手を握って!まだ死にたくない」と泣いた。数日前には、麻酔薬で朦朧とした意識のなかで「カトリックの洗礼を受けますか?神の愛を信じますか」というN神父の何度もの問いかけに、しっかりとうなずき、緊急洗礼を受け、天国に行ってしまった。


 私の大学時代の友人で、作詞家の松本礼児が、このセミナーでトークショーをやらせていただくことになり、彼のCDをロビーで販売させてもらいながら、この本を読んだ。あの時のことが、本の記述と二重写しになった。


 松本礼児はトークショーで「こども達のかけがえない命を守ってください」という気持ちで自ら作詞した「小さな手」(作曲:MIKI/編曲:竜崎孝路)という歌を歌った。

遊びつかれて ぐっすり眠る 君の寝顔を 飽きずに眺める

近頃ちょっと 生意気だけど 寝息をたてて 天使になった

可笑しいくらい ママに似ている 耳の形も 小さな爪も

かわいい拳 握って眠る 息子よ何を夢見てる

どんな未来を 積むのだろう こんなに小さな手のひらで

 セミナーを終えて一階に出た時、松本礼児は数人の若者に囲まれ、記念撮影を頼まれた。71枚目のCDが売れた。彼らは涙ぐんでいた。「歌って、不思議なものだなあ」と思った。

(追記:2011/12/20)※松本礼児さんは、2011年12月19日、死去されました。ご冥福をお祈りいたします。

よく生き よく笑い よき死と出会う
アルフォンス・デーケン
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5 死について考える
5 死への準備教育