読書日記「六輔 五・七・五」(永六輔著、岩波書店)
ここ数年、ホトトギスの同人が主宰する俳句の会に月1回、出席していた。 「客観写生」を主唱する伝統俳句を継承するこの会に出て、自然の移ろいを五・七・五に表現するという思わぬ喜びを知った。ただ、季題を中心とした作句のルールは、いささかきゅうくつでもあった。 そこで見つけたのが、この本。軽妙洒脱で知られる 故・永六輔の俳句で、失礼ながら「息抜きを試みよう」と思った。 この著作は、作者の死後、所属していた 東京やなぎ句会、話の特集句会の記録などをもとに、家族が選んだ2000句あまりを詠まれた年代順に収めている。そのうち、気になった句を季節ごとに勝手に抜き出してみた。いささか"川柳"っぽい句が多くなったが・・・。
第一章「昭和四十四年~昭和五十五年」
※春
タンポポ咲いたサーカスが来た
低すぎて腹をすりむく燕かな
見上げても見あげても囀る姿なく
蛇口ひねったままの水しぶきのさくらんぼ
春の雨濡れて渇いて一人旅
濡れ手ぬぐい下げて春めく風の中
※夏
夕焼に一瞬朱い波しぶき
バトンに続いて神輿照れながら
吹きぬける風が汗ふく初夏のシャツ
おぼろ月手をつないでみる老夫婦
闇の中でひまわりひそと語りあう
※秋
長袖を通せばかすかな秋立ちぬ
※冬
波の音湯豆腐の音風の音
老いてなおビングのホワイトクリスマス
水たまりひからびて落葉風に浮く
寒鯉はねて氷と空気を割った
行く年や書かなかった日記貼一冊
※春
タンポポ咲いたサーカスが来た
低すぎて腹をすりむく燕かな
見上げても見あげても囀る姿なく
蛇口ひねったままの水しぶきのさくらんぼ
春の雨濡れて渇いて一人旅
濡れ手ぬぐい下げて春めく風の中
※夏
夕焼に一瞬朱い波しぶき
バトンに続いて神輿照れながら
吹きぬける風が汗ふく初夏のシャツ
おぼろ月手をつないでみる老夫婦
闇の中でひまわりひそと語りあう
※秋
長袖を通せばかすかな秋立ちぬ
※冬
波の音湯豆腐の音風の音
老いてなおビングのホワイトクリスマス
水たまりひからびて落葉風に浮く
寒鯉はねて氷と空気を割った
行く年や書かなかった日記貼一冊
第二章「昭和五十六年~平成四年」
※春
ぶらんこや地球自転のきしむ音
庭のない淋しさ抱いて植木市
酔覚めて又あらためて花疲れ
寝返りをうてば土筆は目の高さ
九本のチンポコのどか夏めく湯
伸びるのがわかる気のする若葉
春眠や覚めても覚めても夢の中
煮転がす慈姑の音の軽やかさ
新緑や濃淡濃淡濃淡淡
※夏
純白の瀑布緑をぼかしおり
葉の表葉の裏見せて青嵐
※秋
仲たがいしてそのままの秋深し
夏と秋の縫目を飛ぶや赤とんぼ
たぎる湯に新そば生命をはらみけり
ずっしりと水の重さの梨をむく
※冬
野沢菜の歯にひんやりと信濃なり
浅漬やしかと虫歯のありどころ
露出あわせれば針先の如き木の芽
腰痛の農夫牛蒡を引ききれず
※春
ぶらんこや地球自転のきしむ音
庭のない淋しさ抱いて植木市
酔覚めて又あらためて花疲れ
寝返りをうてば土筆は目の高さ
九本のチンポコのどか夏めく湯
伸びるのがわかる気のする若葉
春眠や覚めても覚めても夢の中
煮転がす慈姑の音の軽やかさ
新緑や濃淡濃淡濃淡淡
※夏
純白の瀑布緑をぼかしおり
葉の表葉の裏見せて青嵐
※秋
仲たがいしてそのままの秋深し
夏と秋の縫目を飛ぶや赤とんぼ
たぎる湯に新そば生命をはらみけり
ずっしりと水の重さの梨をむく
※冬
野沢菜の歯にひんやりと信濃なり
浅漬やしかと虫歯のありどころ
露出あわせれば針先の如き木の芽
腰痛の農夫牛蒡を引ききれず
第三章「平成五年~平成十五年」
※夏
とまらない背中のかゆみ薄暑かな
「あのあたり富士見える筈」梅雨の宿
※秋
湯上りの汗のひき方冬隣り
姿なく枝揺れておりホ-ホケキョ
翅ごときこすって何でこの音色
※冬
生きてきた通りに生きて春一番
金縷梅を「まず咲く」と読むひとありき
※夏
とまらない背中のかゆみ薄暑かな
「あのあたり富士見える筈」梅雨の宿
※秋
湯上りの汗のひき方冬隣り
姿なく枝揺れておりホ-ホケキョ
翅ごときこすって何でこの音色
※冬
生きてきた通りに生きて春一番
金縷梅を「まず咲く」と読むひとありき
第四章「平成十六年~平成二十七年」
※春
囀りの途切れて深き森戻る
淫美なり裸になった柏餅
※秋
渡り鳥お前等行くのか帰るのか
※春
囀りの途切れて深き森戻る
淫美なり裸になった柏餅
※秋
渡り鳥お前等行くのか帰るのか
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