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Atelierで“オオワシ”が含まれるブログ記事

2010年7月19日

隠居の読書:梨木香歩、【渡りの足跡】


渡りの足跡
渡りの足跡
posted with amazlet at 10.07.19
梨木 香歩
新潮社
売り上げランキング: 11003
おすすめ度の平均: 4.0
4 ここではない、どこか別の場所へ。鳥たちの渡り、彼らの旅路に思いをめぐらすエッセイ集

 毎日曜日の毎日新聞には、【今週の本棚】という読書欄がある。ここに、湯川豊三という方が、この本を紹介されている。これを読んですぐに読みたくなり、Amazon で注文した。このようにして購入してもいつも梅棹忠夫のいう【みた】だけで積ん読が多いのだが、今回は一気に読んだ。

 梨木香歩さんは、Wikipedia では、日本の児童文学作家、絵本作家、小説家ということになっている。私のサイトにある Masajii's Weblog の読書日記「西の魔女が死んだ」にあるように、児童文学が本職なのかもしれない。
 だから、この本の主題である野鳥観察は仕事の一部なのか、趣味なのかはっきりしないが、とにかく私のようなご近所野鳥観察とはスケールが全く違う。オオワシの渡りを確かめるために、国内の網走や知床をはじめとする道東周辺・諏訪湖・琵琶湖や海外はカムチャッカまで出かけるのである。

 どうしてもそこに興味がいくのだが、野鳥観察のための装備について詳しい記述はないが、双眼鏡は肌身離さずで、撮った写真を専門家に見てもらって鑑別もされているので、望遠のついたカメラも携行されているに違いない。また、10ページには、次のような記述があるのでKestrel4000 のような携帯気象計もコンパスも持って行かれているのではと想像する。
 この日この時間の網走の湿度は約22パーセント、西北西の風、最大13.9m。清々しく冷気を含んだ空気。

 場合によっては、フィールドスコープももって旅行されるから、現地での案内人がない単独行動はレンタカーのようだ。察するに、物書きはいろいろな記録が大事なのだ。私の隠居のたわごとブログの場合でも、記録はとるようにしている。音の記録は梨木香歩さんの場合はないようだが、音の記憶も見事に記述されている。

 私も同じような現象に出くわしたヒヨドリのさえずりについて、次のような記述がある。少し、長いが引用させていただく。
 今、この原稿を書いているところは――比較的緑が多いとはいえ――都心と言われるところである。それなのにここ数日、明け方の四時半頃になるとまるでブラックバード囀る英国の朝のような鳥の囀りが聞こえる。その声に起こされ、一体どんな鳥が、と出て行って確かめたいのだが何しろ起き抜けでぼうっとしていて、すぐに動けない。そのうち眠気に負けてしまう。 あの声は一体、と日中はずっと悶々とした思いを重ねていた。「最近明け方に一羽で美しく長 く囀り続ける鳥がいます。お気づきの方、何という鳥か、ご存じありませんか」、と近所に回覧板を回そうかと真剣に考えたほどだ。
 今日の午後出先から帰宅したとき、敷地内でその囀りの主が分かった。まるでメジロのように、ホオジロのように ――でも本物ではあり得ないとすぐ分かる―― 次から次へ囀り、信じられないことに、途中でホイホイホイと明らかにサンコウチョウの鳴き真似で合いの手を入れる。電線に留まって我を忘れてうっとりと鳴き続け、佳境に入ると感動のあまり自分で自分をもてあますのか、囀りながら空高く舞い上がり、それからあの独特の波状飛行をしてずっと向こうのお寺の屋根まで飛んで行き、それからまた此処へ戻ってきて続きを歌う、という事を繰り返していた。まちがいなく、ヒヨドリだった。けれど、今は梅雨が明けたばかりの真夏、これから所帯を持とうというのか、それともそんなことに問係なく(あのヒヨドリには自分以外の何ものも見えているようではなかったし)芸術的な研讃を積もうとしていたのか、こんなところ でサンコウチョウの声など聞こえるはずはないから、どこか遠い山の奥で彼の鳥と接近遭遇し た事があったのか。あれやこれや考えても、留鳥のヒヨドリとは考えられない。春の渡りが遅 れてしまって繁殖期がずれているのかもしれない。相手の確保は大丈夫だろうか。
 それにしてもあの美しい声が、けたたましく耳障りだとばかり思っていた、あのヒヨドリの声だったとは......。ああいう調子で渡りの途中のあちこちで、熱心にその地方の鳴禽(めいきん)の声を採 集し、また自分も自慢の歌声を披露し、などして帰ってきたのかも知れない。今日だって私が 気づかなかっただけで、近くに繁殖可能な雌が存在していたのかも知れない。ここ数日ずっと 囀っているから、その可能性は低いかも知れないけれど、ないわけではないだろう。

 私は残念ながら、サンコウチョウのさえずりは知らない。いつもお世話になっている【小鳥のさえずり】サイトで確認すると確かにヒヨドリのさえずりに似ているようだ。実のところ、私も同じ梅雨明け間近の4時半頃に、鳥のさえずりで眼を覚ましたことが多かったのだが、ヒヨドリのさえずりとは確信がもてなかった。それで、録音した mp3 のファイルを上のサイトの管理者である pika@Bird Songs in Japan さんに送って確認してもらった。少しして、次のような回答があった。
いただいた音声ファイル、聞いてみました。
ひよどりが、歌ってますね。
単調なリズムですが、ちゃんと音階があって、かわいいですね!
カラスも元気そうですが...。


 この本は単なる野鳥観察の本ではない。鳥の渡りを追いながら、生存することの意味を考えさせてくれる一冊である。明日からの探鳥ウォークで見るもの、聴くものへの思いが変わるかもしれない。

2010年1月22日

隠居のデジスコ:湖北野鳥センター

 前からいきたいと思っていた琵琶湖北部の湖北町にある野鳥センターに車を走らせた。少々の雪道でも大丈夫のように、今年はスタッドレス・タイヤを履いている。だが、大寒の日であったが全国的に春を思わせる暖かい1日となった。

DSC_5384.JPG 北陸自動車道の長浜 IC を出て、湖岸を北に走らせると野鳥センターに近づくにつれて望遠レンズをつけた沢山のカメラマンが見られた。堺から約2時間半である。
 野鳥センターに車を駐めて、入館料 200円を払って入ってみると、今までに訪ねた同様の施設と同じように、2人の学芸員がいて、湖面に浮かぶ鳥の名前などを教えてくれる。この野鳥センターの東側の500mくらい離れた山(山本山というのだろうか)麓の赤松に、オオワシがずっと留まっているという。視力が落ちた私の眼では確認できなかったが、家内は学芸員が焦点を合わせてくれたフィールドスコープで見えるという。残念だ。

 野鳥センターの前の小さな州あたりには、オオヒシクイに混じって、オオハクチョウもいるようだが首をすくめたままである。湖の遠くには、空を舞っていたチュウヒも留まっていると野鳥に精通した女性が教えてくれたが、私のデジスコではボヤッとしてか写っていなかった。学芸員によれば、チュウヒとトビの見分け方は、飛び方にあるようで、チュウヒは羽根をV字にして飛ぶそうだ。

 野鳥センターを引き揚げて、余呉湖に寄って、木之本 IC から帰ることにした。しばらく北に湖岸を上ると、カメラを構える人がチラホラといる。夏には、水泳場になると思われる場所に車を駐めて、湖面を見るとキンクロハジロが泳いでいる。
オオヒシクイ:クリックするとおおきくなりますオオヒシクイ:クリックすると大きな写真になりますキンクロハジロキンクロハジロ:クリックすると大きな写真になります
スコープ Nikon ED82
接眼レンズ 30XWFA
デジカメ Sony DSC-W300
ISO80 F5.6 1/320 7.6mm
(35mm版換算1330mm)
トリミング
スコープ Nikon ED82
接眼レンズ 30XWFA
デジカメ Sony DSC-W300
ISO80 F3.5 1/500 11.5mm
(35mm版換算2012mm)
トリミング
スコープ Nikon ED82
接眼レンズ 30XWFA
デジカメ Sony DSC-W300
ISO80 F5.6 1/320 7.6mm
(35mm版換算1330mm)
トリミング
スコープ Nikon ED82
接眼レンズ 30XWFA
デジカメ Sony DSC-W300
ISO80 F4.0 1/320 13.1mm
(35mm版換算2293mm)
トリミング


余呉湖:クリックすると大きな写真になります 高月町のトンネルを抜けると一面真っ白である。余呉湖までいってみると湖面に設けられた桟橋に人が沢山いる。ワカサギ釣りに来ているようだ。この桟橋に入るには、1000円取られるようである。それにしても沢山の釣り人だ。気温がゆるんだからだろうか。水鳥もいたが、まともな逆光でまともな写真は撮れなかった。
 今回は長距離を走ってみたが、収穫はオオヒシクイを初めて写真に収められたことだけだった。