日々逍遙「明治神宮」「ムンク展」「フリップス・コレクション展」
【2019年1月6日(日)】
1月4日は77歳の誕生日だった。
喜寿は数え年で数えるようだが、東京と横浜にいる3人の子どもたちが「遅ればせの祝いをするから出てこい」という。孫たちの塾通いが忙しく、関西には来られないと言うのだ。やむを得ず、のこのこと東京・六本木のホテルに出かけた。
翌朝、明治神宮へ。学生、新聞社時代を含めて7年ほど東京にいたが、ここには行ったことがなかった。荒れ地に人の手で作られた永遠の森というのを見たいと思った。
3が日は過ぎたというのに、参道はかなりの人手。その参道に覆いかぶさるように広葉樹が葉を広げていた。左右に広がる広大な敷地の森はまったく人の手は入らず、自然の植生にまかせた木々の循環が続いている。
参道脇に、箒や落葉を入れる布袋が置かれている。朝、昼、夕の3回、参道の落葉が掃き集められ、そのまま木々の根元に置かれ、自然の循環を助けるという。見事な「鎮守の森」だ。
100円でおみくじを引いてみた。なんと、吉兆ではなく、祭神の1人である昭憲皇太后の御歌がしるされていた。
茂りたるうばらからたち払いてもふむべき道はゆくべかりけり
今年は、茨(うばら)の道?
大鳥居を覆う広葉樹
参道脇の竹箒 森のなかを行く参拝者
さすがにムンク。どの絵の前も2重、3重の人であふれている。特に有名な「叫び」は、鑑賞の前に列を並ばなければならない。
近代社会が招いた人間の不安、孤独、絶望を描いていることが、見る人の共感を呼ぶのだろう。図録には「人間の口から放たれた不安が、風景のなかに拡散し、さざ波を立てている」と書かれていた。しかし、絵のなかの男性は叫んでいるのではなく、耳を塞いでいる、という見方もあるようだ。ムンク自身が「自然を貫く叫びに底知れない恐怖を感じた」と、書いているという。
ちょっと分かりにくいが、約100点の展示作品のなかでも「絶望」「メランコリー」「夜の彷徨者」などの絵に引かれた。
「叫び」
「絶望」 「メランコリー」
「夜の彷徨者」
ムンク展の「叫び」に見入る寒さかな
【2019年2月3日(日)】
用事でまた上京したのを機会に、丸の内の三菱一号館美術館で開催している 「フイリップス・コレクション展」に出かけた。入るのに15分ほど待たされたが、なかなかの拾いものだった。
ワシントンにあるフイリップス・コレクションは、100年前に実業家が近代美術を蒐集した私立美術館。「アングル、コロー、ドラクロア等19世紀の巨匠から、クールベ、近代絵画の父、マネ、印象画のドガ、モネ、印象画以降の絵画を索引したセザンヌ、ゴーガン、クレー、ピカソ、ブラックらの秀作75点」と、普通の美術館の学芸員なら垂涎の的の作品がずらり。
それも、明治の時代に丸の内で初めてのオフイスビルとして建てられたレンガ造り・復元建築の重厚なインテリアの部屋を連なるように展示されている。
暖かい気候に恵まれた小旅行。帰った伊丹空港は雨だったが、なにやら春の気配・・・。
まだ固き蕾の中に春を待つ
海光の温みを集め水仙花
ゴア「聖ペトロの悔恨」 シスレー「ルーヴシェルの雪」
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