2010年8月アーカイブ: Masablog

2010年8月31日

読書日記「1Q84 BOOK1<4月―6月>」「同 BOOK2<7月―9月>」「同 BOOK3<10月―12月

1Q84 BOOK 1
1Q84 BOOK 1
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村上 春樹
新潮社
売り上げランキング: 266
おすすめ度の平均: 3.5
2 ハードカバーで読むほどではない
2 おもしろうて、やがてかなしき・・・
1 リタイアしてしまいました・・・
3 何度も読むべき作品なのか?
5 村上作品は、不思議だ。
1Q84 BOOK 2
1Q84 BOOK 2
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村上 春樹
新潮社
売り上げランキング: 264
1Q84 BOOK 3
1Q84 BOOK 3
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村上 春樹
新潮社 (2010-04-16)
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 話題のベストセラーだから、なかなか借りる順番が来ないだろうと買ってしまったのがよくなかった。 図書館で借りた他の本の返却期限に追われて、結局、これらの本は1年から半年近くサイドテーブルでほこりをかぶっていた。

  この夏、友人Mの好意で海辺の温泉で1週間を過ごす幸運に恵まれ、宅急便で送っておいた3冊を一気に読んだ。
 あらすじ?ウーン・・・。「村上春樹 ワールド」は、入り込むと自縄自縛に陥ったまま異次元で遊泳している感覚になり、頭がからっぽになってしまう。

 思いつくままに、読後メモみたいなものを書くしかない。

 この膨大な小説には、2人の主人公がいる。

  1人は「青豆」というスポーツクラブのインストラクターをしている女性。強靭な肉体を持ち、殺人と分からないように人を殺せる特技を持つ。
  その「青豆」が、殺人の仕事をしに行く途中、首都高速道路で渋滞に巻き込まれ、タクシーの運転手に教えられて非常階段を使い高速道路を降りる。

 降りた後「青豆」は、これまでとは違った世界にいることを少しずつ知っていく。
 「警察官の制服がこれまでと違っており、オートマチックの連発拳銃を身につけている」
 「月で米ソが協力して、恒久的な観測基地の建設が進んでいる」
 「本栖湖の周辺で銃撃戦があり、警官3人が死亡した」
  「空には、月が2つ浮かんでいる。1つは黄色(マザ・母)、少し小さいもう1つは緑色(ドウタ ・娘)・・・」

 1Q84年――・・・Qはquestion markのQだ。
    好もうが好むまいが、私は今この「1Q84年に身を置いている。私の知っている1984年はもうどこにも存在しない。今は1Q84年だ。・・・私はその疑問符つきの世界のあり方に、できるだけ迅速に適応しなくてはならない。・・・自分の身を守り、生き延びていくためには、その場所のルールを一刻も早く理解し、それに合わさなければならない。


  もう一人の主役は、予備校の数学講師で小説を書いている「天吾」。「天吾」は、知り合いの編集者からなぞの美少女「ふかえり」が書いた小説「空気さなぎ」を書き直してほしいと頼まれ、それがベストセラーになってしまう。

 「空気さなぎ」に・・・描かれているのは「リトル・ピープル(小さな人)」が出没する世界だ。主人公の十歳の少女は孤立したコミュニティーを生きている。「リトル・ピープル」は夜中に密かにやってきて空気さなぎをつくる。空気さなぎの中には少女の分身が入っていて、そこにマザとドウタの関係が生まれる。その世界には月が二個浮かんでいる・・・。


 この小説に書かれたことが、1Q84の世界で現実に起こっていく。
 「いろんなものごとがまわりで既にシンクロを始めている。・・・そう簡単には元に戻れないかもしれない」


「空気さなぎ」も不可解な物体だが「リトル・ピープル」も「善であるのか悪であるのか」は最後まで分からない。

  そして「青豆」は、会ってもいないのに(たぶん、空気さなぎを通して)「天吾」の子供を妊娠する。   実は「天吾」と「青豆」は、小学校の同級生でずっと「互いを引き寄せ合っていた」仲だった。

  2人は最後の最後になって再会する。そして「1Q84」の世界から出るために、手を取り合って非常階段を登り、首都高速道路三号線に出る。
 夜明けになっても、月の数は増えていなかった。ひとつきり、あの見慣れれたいつもの月だ。


 どこまでも不思議かつ不可解な「春樹ワールド」は終わる。

  世界的なベストセラーになったこの小説について、最近ノルウエー・オスロで行った講演で1つの謎解きをしている。
  「9・11がなければ、米国の大統領は違う人になり、イラクも占領しない、今とは違う世界になっていただろう。誰もが持つ、そうした感覚を書きたかった」

 昨年6月16日付け読売新聞でも取材に答えている。
  「オウム裁判の傍聴に10年以上通い、死刑囚になった元信者の心境を想像し続けた、それが作品の出発点になった」

 小説の各所にオウム真理教エホバの証人ヤマギシ会などを連想させる描写が続き、それがまた読む人の興味をつのらせる。

  中国でも、この本がベストセラーのトップを占めているが、最近の朝日新聞に「首都高速の非常階段が見たい、という中国人旅行者が増えるかもしれない」と書かれていた。異常といえる「春樹」ブームである。

  著者は、兵庫県芦屋市の出身。「ひょっとしてノーベル賞!」という声も大きくなって、私がボランティアをしている芦屋市立図書館打出分室でも、著者についての話題がつきない。
 処女作「風の歌を聴け」にでてくる「お猿のいた公園」は図書館に隣接しているし、この分室自身「海辺のカフカ」にでてくる図書館のモデルとも言われている。「ノーベル賞を取れたら、ここを"村上春樹記念図書館"と改名しようか」と、勝手な井戸端会議は盛り上がる。
風の歌を聴け (講談社文庫)
村上 春樹
講談社
売り上げランキング: 114620
おすすめ度の平均: 4.0
5 カリフォルニア・ガールな本
1 物語が見えてこない
1 盛り上がりがなく退屈な小説
3 啓発的で軽快な青春小説
4 結果から言うと
海辺のカフカ〈上〉
海辺のカフカ〈上〉
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村上 春樹
新潮社
売り上げランキング: 57444
おすすめ度の平均: 4.0
4 ファンタジー...
5 潜在意識という名の迷宮へ
3 よくわからない時代とよくわからない人間のためのわかりやすい作品
5 不完全さの美学。
4 難しいし...


  私も通った芦屋市立精道中学では「先生によく殴られた」と話しているという著者は、ふるさとの声をどう聞くだろうか・・・。

2010年8月11日

 読書日記「円朝芝居噺 夫婦幽霊」(辻原 登著、講談社刊)


円朝芝居噺 夫婦幽霊 (講談社文庫)
辻原 登
講談社
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おすすめ度の平均: 4.0
5 三遊亭圓朝は口演のできる小説家
5 重なるイメージの美しさ
3 湘南ダディは読みました。
2 円朝作としては、物足りない・・・。
5 非常に上手い構成の洒落た作品


  この本も、前回同様、昔いた会社の大先輩の推薦。「へそ曲がりにふさわしい夏の読み物」と伺ったからには見逃せない。さっそく図書館で借りてきた。

 著者の作品を読むのは「翔べ麒麟」(読売新聞刊)以来。この著書も2007年に発刊された頃に気にはなっていたのに読みそびれていたが、大当たり!夢中になって読んでしまった。
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翔べ麒麟
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辻原 登
読売新聞社
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 「メタフィクション」という文学手法があることを、浅学にして知らなかった。Wikipedia(WEB上のフリー百科事典)には「フィクション(小説、虚構)の一種で・・それが作り話であることを意図 的に読者に気付かせることで、虚構と現実の関係について問題を提示する」とある。

 物語の仕掛けはまず、江戸末期から明治の時代に一世を風靡した三遊亭円朝芝居噺(鳴物噺)の説明から始まる。

 高座の背後に書割をしつらえ、芝居の気分をかもし、あるいは台拍子、宮神楽、あるいは駅路の鈴、山下し、浪の音などの鳴物を入れ、役者の声色(こわね)は使わないけれど、聴客(ききて)は芝居をみるように喜び、円朝の芝居噺と評判を取った。

 彼は自ら創作した噺を高座にかけ、さらにその速記を本にしたり、新聞に連載したりした。


 そして、なぜか速記の歴史の説明があり、円朝の芝居噺「怪談牡丹燈籠」が田鎖式という速記法で本になったことを明らかにする。

 これからが仕掛けの第2弾。著者(辻原登)自身が登場し、ある国文学者の遺品にあ った速記録を手に入れる。それは「夫婦幽霊 三遊亭円朝・・・」と解読された。
 円朝に「夫婦幽霊」という作品は存在しなかった。だが、いま、それが目の前にある。幽霊なのか。


 それからがメタフィクションの真骨頂。辻原創作の芝居噺が「円朝にござります」と始 まる。この話しがめっぽう面白い。

 年も明けての安政二年三月六日の夜のことでござります。江戸場内で、とんでもない大事件が出来(しゅつたつ)いたしました。

 御金蔵から、千両箱4箱を盗みだした大工たちの仲間割れ、奉行所の面子をかけた捜 査・・・。円朝自身も登場し、安政の大地震や吉原、深川の情景がたっぷりと描かれる。

 芝居噺は、大川端での円朝などの幽霊演技で「おあとがよろしいようで」と大団円を迎 えるが、その合い間、合い間に挟まれた「訳者注」がくせもの。
 『符号(速記)原稿の中に幽霊がいる』。・・・この原稿が書かれたはずの時代より以前のの速記符号が使われている・・・


そして、最後にアット驚く大仕掛け。

「訳者後記」の後に「円朝倅 朝太郎小伝」という一節があり「夫婦幽霊」は「朝太郎と芥川龍之介の共同作業だった」と・・・。この小伝も、もちろんメタフィクションなのだ。

ああ、おもしろかった!

もう1冊、江戸を舞台にした小説を読んだ。

「麗しき花実」(乙川雄三郎著、朝日出版刊)。

麗しき花実
麗しき花実
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乙川 優三郎
朝日新聞出版
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おすすめ度の平均: 4.5
4 「喜知次」読後の爽快感を期待したのだが・・・・。
5 文庫化まで待てない
5 麗しくも苦い蒔絵の世界
 著者の本を読むのははじめてだが「人間の心理と微妙にからみあう情感豊かな情景描写には定評がある」と、この小説を連載した朝日新聞のWEBページに書かれている。

 江戸・根岸の里にある蒔絵工房の世界が詳細に描かれ、知っているようでほとんど無知に近かった蒔絵の世界を堪能できる。
  西国の蒔絵師の家に生まれた主人公、理野(りの)が女性としてはじめて工房で修業にあけくれるという設定だが、工房の主の原羊遊斎、江戸琳派の絵師、 酒井抱一、その弟子の鈴木其一らは、実在の人物。
  理野と、これらの人物のからみが情感たっぷりに描かれ、4ページの口絵にある蒔絵の写真もすばらしい。
 この本のおかげで「蒔絵博物館」というWEBページを知ったのも収穫だった。

2010年8月 9日

読書日記「三千枚の金貨 上・下」(宮本 輝著、光文社刊)


三千枚の金貨 上
三千枚の金貨 上
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宮本 輝
光文社
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三千枚の金貨 下
三千枚の金貨 下
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宮本 輝
光文社
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 「最近の一押しは、宮本 輝のこの本。手練れの究極のワザを見る思い。結局は誰が真の主役か分からないように出来ているが、それぞれの登場人物が実に面白くかかれている」

  昔、勤めていた新聞社の大先輩からこう伺って、さっそく本屋に走った。この本、まだほとんど広告も出ず、書評で紹介されていないのに、大先輩はどこで知られたのか・・・。
すごい読書家であるこの大先輩から紹介してもらった本が、しばらくたって話題になり、なんだかとても得をした気分になったことが幾度かある。

 桜の木の根元にメープルリーフ金貨を埋めた。・・合わせて三千枚。
  盗んだものではないし、何かいわく付きのものでもない。みんな自分が自分の金でこつ こつと買い集めたのだ。
 場所は和歌山県。みつけたら、あんたにあげるよ。
 男はそう言って、自分の病室に戻って行った。


 小説は、いささか荒唐無稽とも思える、こんな設定から始まる。

  金貨を埋めたと語った芹沢由郎は、闇の世界を自らの力ではい上がり、支配してきたファイナンス会社の経営者。肝臓がんの末期と知った芹沢は、その秘密をじっこんにしていた女性の妹で看護師の室井沙都にしゃべったつもりだった。
  しかし、室井は急患で席をはずし、モルヒネで意識がもうろうとしていた芹沢がしゃべった相手は、たまたま談話室にいた40代のサラリーマン、斉木光生だった。

  5年前に聞いたこの話しを思い出した斉木は、同じ40代の仲間2人と30代の室井と語らって、宝探しを始める。そして、ついにその桜の木がある無人の農家を見つけ、購入する。

    だが4人は、金貨を掘り出す夢を20年間、凍結してしまう。これから20年の間に、金貨以上に大切な宝物を見つけるために。

  この物語は、金貨と闇の世界と熟年男女の絡み合いという筋を借りて、日本が歩んできた成長とこれからの衰弱、成熟を描こうとしたのかもしれない。

 そのためか、話しの展開の合い間、合い間に、大人の美学を彩る豊潤な材料がちりばめられている。

 斉木光生が幻想までみるほど満喫したシルクロード・フンザ、への旅・・・。
 シャンパンの「ヴーヴ・クリコ」、ヘミングウエイが愛したダブルの「フローズン・ダイキリ」、「仄かに海草の香りがするシングルモルトのロック」(たぶん、アイラ島産?)・・・。
 骨董店で見つけた伎楽天女の石像、水墨画、故郷の母が経営するこだわりの蕎麦店、指 物師の名人が作った菓子入れ、フォアグラのおかか和え、おでん屋でシメに食べる鯨の身 とコロが入った餅・・・。
 そして、いささかへきえきするが、ゴルフについてのあくなきうんちく・・・。

 斉木光生は、こう語る。
 「人生って、大きな流れなんだな。平平凡凡とした日常の連続に見えるけど、じつはそうじゃない。その流れのなかで何かが刻々と変化している」


 ところで、読み進むうちに著者の誤謬ではないかと思われる箇所を見つけた。

 小説の冒頭では、秘密をもらした男は「自分の病室に戻って行った」と書かれている。
 とろが終わりに近い箇所ではこんな記述がある。(看護師の室井沙都が)「やっと談話 室に戻ると、斉木光生はいなくて、芹沢由郎だけが車椅子に座っていた」
 これは、小説が連載されていた雑誌「BRIO」(光文社)が突然、休刊になったためのちょっとした校正ミスなのか、それとも著者の読者に対する「ちゃんと読んだかい」という問いかけなのか・・・。

 ここまで書いて、パソコン机の脇に同じ著者の「にぎやかな天地  上・下」(中央公論 新社刊)が読んだ後、横積みしたままだったのに気づいた。

にぎやかな天地〈上〉 (中公文庫)
宮本 輝
中央公論新社
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おすすめ度の平均: 4.0
1 ステレオタイプの権化
4 しっかりした展開で一気に読ませるが、ラストが...
5 発酵食品と人間関係の不思議
5 新刊が出ると必ず読む
3 発酵食品に付いて学べます

にぎやかな天地〈下〉 (中公文庫)
宮本 輝
中央公論新社
売り上げランキング: 70239
おすすめ度の平均: 4.5
5 連綿と繋がる生死
3 にぎやかな発酵!?
5 本年のベストワン
 この本もさきほどの大先輩に推薦していただいたのではなかっただろうか。2005年の9月とかなり前の発刊だ。昔いた新聞社の朝刊に連載されていたのを思い出した。

 勤めていた出版社がつぶれ、非売品の豪華限定本制作で生計をたてている船木聖司は、スポンサーである謎の老人・松葉伊司郎から日本伝統の発酵食品の本を作りたいと依頼される。

 滋賀県高島町「喜多品」の鮒鮓、和歌山県新宮市「東宝茶屋」のサンマの熟鮓、同県湯浅町「角長」の醤油、鹿児島県枕崎市の「丸久鰹節店」。聖司が取材をした発酵食品の名店はすべて実在の老舗。著者自身が取材を重ねたところらしい。

 祖母が育て、母親が受け継いだ糠床のレシピがすごい。「昆布茶の粉末、いろこの粉末、鮭の頭、和辛子、鷹の爪、残ったビール、魚や野菜の煮汁・・・」

 鹿児島の「丸久鰹節店」で、夫人に勧められた木の椀に入ったお汁。「削った鰹節に熱湯を入れ、ほんの少し醤油をたらした」もの。「これにとろろ昆布を入れたら・・・」
 今晩やってみようか、と思う。しかし、気づいたら、小袋に入った花ガツオはあっても 鰹節がない、鰹削り箱がない・・・。

2010年8月 7日

 読書日記「旅に溺れる」(佐々木幹郎著、岩波書店刊)


旅に溺れる
旅に溺れる
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佐々木 幹郎
岩波書店
売り上げランキング: 67693

 詩人である著者が、これまで雑誌などに発表した旅についての著作をまとめたエッセイ集。旅に出て、その土地の人びとや祖霊、死者との共鳴の言葉がほとばしり出ている。

  本と同じ「旅に溺れる」と題した北九州・平戸を訪ねた小文を読むと、著者の旅への想いが分かる。

 
 観光コースにあるものはたいてい、現地に行くとなんということはない。しかし、だから行かないというのは、旅としてつまらない。俗なもののなかにこそ人間がいる。そして、そのまわりには必ず俗を越えたもの、俗を離れたものが発見できる。その発見が旅の面白さだ。


 砂浜の先端の松林の先に小さな古びた神社があった。・・・入り江の風景は古代から少しも変わっていないのではないか。八百年ほど前の昔にワープしていくような気分になった。その瞬間、えも言われぬ旅の喜びが湧いてきたのだ。


 「能役者に届いた赤紙」を破ってまで守り続けた山形県鶴岡市の「黒川能」 、たった一日、町の人のほとんどが狐に化ける新潟県阿賀町の「狐の嫁入り行列」、幕末の絵師・金蔵、略して給金の屏風絵が主役の高知県赤岡町「給金祭り」 、エイサーと呼ばれる沖縄の盆踊りが各地に広がっている「琉球國祭り太鼓」 、町の人が野菜を主役に仕立てる富山県福岡町の「つくりもん祭り」 、冬季オリンピックの正式種目にすることを真剣に狙っている北海道壮瞥町の「昭和新山国際雪合戦」

  地域の人たちが暮らしのなかで、はぐくみ、仕掛けてきた祭り、催しの数々・・。読んでいるだけでワクワクしてくる。どうしても、一度は行ってみたくなる。

 圧巻は、墓のない文化、鳥葬儀礼を訪ねるネパール、チベットへの旅だ。

 鳥葬は・・・鳥(ハゲワシ)に死体を食べさせることで、人間がこの世でなし得る最後の施しを与え るのである。
  死体は聖なる場所である鳥葬場に運ばれ、ハゲワシが食べやすいように石で砕かれ、ナイフで切り刻まれる。・・・死者の魂はハゲワシによって天に最も近いところへ運ばれるのだ。食べ残された骨などは小さく砕かれたまま、鳥葬場で吹きっさらしになる。


 ネパールでは、チベット教徒などの火葬に出会う。
 死体は薪の上で、まるでサンマを焼くように焼かれ続けた。男たちは長い竹を手に持ち、それを箸のように動かしながら、死体を折り曲げていく。頭蓋骨が最後まで焼けず・・・竹の棒で叩いた。中から脳味噌が流れてきて、柔らかいレバーが焦げるときのような音をたてた。


 火葬に付すとき、死者は肉体から魂の世界へ旅立つ。地上にはなにも残らない。・・・この上、さらに墓など必要だろうか?


 最近、日本人が疑問に思い始めたことへの1つの答えがここにある。
 このブログの前回に紹介した「メメント・モリ」(藤原新也著、情報センター出版局)の写真が、映像のように目の裏に投影されてくる。
メメント・モリ
メメント・モリ
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藤原 新也
情報センター出版局
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おすすめ度の平均: 5.0
5 最も影響をうけた本のひとつ
5 ニンゲンは犬に食われるほど自由だ。(本文より)
5 色褪せない名著
4 生死論の古典
5 肉体的な写真本


 ▽参考・この本で紹介されている著書
 ・「牡牛と信号ーー<物語>としてのネパール」(山本真弓著、春風社刊)
牡牛と信号―
山本 真弓
春風社
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