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2010年6月23日

「デンマーク紀行」(20104・29-5.5)・下

 デンマークから帰ってから、同行した友人Mが知り合いの骨董屋の亭主から、こんなことを聞いてきた。「あそこは"世界一美しい美術館"と言われているんです」

 ルイジアナ現代美術館。デンマーク語とは思えないこの美術館の名前は、オーナーの妻の名から取られたものらしい。クロンボー城のあるヘルシオンの3つ手前のフムレベック駅から歩いて15分ほどの住宅地のなかにある。
 ツタに囲まれた瀟洒な邸宅のドアーを押すと世界が一変する。ガラス張りの明るいロビーが広がり、大きなガラスと木の柱と天井でできた渡り廊下が直角に曲がり、曲線を描いて伸びていく。その向こうには、大木と芝生の庭園、スエーデンを臨むオアスン海峡の碧い海。
  渡り廊下の曲り角に、そして池を臨む吹き抜けのガラス窓の脇に、ジャコメッティの作品がさりげなく置かれている。この彫刻家の作品は今年2月、ロンドンでのオークションで94億円もの高値で落札されたばかりだ。
 美術館のホームページでは、広い展示場の真ん中に展示されている巨大な金色の親指像が、行った日はなぜか、人でごった返すカフエの片隅にデンと据えられていた。

 渡り廊下が結ぶ建物は、庭と碧い海に溶け込むように建っている。大きな建物は地下に潜っている。5期にわたる拡張工事で一番大切にされたのは、周囲の環境との調和だった、という。
 「デンマーク デザインの国」(島崎 信著、学芸出版社)という本には、この美術館について「池と踏み石や、庭木の配置なども、日本の建物と庭・・・から大きな影響を受けたと設計者自身が述べている」と書かれている。
 そう言えば、渡り廊下から柳と笹の木越しに見えた庭の一隅。濃い緑のツタに埋もれた石柱の向こうにあった石像は、なにか"お地蔵さん"に似ていたような。

 午前中の雨もやっと止んだ。庭園にあるヘンリー・ムーアアレクサンダー・カルダーイサム・ノグチの作品群をなんども巡回、大木を仰ぐ。入り江に降りる階段に座ってほおづえを突く。北海の時間が悠々と過ぎてゆく・・・。

 帰りはバスに乗ろうと思って、つい大勢の人が待っていたのにつられてヘルシオンの街まで戻ってしまった。
 おかげで約20分。デンマークのリビエラといわれる美しい海岸線を満喫。茅葺の屋根を載せたコテッジがいくつもあった。

 朝の9時半すぎにアメリエンボー宮殿に着いたら、今は宝物展示室になっているクリスチャン8世王宮殿の前にもう観光客の長い列ができていた。
 隣の宮殿にはデンマーク国旗が翻っていたから、現・女王が在宮しておられるということらしい。その隣の宮殿は国賓のレセプションルームとして使われ、もう1つは宮内庁。4つの宮殿が広場を囲んでいる。どこかの国とは大違いの簡素ぶりだ。
 宮殿の周りを熊の毛皮帽をかぶった衛兵が巡回している。衛兵の赤い待機小屋をよく見ると、ハート型ののぞき穴があいている。これも、デンマーク・デザイン?

   時間つぶしに近くのチャーチル公園を歩き、有名デザイナーのものらしいオフイス・チェアのショウルームをのぞき、デンマーク工芸博物館で午前11時の開館を待つ。デザイン専攻らしい3人の若者も自転車でやってきた。元は王立の病院だったらしい。

 入って左側すぐのところが日本や中国の日用品展示コーナーで、寿司屋のノレンやヒノキの風呂まで並んでいる。デンマークのモダン様式デザインを創設したアルネ・ヤコブセンが生涯作り続けた簡素なチェアのコーナーや歩行者天国・ストロイエに本店のあるロイヤル・コペンハーゲンの作品群、細く長い木箱に保存されている精緻な刺繍コレクションの前で、デザイン好きの友人は動こうとしない。

 アルネ・ヤコブセンといえば、コペンハーゲン滞在中に泊ったSASロイヤルホテル も、この人が1960年に設計し"デザイン・ホテル"と呼ばれる。20階建て、ガラス張りの高層ビルは市内のどこからも探せて、旅行者には便利だが、当時の市民は驚いたことだろう。
 建物だけでなく、家具、照明、テキスタイル、ナイフやスプーンまでデザインしている。一階カフェにある皮張りの「セブンチェア」や筒型の「AJランプ」、最上階のレストランにある、体を包み込むような「スワンチェア」、ロビーの「エッグチェア」。いまだに作り続けられている逸品である。

 「質素でも実り多い生活、自立のための福祉、木への愛着・・・」
先の本の著者、島崎 新・武蔵野美術大学名誉教授は、デンマークのデザイン力を支えるものとして、こんなことを挙げている。

そんな現場にふれられる機会が来る日を夢みつつ・・・。

デンマーク紀行写真集 3
ルイジアナ現代美術館;クリックすると大きな写真になります中国人作家の作品;クリックすると大きな写真になります廊下から見る石庭;クリックすると大きな写真になります彫刻と海、空、庭園のコラボレーション;クリックすると大きな写真になります
池を臨むロビーのそこかしこに、ジャコメッティの作品が(ルイジアナ現代美術館で)屋内展示場で展示されている中国人作家の作品ガラス張りの廊下から見る石庭彫刻と海、空、庭園のコラボレーション
ヘンリー・ムーアと北海;クリックすると大きな写真になりますアメリエンボー宮殿;クリックすると大きな写真になります衛兵と赤い待機所。;クリックすると大きな写真になります公園のチャーチル像;クリックすると大きな写真になります
ヘンリー・ムーアと北海女王在宮。デンマーク国旗がはためく(アメリエンボー宮殿で)衛兵と赤い待機所。小さくハートののぞき穴が公園のチャーチル像。ナチス・ドイツに占領されたデンマークの解放に努力したという。下を向いているのは、落とした葉巻を探しているためとか
家具のショールーム;クリックすると大きな写真になります日本の日用品のコレクションコーナー;クリックすると大きな写真になりますロイヤル・コペンハーゲンの作品;クリックすると大きな写真になりますオートバイと木製いす;クリックすると大きな写真になります
この付近には、家具のショールームが多い日本の日用品のコレクションコーナー精緻なロイヤル・コペンハーゲンの作品オートバイと木製いす。モダン様式の歩み
博物館の中庭;クリックすると大きな写真になりますSASロイヤルホテルで;クリックすると大きな写真になります「セブンチェア」;クリックすると大きな写真になりますカフェ柱の「AJランプ」;クリックすると大きな写真になります
菩提樹の並木が続く博物館の中庭最上階レストランにあるヤコブセンの写真と「スワンチェア」(SASロイヤルホテルで)1階カフェに並ぶ「セブンチェア」カフェ柱の「AJランプ」
テーブルの支柱;クリックすると大きな写真になります
ふと足元を見ると・・・。テーブルの支柱にこんなデザインが。


book
デンマーク デザインの国―豊かな暮らしを創る人と造形
島崎 信
学芸出版社
売り上げランキング: 336620
おすすめ度の平均: 4.5
4 心地よい・生活に密着したデザインを一考する上で、必須かも
5 多くの名作家具デザイナーを生み出した国を訪れる

2010年6月 8日

「デンマーク紀行」(2010・4・29-5.5)・中


 デンマークへの旅程を組んでいて、テーマを2つに絞ってみようと思った。
 1つは、列車を使って、この国にある世界遺産建築や古都を訪ねること。もう1つは「デザイン王国」と言われるこの国のすばらしさに少しでもふれられる機会があったらと・・・。

 コペンハーゲンに着いて3日目の朝、ホテルの目の前にある中央駅に向かった。

 デンマーク国内なら3日間乗り放題という「ユーレイル パス」(1万1千円)を日本で買っておいたが、まず窓口の駅員さんにパスポート番号や有効期限(1か月)を書き込んでもらい、2か所にスタンプとサインをもらわなければならない。列車に乗る日は自分で書き込むのだが、月日を書く欄が有効期限の欄と違っていたため書き間違い、駅員さんに訂正させられた。勝手に訂正すると不正行為とみなされて罰金がかかると聞いていた。検札のたびにちょっとヒヤヒヤしたが、幸い問題にされなかった。

 駅には改札口のたぐいやアナウンスは一切ないから、電光掲示板で確かめなければならない。人口の少ない国の省力化ぶりには感心させられる。
7番ホームに降り、スウエーデン国境の町、ヘルシンオア行きの普通列車(Re)を待つ。9時59分の出発数分前というのに中年の夫婦1組が待っているだけでガランとしている。おかしいなあと、階段棟の向こうをのぞくと、列車はすでに到着しており、スエーデンから来たらしい大きな荷物を抱えた若者たちがどっと降りてくるところだった。危うくセーフ。
 1両目の車両がすいていたので座ってだべっていたら「ここはサイレントカーよ」と老婦人に注意され、あわてて2両目に移った。最後尾には、自転車を持ち込める車両も連結されていた。

 海峡沿いに北へ走り、約50分でヘルシンオアに着いた。やはり改札口はない。目の前の港にスエーデンから着いたらしい大型フエリーが停まっている。スエーデンの町、ヘルシンボリまでオーレンス海峡をはさんで5キロしかない、という。

 街の中心街を抜け、シーメンスの煉瓦工場脇を右に回って15分ほど。シェクスピアの戯曲「ハムレット」の舞台になった世界遺産、クロンボー城が見えてくる。デンマーク王子・ハムレット(アムレット)は、ここで亡父の霊に会う。

 15世紀に建造されて以来、なんどか修復を繰り返しているが、石畳の中庭を囲んでほぼ真四角な堂々とした古城のたたずまいに圧倒される。ルネッサンス様式だという。

 驚いたのは、延々と続く地下道だ。
 入ってすぐのところにデンマークの国民的英雄「ホルガー・ダンスク」の石膏像がでんと据えられている。眠っている姿だが、デンマークが危機にひんすると目を覚まして戦うという伝説がある。第2次世界大戦でナチスドイツに占領された時、この英雄の名前を採ったレジスタンスグループが活躍したらしい。 アンデルセン童話には、この伝説をもとにした「デンマーク人ホルガー」という作品がある。
 灯りがほとんどなく真っ暗な洞窟を手探りで歩く地下道はなんと地下牢の跡だという。早く地上に出たいとあせる気持ちになるが、暗闇はいつまでもつきない・・・。中世の亡霊に今にも出会いそうな"恐怖"さえ感じてしまう。

 翌日に訪ねたもう1つの世界遺産、ロスキレ大聖堂は、やはり普通列車(Re)で25分ほど西にあるデンマーク最初の首都、ロスキレの駅から歩行者天国を歩いて15分ほど。
 12世紀に創建されたが、増改築を繰り返してロマネスクゴシック様式が混在する煉瓦造り。見る角度、場所で印象が違い、全体のイメージがつかみにくい。様々な歴史を刻みながら、現在はプロテスタント、ルター派に属するデンマーク国教会の教会。デンマーク王室の菩提寺であり、20人の王と17人の女王が葬られている、という。

 ちょうど日曜日にあたり、この時期は観光客シャットアウトということだったが、1時間ほど待って午前10時30分からの聖餐式に特別に参加させてもらった。
 入ってみて、その長大さにびっくりする。一番奥から3分の1ほどのところに祭壇があり、説経台は入口から3分の1ほどの右側。時代を経ながら大きな聖堂になっていったことが分かる。
 不思議なことに、窓にステンドグラスが一切なく、金網が組み込まれている。もう1つ不思議なのは、天井にくみ上がっていく煉瓦の柱が白の漆喰で塗り固められていることだ。
 ほかにも、内部だけでなく外壁の煉瓦も白く塗られている教会も見た。ある時期から、こうなったらしい。カトリックからプロテスタントに替わった歴史の産物かもしれない。
 天井から下がっているのが古色然としたシャンデリアではなく、近代的なデザインの灯りであるのが"デザイン王国"らしい。

 聖餐式も、聖職者が会衆に背を向けて司式し、信徒が内陣に入ってパンとブドウ酒を拝領するなど、カトリックのミサとはかなり違う。
 デンマーク国民の80%以上が国教会の信徒ということだが、教会に行く人は少ないらしい。列席していたほとんどは白髪の人たち。聖餐式の前に何組かの子どもを連れた夫婦に会ったが、教会を素通りして広場の蚤の市に向かって行った。

 ロスキレから急行列車のインターシティ(IC)に乗り換え、アンデルセンの街・オーデンセに途中下車。さらにICを乗り継ぎ、途中で私鉄のArrive Tog(AT)に乗り換えて、ユトランド半島の西海岸にあるリーベに向かう。コペンハーゲンから直行しても約2時間半かかる長旅となった。
 1等車は完全予約制だが、2等車は任意予約。空いた席に座ってもよいが、予約を取っている人が来たら譲らなくてはならない。幸い我々は、予約の人とぶつからなかった。  駅に到着する数分前に駅の電光表示と短いアナウンスがあるだけ。駅にも、その駅の名前しか書いてないから、不慣れな外国人はちょっと不安だ。
 駅も道路に沿って駅舎があるだけ。道路と同じ平面のプラットホームにタクシーやバス乗り場が並んでいる。日本ではとてもまねができそうにない徹底した簡素化ぶりだ。

 リーベの街は、「旅の絵本」で知られる画家の安野光雅が「デンマークで一番美しい街」とある本で語っていたので、どうしても行きたくなった。
 ネット上で見つけた「『旅の絵本』を遊ぼう」というWEBページは圧巻だ。このなかの「リーベ1」にある「大聖堂から見たパノラマ」が見あきない。

 バイキング時代からのデンマークで一番古い街。中世からの色とりどりの煉瓦の建物の街並みがそのまま残っている。手を伸ばすと軒先に触れる低さ。傾いた家と石畳が曲線を描く。ここはこびとの国だろうか。その周りを自然がいっぱいのリーベ河がゆったりと流れている。なんとも心がなごむ街である。

日曜の休日だというのに自作の創作ガラスの店に招き入れてくれたおばさん。古くて低い天井のレストランで満席の客を笑顔でさばく女主人。300年前のものだという古い陶器を一心に売ろうとする骨董店の亭主・・・。出会った人たちの心情にも、またいやされた。

デンマーク紀行写真集 2
ヘルシンオア行き普通列車;クリックすると大きな写真になります雨にけむるクロンボー城;クリックすると大きな写真になります城の中庭。「ホルガー・ダンスク」の像;クリックすると大きな写真になります
ヘルシンオア行き普通列車、発車5分まえ。列車は来ない!(コペンハーゲン中央駅7番ホーム)雨にけむるクロンボー城城の中庭。毎年夏に、ここでハムレット劇が披露される「ホルガー・ダンスク」の像。眠っているようで、薄目をあけてにらんでいるようにも
延々と続く地下牢;クリックすると大きな写真になりますロスキレ大聖堂;クリックすると大きな写真になります同じロスキレ教会;クリックすると大きな写真になりますヴァイキング時代の船?;クリックすると大きな写真になります
延々と続く地下牢。フラッシュで明るく見えるが、実際は真っ暗ロスキレ大聖堂。これはゴシック様式?同じロスキレ教会。ロマネスク?ロスキレの海岸にあったヴァイキング時代の船?
自然豊かなリーベ河;クリックすると大きな写真になりますリーベの街並み;クリックすると大きな写真になります傾いた煉瓦の建物;クリックすると大きな写真になります
自然豊かなリーベ河色とりどりのリーベの街並み傾いた煉瓦の建物もしっかり保存されている

2010年5月25日

「デンマーク紀行」(2010・4・29-5・5)、上


 アイスランドの火山爆発再燃を気にしながら出かけたデンマーク。火山の影響か、冷たい雨の日が続く。憂うつになりかけた気分に"ニセ警官"が輪をかけた。

 コペンハーゲンに着いて2日目の朝。たまたま移動祝祭日の「大祈祷祭」に当たり人影もない官庁街に入り込んだ。レンガ造りの建物や青銅の騎士像にカメラを向けていて同行の友人たちに遅れてしまった。
どこから現れたのか、ジャンパー姿の青年に「チボリ公園はどこ?」と尋ねられた。持っている地図を広げて親しげに話しかけてくる。「日本人?私はギリシャから」

気づいたら屈強な2人の男が目の前に立っていた。「壁に手をつけ!麻薬捜査だ」。金バッチのついた警察手帳らしいものを見せ、旅券、日本円は?と、ウエストポーチに手を突っ込んでくる。
ポケットの財布に入っていたデンマーク・クローネの札束をパラパラとめくって返してきたが、妙に厚さがうすい。「NO!」と、男が握っていた右手を開けさせ、たたんだ札束を取り返した。
そこへ戻ってきた友人の1人が「警察に電話したぞ」と大声を出してくれた。男たちは、あわてて行ってしまった。あのギリシャ男?も一緒に・・・。

安全に気配りしなかった自分が悪い。だが、前日までのこの街への好印象は暗転した。

捨てた煙草の吸殻や紙くずが散らかる中心街。まばらな街路樹もみすぼらしい。休日の歩行者天国・ストロイエ通りの店先では、汚れたザックを抱えた老人が朝から眠りこけている。街のどこからでも見える4本の煙突が、もくもくと白煙をはき出している。「これが福祉の国、エコの国デンマークなのか」

 街を歩くと、ベールをかぶったイスラム系の女性や黒人、アジア系の人たちが異常に目につく。
 着いた日に市庁舎広場前でホンダ車に乗ったベール姿の女性に笑いかけられたが、ストロイエを歩くと黒っぽいベールの年取った女性にたびたび行き交った。タクシーや自転車王国の象徴・輪タクの運転手はたいてい黒人。
「スモーブロー」(デンマーク名物のオープンサンドウイッチ)のテークアウト店やコンビニ「セブン・イレブン」(日本資本のチェーン店、国内に126店)の店員は、アジア系か黒人が多い。

 この国の人口は、たったの550万人ほど。高度成長時代には、人手不足を解消するためトルコ、イラク、レバノン、ボスニア、パキスタンなどから移民が流入、一時は難民の受け入れにも積極的だった。人口に占める移民の比率は9・5%にもなっている。しかし最近は、移民の人たちの失業率の高さと教育水準の低さが、福祉国家のあい路になっているらしい。市庁舎前広場のベンチに座って動かない黒い人たちが、街の印象を暗くしているようにも思える。もちろん移民に慣れていない黄色人種の偏見でしかないが。

 落書きの多さには驚いた。ホテルから見下ろせるコペンハーゲン中央駅や古都・リーベ の駅舎、世界遺産の聖堂があるかっての首都・ロスキレ駅前にある巨大な陶器のモニュメント・・・。見事に、カラースプレーで彩られている。

 アンデルセン童話の主人公である「人魚姫の像」は、たまたま上海万博に出かけていて会えなかったが、落書き以上の被害に何度も合っている。頭部や腕を切られたり、赤いペンキを塗られたり、イスラム女性のスカーフをかぶせられたり・・・。
 犯人は、怒れる若者たちだとか、移民の人たちのフラストレーションの現れだとか、色々な憶測が飛び交っているらしい。

 すばらしい笑顔の人たちにたくさん出会えた。おかげで、八つ当たり気味の悪印象も少しづつ薄らいでいった。

 ロスキレから乗った長距離列車「インターシティ」で、老夫婦と同席になった。「エッ、リーベに行くの?私、そこの出身」と、奥さんのベスさん。弟さんが、駅前で朝食付きの宿を経営している、という。「あの街に行くなんて、すばらしい選択ね」

 途中、アンデルセンが生まれたオーデンセ に途中下車した。リュックをロッカーに預けようとして10クローネ・コイン4枚を入れたが、カギが閉まらない。改札口で「インフォメーション」と書かれた黄色い腕章をしている私服の女性にたずねるとすぐに男性駅員を連れて来てくれて一件落着。アンデルセン博物館への道順を聞いたら、地図を取りに走ってくれた。
 博物館からの帰り、リーベまでの列車時刻を確かめに切符売場に行くと、なんとさきほどの女性が制服姿でニッコリ笑いかけてきた。人手不足のこの国では、駅員は何役もこなさなければならないらしい。

 リーベ駅前のヴァイキング博物館に寄ったら、昔のヴァイキングらしい衣装を着た一群がいた。「ヤーパンから?写真を撮ってくれるのかい」。別の町のヴァイキング博物館のボランティア・ガイドをしているが、着替える時間がなかったという。5人(+赤ちゃん)も集まってくれて、いい笑顔の写真が撮れた。

 朝の9時半。ロスキレの港近くの公園で「ようこそロスキレ」へと、両手を広げて笑いかけてきたスキンヘッドの男性。世界遺産の大聖堂前広場の蚤の市で、ニコニコ笑いながら1クローネもまけてくれなかった気品あふれる中年女性。コペンハーゲンのデンマーク料理店やリーベのレストランで応対してくれたホスピタリティあふれた女主人たち・・・。

 コペンハーゲンに戻って同じホテルに1泊、空港に向かった。ベルボーイなんて、最初からいないから、コンセルジェの男性が自らタクシーに荷物を載せてくれた。

「この国の5日間、どうでしたか」「いい旅でした」「また、お待ちしていますよ」

デンマーク紀行写真集1
チボリ公園;クリックすると大きな写真になりますホンダ車に乗ったイスラム系の女性たち;クリックすると大きな写真になります青銅の騎士像;クリックすると大きな写真になります「セブン・イレブン」;クリックすると大きな写真になります
ホテルの窓から見たチボリ公園、着いた日の夕方に出かけ、パントマイムやオーケストラ演奏など、白夜の初日を楽しんだが・・・ホンダ車に乗ったイスラム系の女性たち。官庁街にある青銅の騎士像。この付近で"ニセ警官"に襲われたコペンハーゲンの街のどこにもある「セブン・イレブン」。カップラーメンもある
ストロイエ;クリックすると大きな写真になります輪タクの修理に忙しいドライバーたち;クリックすると大きな写真になります「ニューハウン」;クリックすると大きな写真になります電力会社の煙突;クリックすると大きな写真になります
休日のストロイエ。閉まったシャッターの前で眠りこける老人輪タクの修理に忙しいドライバーたち運河に沿ってカラフルな木造家屋が並ぶ「ニューハウン」白煙を吐き出す電力会社の煙突。出ているのは水蒸気だそうだが
コペン中央駅に並ぶ自転車;クリックすると大きな写真になります見事に落書きされたモニュメント;クリックすると大きな写真になります落書き;クリックすると大きな写真になりますロスキレの蚤の市;クリックすると大きな写真になります
コペン中央駅に並ぶ自転車。専用道路が整備され、列車にも持ち込める見事に落書きされたモニュメント(ロスキレ駅前で)緑に包まれた駅舎にも落書き(リーベ駅で)ロスキレの蚤の市。左の女性がオーナー。リキュールグラス、きれいな絵皿が1個5クローネ(100円弱)
乳母車の親子;クリックすると大きな写真になりますヴァイキング博物館;クリックすると大きな写真になります田園地帯の風車;クリックすると大きな写真になります
乳母車の親子ヴァイキング博物館で会ったボランティアの人たち田園地帯の風車。エネルギー消費の20%を風力がまかなうという