読書日記「西の魔女が死んだ」(梨木果歩著、新潮文庫) - Masablog

2008年6月24日

読書日記「西の魔女が死んだ」(梨木果歩著、新潮文庫)


 児童書、童話はほとんど読まないのだが、数年前に新聞の読書欄で何人かの童話作家の作品を紹介しているのを見て数冊を購入、そのなかで一番おもしろかったのがこの本。

 童話作家に興味を持っていた娘に紹介したところ、自分のブログに書き込んでいた。
 私もそのうち書こうと思っていたが、映画化されたのを知り、別に追い立てられる必要はなかったのだが、この作品のことを急に書きたくなった。

 中学生になったまい は、登校拒否になってしまい「もう学校には行かない」と宣言する。グループの仲間たちと仲良くするための駆け引きが何となくあさましく思えてきたのでやめたところ、一人ぼっちになってしまったのだ。

 「昔から扱いにくい子だったわ。生きていきにくいタイプの子よねえ」と、単身赴任しているパパに電話しているママの言葉に傷つきながら、自宅から車で1時間ほどの山の中に住むイギリス人の祖母に預けられる。

 木々と草花の庭に囲まれた山荘で鶏を飼い、ノイチゴのジャムを作り、大きなおけに入れた洗濯物を足で踏んで洗い、森のなかにポッコリあいたお気に入りの陽だまりを見つけて"よみがえる"。

 「まい は、魔女って知っていますか」
 祖母が突然、聞いてくる。祖母の母は超能力の力を持つ魔女だったし、祖母もその修行をした。精神を鍛えれば、まい でも魔女になれると祖母は言う。「まず、早寝早起き、食事をしっかり取り、よく運動し、規則正しい生活をする」

 祖母にすっかり乗せられて始まった魔女修行。まい はこう言えるまでに成長する。「おばあちゃんはいつもわたしに自分で決めろと言うけれど、わたし、何だかいつもおばあちゃんの思う方向にうまく誘導されているような気がする」
 おばあちゃんは、目を丸くしてあらぬ方向を見つめ、とぼけた顔をする。

 二人は「死」についても、話し合う。

 「パパは、死んだらもう最後なんだって言った。もう何もわからなくなって自分というものもなくなるんだって」

 「おばあちゃんは、人には魂っていうものがあると思います。・・・死ぬ、ということはずっと身体に縛られていた魂が、身体から離れて自由になるということだと思っています」


 パパの単身赴任先に家族が合流して2年後。祖母の急死で山荘に駆けつけたまい は、サンルームの汚れたガラスに指でなぞった跡を見つける。
 
  ニシノマジョ カラ ヒガシノマジョ ヘ

  オバアチャン ノ タマシイ、ダッシュツ、ダイセイコウ


   WEB検索をしていて、「ほのぼの文庫」というサイトを見つけた。児童書の良書を紹介しているのだが、梨木果歩の作品に出てくる植物の見事なカラーアルバムを楽しむことができる。

 「西の魔女が死んだ」のアルバムでは、まい が最初に祖母とママで作るサンドウイッチにはさんだキンレンカの葉、ジャムにしたワイルドストロベリー、洗濯したシーツを広げて匂いを移すラベンダーの茂み、畑の虫よけに飲ますミントとセージのお茶、作品で大切な役割を果たす朴の木に銀龍草・・・。

 梨木の他の作品「家守綺譚」「からくりからくさ」の植物アルバムもそろっている。たっぷろと楽しませてもらった。

 6月22日付け朝刊に米国バーモント州にすばらしい園芸園を作り、絵本作家としても有名だったターシャ・テューダさん(92)が死去されたという記事が載っていた。「東の国のマジョが死んだ」。合掌!

(追記:2008/7/4) 映画「西の魔女が死んだ」鑑賞記
  大阪ツインタワーの映画館で見てきた。
 いつも、小説などが映画化されたのを見ると、ガッカリしたり、ヘーと思ったり・・・。
 「小説と映画は、別の作品」という思いを強くするのだが、この映画は梨木香歩の世界をかなりうまく再現しているように思える。
 ブログには書かなかったが、ゲンジという隣人との葛藤を通じて成長していく少女まい の心の動きが映像を通じて、小説以上に伝わってくる。
 シャーリー・マックレーンの娘で日本に12年間住んでいたという、祖母役・サチ・パーカーのおっとりした日本語がよい。母親役・りょうの演技もひろい物。
 山梨県清里高原にロケ用に建設され保存されている「魔女の家」には、東京からバスツアーまで出る評判らしい。
 この庭の花を見ながら、ワイルドストロベリー・ジャムを塗ったパンをカリッと・・・。いささか少女趣味すぎるかな?

西の魔女が死んだ (新潮文庫)
梨木 香歩
新潮社
売り上げランキング: 14
おすすめ度の平均: 4.5
5 著者の最高傑作!
4 ポイントは想像力!?
5 読後感がスゴイ☆
5 ターシャ・チューダーを思い出す
5 祖母が死に際に窓に残したまいへの言葉が素晴らしい

家守綺譚 (新潮文庫)
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4 心の奥に静かな潤いを感じることのできる佳品
5 大きな影響を受けた一冊
3 大人になったときにもう一度読み返したいです
3 "変容"のとき
 


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コメント

東の魔女 様

 事情があり、返信が遅れ、申し訳ありません。

 まりさんは、正真正銘の魔女であることが、コメントで分かりました。

 本屋をのぞくと、ちょっとした梨木ブームが続いています。

 数年前に「西の魔女・・・」と一緒に読書欄で紹介されていた本もけっこうおもしろかった。

 湯本香樹実「夏の庭」(新潮文庫)。死にそうな独居老人の最後を見てやろうと、庭に入り込んだ少年たちとの交流で、どんどん元気になるおじいさん。

 上橋菜穂子「狐笛のかなた」(同)。「少女と霊狐の孤独でけなげな愛」と帯封にあります。

 暑いですね。いい夏を!

ようやく図書館から届きました。
最後の2ページに心、動かされます。

日本の子どもたち一人ひとりに「西の魔女」がいれば、もっと生きやすくなるでしょう。

日本の大人たちが「西の魔女」になれば、もっと子どもたちの笑顔が増えるでしょう。

私自身も魔女になるという目標ができました。年齢的にはもう充分魔女に近いのですが...。

いつも原作を先に読みます。読み終わって映画をどこでやっているかを検索したら、すでに終わっているようです。DVDが出るまで待つことになりそうです。残念。

先日、大阪のジュンク堂に行ったら、この本が横積みされていました。
「インディージョーンズ」の小説本と一緒に。
映画化されたのが、公開されたためでしょうね。

貴兄(MOVABLE TYPEのバージョンアップでは、お世話になりました)にお願いしています解析ソフトにリンクされていた検索サイトを見ると「西の魔女・・・」関連の項目が4万近く。ちょっとしたブームみたいですね。

masajii

この梨木果歩さんの本は読んでみたいですね。
このごろ、すっかり読書量が皆無に近くなっているのですが。

娘にも紹介しておきます。

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