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2009年12月27日

読書日記「上機嫌な言葉 366日」(田辺聖子著、海竜社刊)


上機嫌な言葉366日
上機嫌な言葉366日
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田辺 聖子
海竜社
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   「本を読みっぱなしで終わるより、気になる数節をブログに残しておくだけでも」と思うのは、怠惰な自己満足でしかないかもしれない。しかし、なにもしないよりは・・・。今日は、そんな気分。

 この本、なんのことはない。著者が、46冊の自著のなかから抜き出した言葉の花束集である。図書館の返却コーナーに並んでいたのをパラパラめくっていて、なんとなく借りてしまった。

 まえがきに、こうある。
 あはあはと笑いつつ、ふと、あともどりしてページを繰り、あっと思う示唆にめぐりあうときもあるかもしれない。人生、いつも、はずみごころ・・・。


 1月1日から12月31日まで毎日、1行から数行の言葉を並べている。それで、なぜか366日?
 実は「うる年のために」という1節がちゃんと用意してある。なるほど、あはあは・・・。

 私たちはふつう、学校時代の友人を長く持ちつづけるし、また。友人はそこでいちばんできやすい。・・・しかしできやすいい所でできた友人は、また離れやすいのも事実である。


 ほんまに人生で大切なんはなあ、仲のええ人間とめぐりあう、ということだけなんやで。


 老醜というのは、背がかがまったり、皺がふえたり、という外貌的衰退のことではなく、周囲を顧慮する柔軟性や、自分の現在位置を測定する能力のなさをいうのではないかと思い至った。


 近年、定年間近に急に妻から離婚を要求されて狼狽し、怒り悲しむ男が多い・・・・。
 あれは、いまわかった。<人柄の賞味期限>が過ぎたのだ。・・・人柄は修行すれば、いつも旬でいられる。周囲への配慮というのが人間の必要最低限の愛・・・。


  人間はたのしいなあ。いいところがいっぱいある。
 人生は変幻の猫である。
 私はその夢の猫を追いつづけるのである。


・続・「気になる数節」
 「詩の本」(谷川俊太郎著、集英社)

 数か月前に、芦屋市立図書館に予約したが「1週間探したが、あるべき書棚にない」という。やむをえず、あきらめたが、先日改めて予約検索をしてみたらすぐに借りられた。他の書棚にまぎれていたのか、新規購入されたのか・・・。図書館の人たちは、本のことになると一生懸命になるのである。

いまここにいないあなたへ

     いまここにいない あなた
     でもいまそこにいるあなた
     たえずすがたはみえなくても

     おなじひとつのたいようにまもられ
     おなじふかいよるにゆめみて
     おなじこのほしにつかのまいきる あなた

     あなたとことばであいたいから
     わたしはかたる かたりきれないかなしみを
     わたしはかく ことばをこえるよろこびを


 木を植える

     木を植える
     それはつぐなうこと
     私たちが根こそぎにしたものを

     木を植える
     それは夢見ること
     子どもたちのすこやかな明日を

     木を植える
       それは祈ること
     いのちに宿る太古からの精霊に

     木を植える
     それは歌うこと
     花と実りをもたらす風とともに

           木を植える
     それは耳をすますこと
     よみがえる自然の無言の教えに

     木を植える
     それは智恵それは力
     生きとし生けるものをむすぶ


・続・続「気になる数節」
 「神去(かむさり)なあなあ日常」(三浦しをん著、徳間書店)

 この夏のはじめに各紙が一斉に書評に取り上げたこともあって人気が出たのか、先日やっと借りることができた。

 草食系の若者が、三重県の山奥の植林現場に放り込まれて逞しくなっていく青春小説だが、なんだか盛り上がりに欠ける。

 杉林の雪起こし、土の崩れを防ぐための伐採木を使った堰づくり、苗木の植え付け。木の切り出し、雑草の下刈り。林業現場の作業描写。神おろしや、子どもの神隠しなどなど、神秘な山の話しなどもそれなり面白いが・・・。

 ただ、季節が変わるたびに自然を感じる表現には、引かれるものがある。

 水のにおいは、夏が近づくにつれ濃くなっていく。
 いや、田んぼのにおいかもしれない。甘酸っぱくて、しっとりとした重みのある、いつまでも嗅いでいたくなるようなにおいだ。・・・栄養分たっぷりの土と若い緑に、澄んだ水が触れてはじめて生まれるにおいだ。


 ・・・俺は、「あ」と小さく声を上げ、畦にしゃがんだ。
 稲の葉が、根もとから五つに分かれて天にのびていた。最初は雑草みたいだったのに、いつのまにこんなに大きくなっていたんだろう。
 白い霧とともに山から下りてきた神さまたちは、そっと稲に触れ、葉をやわらかく湿らせて、季節を確実に進めていたのだ。


 今までは「あんなもの自然なんかじゃない」と思っていた針葉樹の人工林も、人がつくった稲穂の波も、りっぱな日本の自然の姿なのだと、気がついた。

 「日本の森林で、人間の手が入っとらん場所なんかないで。木を切り、木を使い、木を植え続けて、ちゃんと山の手入れをする。それが大事なんや。俺たちの仕事や」


 「ごるあ、勇気!土を崩して歩いたらあかんねいな!」
 と怒鳴った。「表土は栄養たっぷりの、山の命やで!命を蹴立てて歩くやつがおるか!」


 「・・・手入れもせんで放置するのが『自然』やない。うまくサイクルするように手を貸して、いい状態の森を維持してこそ、『自然』が保たれるんや」


詩の本
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谷川 俊太郎
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神去なあなあ日常
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三浦 しをん
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5 普段行くことはないからこそ・・
5 神去村で暮らしてみたい
4 一気に読みました
5 三重県民は必読です。
5 神去村に行きたい!!!