黄河緑化ワークツアー同行記・上
約1週間のシルクロード・天山北路への旅を終え、甘粛省の省都、蘭州へ。いよいよ、この旅の本来の目的である植林ボランティアが始まる。
ここ、蘭州は、中国中央部の黄河流域に広がる黄土高原の一部。長年の戦乱、中国政府による食糧増産政策、そして急激に進む砂漠化現象で、約2000年まえには緑豊かだった高原が、荒地が続く不毛の土地になってしまっている。
その荒地に再び緑を取り戻すことを、甘粛省政府は重要政策にしている。空港から市内に入る国道沿いには、明らかに植林されたばかりだと分かる並木が続いている。省政府の強い指示で、蘭州の企業などが植林したものだが、一歩、裏に回ると砂漠化が続く荒地と畑が続いている、らしい。
荒地があまりにも膨大なため、甘粛省政府の当面の目的も「とりあえず蘭州市内から見える山に植林をする」ことだという。
神戸にあるNPO「黄河緑化ネットワーク」による植林ワークツアー」は今年で7年目。今年から第二期のプロジェクトに入り、植林の場所も植える木も変わるという。
小さなマイクロバスに乗り換えて、河原のような小石の多い道を走ること約30分。山腹に「歓迎」の赤い横幕が張ってある荒山が、植林現場だ。
斜度が45度はありそうな急な山腹には、すでに細い小道が作られ、等間隔であけられた直径30センチほどの穴にビニールシートが張ってある。
今年から植えるのは、紅砂(ベニスナ)という小低木。これまで植えていたコノテガシワは、黄河から水を引いて定期的に散水するなどコストも人手もかかるため、水やりの必要がないこの木に替わった。「低木でも,低コストで荒地を緑でおおえる」と、この会の顧問である徳岡正三・元高知大教授は期待する。なにしろ3年間で100ヘクタールもの土地を、ベニスナの緑で埋め尽くす計算なのだ。
先が丸くなっていない変った形をしたスコップを借り、ビニールの真ん中に穴を深く掘る。「スッコ」と、なんの抵抗もなくスコップが入る。粘土質のように見えるが、少ししめっぽいサラサラした感じの非常に細かい土。周りにある乾いた土を手でこすると、風に散っていった。
「なるほど、これが黄砂か」。春先の日本に黄砂が降ってくるのは「砂漠化した畑に農民がいっせいに鍬を入れ、砂が舞い上がるため」と、この会の会報に深尾葉子・大阪外国語大学准教授が書いておられたのが、なんとなく納得できた。
今回「ベニスナ」を植えるために、蘭州市の環境緑化指揮部という役所が開発したのは「三水造林」という植林法。
真ん中にあけた穴にベニスナの苗木を入れ、土でしっかり押さえる。そして、残った土で、ビニールシートの周りを、やはりしっかり固める。
「ビニールシートで雨水を集め=集水」「根に水を注ぎ=注水」「シートで蒸発を抑える=保水」。
年間降雨量389ミリという、少ない雨水を有効に利用しようという、なんだか中国語らしい命名だ。
林の最中に、近くにおかしな雑草が生えているのを見つけた。ラクダしか食べないという「ラクダ草」だった。とげがあるのに下あごを使って食べてしまうという砂漠特有の草。またもや、ここが“砂漠”であることを再認識した。
2時間強の作業を終えたワークツアーや現地参加の約50人、それに地元・中国のメンバー十数人が横幕の前に集まり、記念撮影をした。
ベニスナは、大きくなっても最大1・5メートルにしかならない。しかし、それがしっかり根を張り、数年後には、この荒山を緑のじゅうたんに変えることを夢見て、ズボンやシャツを真っ白にした、みんなの顔が輝いて見えた。
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