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Atelierで“圓通寺”が含まれるブログ記事

2010年7月29日

隠居の京都:迎賓館見学


 京都御苑にある京都御所の隣に京都迎賓館がある。京都御所は宮内庁の管轄で、迎賓館は内閣府の管轄だという。ちなみに、京都御苑は環境省の管轄らしい。
 京都の伝統工芸の匠たちの技術の粋を集めた建物ということで、建築家の端くれである娘が行きたがっていたのであるが、新聞公募による抽選では家内と私の組みがあたってしまった。
 本人確認やセキュリティ・チェックも厳しく、見学の注意書きには、写真は禁止区域外では撮ってもいいが、ブログには載せないでくれとある。それでも、平成17年4月に開館し、その年の公募で見学された方のページには写真入りで詳しく載っている。ブログはだめで、ブログでないページならいいということなのだろうか。昨年行った人のブログにも写真があるので、一応禁止しているが大目に見ているのかもしれない。コンプライアンス意識は高い方と思っているので、今回は写真を割愛しようとおもう。

御所のけもの道 猛暑のためか御苑内にある中立売駐車場はガラガラである。太陽がギラギラと照りつける御所土塀横の広い砂利道を5~6分歩いていく。この砂利道が、なかなか歩きにくい。だれもそうなのか、砂利の少ないけもの道のような細い白い道が続いている。自転車も、そのけもの道をやってくるので、行き違いにはどちらかが砂利の方に避けなければならない。

 迎賓館は、中庭的な池の周りに、各国首脳級クラスの客人をもてなす広間が六つある。見学できたのは、そのうちの三つである。【夕映えの間】という大広間には、【圓通寺】での借景にも似た【比叡月映】という綴れ織が壁面を飾っている。反対の西面を飾っているのは、この部屋の名前の由来となっている【愛宕夕照】と名付けられた同じような大きな綴れ織である。
 【藤の間】は多人数の洋式のパーティー用らしい。使用する洋食器が、白いテーブルクロスの上に陳列されていた。
 【桐の間】は、和式の宴会ができるようになっている。56畳の和室には12mの長さの漆塗りテーブルが中央にあり、背中に桐の紋が入った座椅子に座ると掘りごたつのように足を伸ばせるようになっている。その和室には、お供の人たちが控える茶室のような部屋がついている。
京都迎賓館で使われる箸;クリックすると大きな写真になります この広間から玄関に向かうのには、庭園となっている池の中央にかかる【廓橋】を通って行く。池には、千万円以上すると思われる(価値はよくわかりませんが)錦鯉がたくさん泳いでいる。その鯉の子供と思われる稚魚は、鴨川あたりから飛んでくるサギに狙われているとボランティアと思われる高齢の女性が説明してくれた。
 帰り際に、土産で販売していた外国人を和食でもてなすときの箸を求めた。竹で作られたこの箸は指で握りやすいように竹がねじってある。実際に使ってみると非常にものをつまみやすい。これなら、箸に慣れない海外の方も使えるであろう。

とらやの宇治金時;クリックするとおおきくなります 見学を終えたあと娘と落ち合い、羊羹で有名な【虎や】へ、かき氷に涼を求めた。御所蛤御門のすぐ近くにある。いい年の男性が一人で大盛りの宇治金時を楽しんでいるのにはびっくりした。



2009年1月11日

冬の京都:圓通寺借景で雪の比叡山を楽しむ

 正月に帰省していた二女が、新しく購入したパソコンが届く日に設定を兼ねてかさばる荷物を持ってきて持って帰ってほしいとアッシーを頼まれた。天気予報は近畿地方中部の平野部でも積雪があるかもしれないと告げているが、道路は大丈夫のようだ。
クリックすると大きな写真になります 家内が使っている製品と同じものを価格.com で格安で求めたパソコンの設定は問題なく終わった。私が組み上げたパソコンがだんだんと駆逐されていって寂しいが、致し方ないことだ。

 昼食を近くの京風うどん屋さん「だいりき」で摂った。メニューには創作的なうどんが多く、人気のいなり寿司と細身の京うどんとの取り合わせは大阪では味わえない。

 このような時には、せっかく京都まで来たのでどこかに出かけるのであるが、観光としては季節はずれである。娘のおすすめにしたがって、上賀茂神社にちかい「圓通寺」にカーナビをセットした。比叡山が借景となる庭がいいのだそうだ。昨晩からの雪で、比叡山は白い。
 ちょっとした京都ガイド・ブックには駐車場があるかどうかのような詳細はでていないから、きっと拝観客も少ないと思われた。カーナビの案内にしたがって北山通りの府立植物園から深泥池近くの細い道をたどっていくと、最近開発されたと思われる新興住宅地のはずれにあった。駐車場は狭いスペースだが5~6台は駐められるようで無料である。拝観料600円を払って、冷たい板張りの廊下を巡っていくと、有名な借景が眺められる居室にでる。電気カーペットが敷いてあり、先客4名ほど座って眺めていた。

クリックすると大きな写真になりますクリックすると大きな写真になります この寺ではこの居室から外に向かっての写真撮影以外は、禁止されている。確かに苔むした石庭から数本の古い杉(檜?)越しに眺望できる白い比叡山は、一幅の絵である。
 この景観を守るため京都市は「京都市眺望景観創生条例」というものをつくり、マンションの建設などを規制しているようである。
 この寺は他に見るべきものは特にない。帰り際、檜皮葺きの屋根にうっすらした雪が残る門から入ったすぐそばに一本の蝋梅が咲いていた。


(追記:2009/1/31)1月28日の毎日新聞朝刊 「余録」は次のような内容だった。そう言えば、堺市泉北の荒山公園梅林に毎年咲く蝋梅はそろそろだろうか。
 英語で「ウインター・スイート」と呼ぶ花があるが、何だろうか。実はロウバイという。スイートには甘さとともに香りを示す意味があると言えば、ああなるほどと思われる方が多いだろう。寒気の中をただよう澄んだ芳香はまさに「冬の香り」である。
 散歩の途中、香りに気づいて見回せば、人の家の庭先のロウバイが目に入ってきた。葉のない枝には2、3㌢ほどの黄色い花がちょっとおじぎをしたような感じでいくつもついている。半ば透き通ったロウ細工のような光沢をもつ花である。
 いったいどんな造化の妙でこんなロウを引いたような花弁ができたのか。漢字では「蝋梅」だが、植物学上は梅と違うロウバイ科の木で、学名もずばり「冬の花」との意という。原産地の中国からは朝鮮半島経由で江戸時代初めに伝わった。
 芥川龍之介に「蝋梅や雪うち透かす枝の丈」の旬がある。「筑波おろしの寒きに琥珀に似たる数朶(すうだ)の花をつづりぬ」という田端の家の一株は、維新で没落した本所の養家にあった木だった。家に残る財はそれだけというが、当時わざわざ移植するほど珍しいものであったらしい。
 この花が満開となれば、梅の開花の知らせも届き始める。「春信」とは春の便りという意味だが、冬の季語である。同じく立春前の寒中にあって近づく春を待ちわびる「春隣」「探梅」といった言葉のいくつかも思い出させるロウバイだ。
 ちなみにその花青葉は「先導」「先見」だという。妨れる春をどんな花よりもいち早く察知し、人々に教えてくれるからに違いない。風が冷たければ冷たいほど、雪が深ければ深いほど、春は近い--寒中の芳香がそう告げている。


京都・奈良私的観光地図に掲載