読書日記「日本は没落する」(榊原英資著、朝日新聞社)
新聞記者をしていた頃は、よくビジネス書を乱読したものだが、最近はほとんど読まなくなった。というより、なるべく読まないようにしている。読んだ後で、なんだか損をした感じがすることが多いのだ。
先月の日経・書評欄で「なぜビジネス書は間違うのか」(フイル・ローゼンツワイグ゙著、桃井緑美子訳、日経BP社刊)という本を紹介していたが、ビジネス書の欠陥をうまくまとめてあった。「業績の好調さだけからリーダーシップや価値観まで高く評価してしまう」。
20数年前に、本棚にあふれる本を整理するために、古本屋さんに来てもらったことがあるが、ベストセラーだったビジネス書を1冊も引き取ってもらえなかったことがある。一言「この種の本、まったく売れまへんのや」・・・。 替わりに、中里介山の「大菩薩峠」、確か角川文庫全27巻にポンと1万円を出されたのにはびっくりした。
以来、本棚にたまったビジネス書は、市役所の廃品回収の日に出すことにした。
今でも本棚のビジネス書のなかで残しておきたいと思うのは「花見酒の経済」(笠 信太郎著、昭和三六年)、「柔らかい個人主義の誕生」(山崎正和著、昭和59年)、「人本主義企業」(伊丹敬之著、1987年)くらいだろうか。
「日本は没落する」が昨年末に出た時には、「ミスター円」の異名を取った元財務官僚の作ということもあって、けっこう評判がよかった。図書館に申し込んだが、希望者が多く、先日、半年ぶりにやっと借りることができた。やはり新鮮さはほとんど霧散していた・・・。
ただ「ポスト産業資本主義の時代に移って、資本=マネーの果たす役割が、前世紀と根本的に異なってきた」という記述にひかれた。
恒常的な金余り現象で、デリバティブなどの金融テクニックで膨れ上がった資金がIT技術を駆使してさらなる膨張の機会を求めて駆け巡る「ファンド資本主義」が横行している。
産業資本主義の時代は「お金を追いかける」時代だったが、ポスト産業資本主義時代は「お金が追いかける」時代だという。
最近の原油や穀物の異常な高騰の原因も、これでかなり説明できそうだ。
もう一つ気になったのは、榊原氏が「日本没落」の最大原因として挙げている日本の教育水準の低落ぶり。
最近になって見直されようとしている「ゆとり教育」も、日本の子どもたちの学力、学習意欲低下のあらわれと見る。中国・清華大学には、優秀な留学生を獲得するため、米国の有力大学がスカウトに日参しているが「日本に来たという話しは聞いたことがない」。
しかし、有名学習塾が駅前に軒を並べる阪急・西宮北口駅などが、夜間や日曜日に小学生のラッシュ・アワーになるのも異様な風景だ。小学校低学年から塾通いを強いられる彼らの未来は、どんな「没落・日本」なのだろうか。
最近読んだ、その他の本
- 「チューバはうたう」(瀬川 深著、筑摩書房)
第23回太宰治賞を受けた小児科医の小説。中学生の時にチューバに出会ったのをきっかけに、ひとりでチューバを吹いてきた若い女性の物語。同じインディペンデントの仲間と出会い、世界一のチューバ吹きとコラボレーションをやってしまう。チューバに惚れこむ清新さと、チューブを吹く描写に引き込まれる。
読んだ後、2回ほどコンサートに出かける機会があった。チューバだと思っていた楽器が実はホルンだったと、後で分かったのはお粗末でした。 - 「食堂かたつむり」(小川 糸著、ポプラ社)
いつまでも本屋に横積みしてあるので気になり、図書館に借り入れを申し込んだら、やはり半年後に読むことができた。
インド人の恋人に逃げられるなどのショックで声を失った若い女性が、確執が続いている故郷の母(おかん)のもとに帰り、食堂を開く。1日1組だけの客に出すメニューがなんとも食欲をそそり、食べた客たちになぜか幸せが訪れる。
病魔におかされたおかんの再婚と死。その披露宴に、長年、愛し、育ててきた豚のエルメスを供する描写に最後まで引き込まれる。
榊原 英資
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読んでおいて損はありません、勉強になります悪くないです
自分たち役人が日本を食いつぶしてきた事
なんとなく黄昏は感じている昨今
■課題の認識や提言が軽薄に感じられました
なぜビジネス書は間違うのか ハロー効果という妄想
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"同じ穴のムジナ"だな、これも。結局、業績向上のための定石はないのか
あーあ、言っちゃった
世のビジネス書のいい加減さを痛快に暴露する
チューバはうたう―mit Tuba
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一気には読んだけれど食堂じゃなくてセレブレストラン
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