読書日記「情報革命バブルの崩壊」(山本一郎著、文春新書) - Masablog

2009年3月15日

読書日記「情報革命バブルの崩壊」(山本一郎著、文春新書)



情報革命バブルの崩壊 (文春新書)
山本 一郎
文藝春秋
売り上げランキング: 78391
おすすめ度の平均: 4.0
2 タイトルと内容がかけ離れているイメージをもった。読まなくても良かったかも。
2 話題豊富だが,ただ書き散らしているという印象
3 「新聞のあり方」が漠然としていて・・・
5 財務的視点の記述のところが面白い
3 いまさら、インフラ企業や新聞社を儲けさせろと言われても、時代錯誤もいいとこ♪

 新聞社を卒業して何年もたち、もう〝縁なき世界〟と思いつつも「ネット社会と新聞」なんてテーマを見つけると、なんとなく気になってしまう。

 ただ書店にあふれている「新聞が消える・・・」「新聞ビジネス・・・の破たん」といった本はなぜかおもしろくない。どういうことか、いつも同じ某大手新聞社出身者の執筆が多いのだが、危機感をあおってみせても、それに見合う分析に出会わず〝読み損〟の感を深くする。

 「情報バブルの崩壊」は、私が在籍していた会社がいまだに送ってくれる社報で知った。同社トップが社内会合で話されたことが掲載されていたのだ。
作者の山本一郎はネット社会ではちょっとした有名人らしいが、図書館で著書を借りてみると意外におもしろそうなので、Amazonで買ってしまった。

 まえがきの「『無料文化』を支える過剰期待とバブル」で、作者は情報バブルなるものを、こう書く。
 ネット上を通じてもたらされた情報が定額制の名のもとでは実質的に無料・・・という状況は、既存の情報インフラ会社(新聞社などのこと?)に対する〝ただ乗り〟と・・・(証券界などの)〝金余り〟とがもたらしたバブル・・・


 第一章「本当に、新聞はネットに読者を奪われたのか?-ネット広告の媒体価値の実像が見えてきた」がおもしろい。
 サブタイトルにある〝ネット広告〟について、筆者はこう〝看破〟する。  
 新聞の強さはソースにあたり事実をしっかり掴む力であって、これにお金を払う人を顧客にしたいとスポンサーは非常に多い

 ネット事業の弱点は、これらのブランド力を有効に利用できる客層が薄い・・・ネットやケータイで新聞を読んで満足してそれ以外の情報収集にお金を使わない層は相対的に貧乏であるということだ。ネットに消費者金融やパチンコ、アダルトの広告が溢れている理由は、テレビなど有力な媒体に広告を出すには審査が通らないという点に加えて、そのような刹那的な消費を求める貧民が安価な娯楽としてネットに常駐しているという現実がある


 ただ筆者は、新聞人を一瞬うれしがらせながらも、誰もが本当は分かっている現実をつきつける。  
 新聞はネットに読者を奪われたのだろうか?答えはNOである。・・・読者は毎日、せっせと読んでいる。
 「無料のネットのサイトやケータイを経由して」 読者は新聞記事を読んでいるが、新聞を買わなくなっただけである

 さらに、業界の〝常識〟でもある新聞の弱点を指摘する。
 日々のニュースを社会人として恥ずかしくない程度に入手・・・するというニーズにおいては、新聞各紙が戦略的と考えてきた論調による差別化そのものが、必ずしも有効に機能しない・・・。『論調』は、読者からすれば興味がない 

 読売、朝日、日経3紙が昨年初めにスタートさせたポータルサイト「新s(あらたにす)」を意識した主張だろう。

 私自身のことを言えば「新s(あらたにす)」を、申し訳ないが見たことはない。毎日、愛読しているのは「日経ビジネスオンライン」と、産経系の「イザ」だ。新聞には載らない無料のブログ情報に、年金生活者としてはいつもトクをした感じがしている。いい広告がついて、さらに充実したWEBページになってほしい。

 新聞の・・・情報で価値あるものは、政治、社会、時事、に限定されている。それ以外の記事は・・・情報化社会によって個の持つ情報のコア化が進み、必要とされなくなった」

 元経済記者としては、経済記事も価値がないと看破されるのは、じくじたるものがあるが゛時事〟の項に入っているのかも?と・・・。

 「新聞社は読者の顔を知らない」と、筆者は言う。
 新聞社は、読者の維持、確保は各販売店に・・・頼っていて、どんな属性の読者がどのような記事を読み、何に金を払おうとしているのかをいまだに分からないだろう」  「だから、ネットでは情報のソースとして頼るべきブランドの確立ができず・・・記事がどのような経緯、過程で・・・読まれているのが分からない以上・・・ネットでもお金を払ってくれる読者は獲得できない


 20数年前、金融担当をしていたころ。ある大手都銀の営業担当専務に「新聞は、消費者情報を持っていないただ一つの産業」とやゆされたのを思い出す。

 最後に筆者は、新聞業界に、こう要求する。
 最も考えるべきは、新聞本来のビジネスである情報の正確さ、奥深さ、速報性を磨き直してマーケッティングを行い、ネットを含む新しいメディア向けに再編成することである


 具体的には書いていないが、新聞記事を作るファクトリー部門だけを残し、新聞を印刷し、配布、販売するパッケーッジ部門を分離して考えるべきだ、と示唆している。

   たまたま、この本を読んでいる時に「日経ビジネスオンライン」を見ていて、米国で、新聞社を救うために「新聞社をNPO化する議論」がされていることを知った。

 つまり、そこに待っているのは「パッケージ部門は不要」という現実だろう。具体的には、厳しいリストラ、人員整理・・・。
 ああ、OBでよかった。実感である。


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