Atelierで“「マイク・モラスキー」”タグの付いているブログ記事

2007年2月 9日

ジャズがでてくる小説:「国境の南、太陽の西」村上春樹

 マイク・モラスキーの「戦後日本のジャズ文化」に出てくる小説を順次読んでいこうと思っているが、活字を追いかけるとすぐ眠くなる。村上春樹の「国境の南、太陽の西」をやっと読み終えた。彼が、中学校の同窓で、この本の中にがジャズの題名がいろいろと出てくるというだけで読んでみようというのが動機である。
 主人公”ハジメくん”は、結婚した相手の父親の資産であるビルの中でジャズラウンジを経営することになる。その店が繁盛して、2軒目の店を青山に持つが、この店の名前は彼が好きなジャズの曲名から採った Robbins Nest である。初恋の相手とその店で再会するが、そのときに流れるピアノ・トリオの曲が、Latin Jazz の Corcovado である。 ”ハジメくん”の好みは、Star-Crossed Lovers でピアノ・トリオは演奏の終わり頃には、必ずその曲を演奏するのである。この曲については、初恋の人、”島本さん”の質問、「それは、どういう意味なのかしら?」 に、”ハジメくん”の以下のような説明がある。
悪い星のもとに生まれた恋人たち。英語にはそういう意味があるんだ。ここではロミオとジュリエットのことだよ。エリントンとストレイトホーンはオンタリオのシェクスピア・フェスティバルで演奏するために、この曲を含んだ組曲を作ったんだ。オリジナルの演奏では、ジョニーホッジスのアルト・サックスがジュリエットの役を演奏して、ポール・ゴンザルヴェスのテナー・サックスがロミオの役を演奏した。
 なかなか詳しい。このあたりがマイク・モラスキーが取り上げた要因かもしれない。その他、このトリオのベーシストが好きと思われる Embraceable You も出てくる。これらの曲を、eMusic で探して、Live365.com の Radio Senboku にアップロードした。今後のコレクションに加えようと思う。

国境の南、太陽の西
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2006年12月13日

五木寛之『青年は荒野をめざす』:Jazz and Free Go Hand in Hand

 久しぶりに小説を読んだ。先日紹介したマイク・モラスキーの『戦後日本のジャズ文化』に出てくる五木寛之の初期作品『青年は荒野をめざす』である。マイク・モラスキーはその著書のなかで、五木寛之のジャズ観を以下のように記述している。
要するに、五木寛之は、ジャズ演奏を基本的に<コミュニケーション>と見なしているのである。それがミュージシャンと聴衆との間の<対話>であろうと、演奏中の(楽器によって表現される)ミュージシャン同士の対話であろうと、一方通行ではなく相互コミュニケーションでなければならない、という主張が根底にある。だからといって五木はレコードなどの価値を軽視しているわけではないが、やはり音楽(ジャズ)の原点は生演奏である、という主張が初期のジャズ小説群において一貫して表現されているのである。

 私もJazzはコンサートホールでかしこまって聴く音楽ではないと思う。ライブハウスで、ジントニックでもチビリチビリやりながら音の中に身を沈めるのが最高である。ニューオーリンズのバーボンストリートにある Royal Sonesta Hotel (Google Map)のサロンや New Preservation Hall, 東京お茶の水の「ナル」や大阪北の Azule なんかで聴いたJazzを懐かしく思い出す。この小説の主人公「ジュン」のようにJazz に精神的な傾倒をするわけではないが、Jazz を聴くときは何か「自由」というものを感じている。続けて村上春樹の『国境の南 太陽の西』も読んでみようかと思っている。

青年は荒野をめざす
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2006年12月 2日

戦後日本のジャズ文化:マイク・モラスキー

 毎日新聞の確か「記者の目」というコラム記事で『戦後日本のジャズ文化』という本の存在を知った。Michel S. Molasky というミネソタ大学で日本文化を研究している教授の著書である。奥さんは日本人のようだが、日本人以上の日本語で書かれている。リタイア後、このような390ページにも亘る小さな活字での単行本は敬遠してきたが、Jazz 好きということもあって一気に読んでしまった。著者のJazzに対する即興性 (improvisation) 重視の視点は全く同感である。著者が検証している映画(黒澤明『酔いどれ天使』、裕次郎『嵐を呼ぶ男』など)や小説(五木寛之、倉橋由美子、村上春樹など)は、どれも読んだり視たりしたことはないが、それらの作品とJazzが持つ文化との関連を詳説している部分は面白い。この歳になって好きなことでも知らないことばかりが続出する毎日である。最近の五木寛之の本も気になっていたので、この著書で取り上げられている初期の作品『青年は荒野をめざす』と最近の『気の発見』の文庫本を amazon に発注した。いずれ、中学の同窓らしい村上春樹の『国境の南 太陽の西』も読むつもりである。
 この著書の終わりのほうでは、最近のIT時代における Jazz への接し方の中に MP3 ファイルについても書かれていることや全般にわたって出てくる artist 名に familiar なのも面白く読んだ原因かもしれない。Jazz 好きの人には是非お奨めしたい一冊である。

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4 幻想の“ジャズ文化”、“ジャズの時代”を相対化する試み