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Atelierで“十和田湖”が含まれるブログ記事

2014年9月17日

隠居の旅行:青森の秘湯を巡る:蔦温泉・青荷温泉・酸ヶ湯温泉


 情報システム部門の仕事をしていた現役時代の某システム研究会の役員だった(まだ現役もいる)人たちが、年一回集まる行事がある。「露天風呂研究会」と称して、各地の秘湯を巡る旅をしている。昨年は、同じ9月の初旬に、高山・奥飛騨温泉郷を旅している。

 今年は、元会長夫妻が訪れて良かったという八甲田山麓にある蔦温泉とランプの宿として有名な青荷温泉を訪れるという計画が立てられた。

 日本旅行がアレンジした旅程では、大阪からの二人は伊丹空港からJAL で青森まで飛び、新幹線でくる東京組と新青森駅で合流することになっている。名古屋小牧空港から FDA というLCCで来た名古屋組2名と空港で合流して、3日間世話になるツアーバスに乗り込んだ。
 この旅行、温泉を楽しむことが主目的であるが、アルコール好きが多く、東京組が到着するのを待つ間、10時から空いていた駅のレストランで、ホヤの刺し身をあてに、再会を祝して乾杯した。東京組は、新幹線の中で一升瓶を開けたという。

 はじめに訪れた三内丸山遺跡は、日本最大級の縄文集落跡ということである。浅学の身にとっては、あまり有り難みがよくわからないが、野球場が計画されていた土地を掘り返していて発見されたという遺跡は広大である。野球場の工事を中止し、遺跡を保存するとの当時の北村知事の決断を掲載した1994年7月27日付け新聞が展示されていた。
 ボランティアガイドの案内で、一通り見学した後、施設内にあるレストランで昼食をしてから、八甲田山雪中行軍遭難資料館に向かった。

 新田次郎の小説『八甲田山死の彷徨』を原作とした高倉健主演の映画「八甲田山」の一部が上演される映像が15分ほど映写される。館の説明員は多弁である。建物横にある幸畑陸軍墓地は清掃が行き届いているが、亡くなった時の軍における地位がそのまま墓の大きさや場所に反映されているのには、いささか違和感を覚える。

 バスは八甲田山麓森林の中の山道を1時間あまり曲がりくねりながら走り、国道103号線沿いにある森に囲まれた一軒宿の蔦温泉に到着する。
 早速、浴衣に着替えて、古くからの内湯「久安の湯」に入る。熱い。蔦温泉の風呂はいずれも源泉の上に浴槽がありブナ材を使用した湯船の底板から湧き出す空気に触れていない「生の湯」ということである。確かに、風呂の下に敷かれた板の間から、熱い湯が湧いてくる。43.5度はあるということだ。

 翌早朝、もう一つの湯「泉響の湯」に浸ってから、朝食までの間、一周3kmという沼巡りの散策路を歩いた。ブナの森林浴は、気持ちが良い。鳥の鳴き声は、ときたま聞こえるが姿は見つけられない。トチの実が何回か音を立てて落ちてくる。
 朝食を済ませて、出発までまだ時間があるので、付近を歩いてみた。 蔦温泉には、大町桂月の墓がある。桂月は青森県の十和田湖と奥入瀬をことに愛し、晩年は同地の蔦温泉(現:十和田市)に居住し、1925年(大正14年)4月には本籍も蔦温泉に移したが、ほどなく胃潰瘍のため死去、57歳。と Wikipedia にはある。

 バスは奥入瀬渓流に向かう。2005年の11月に、奥入瀬にはレンターカーで訪れている。その時は、紅葉はもう終わっていたが、今回はまだ早い。その時は、渓流沿いの道は歩くことはなかったが、今回はバスツアーなので、1kmちょっとを歩くことができた。

 十和田湖の団体目当てのレストランで昼食を摂った。横には、中国から来られた方々が、昼食をとっていた。蔦温泉には、韓国の方々が泊まられていたし、近隣の国からの観光も着実に増えているようだ。
 40分ほどの遊覧船は、十和田湖をぐるっと回ってくれるが、緑が続く湖岸の景色はあまり変化がない。

 バスは、十和田湖の縁を巡ってから、緑一杯の国道102号線を外れて、ランプの宿青荷温泉に向かう。国道102号線を外れてからは、谷底に転げ落ちるように急坂を下っていく。
 谷底の幅10mほどの川沿いにある一軒宿は、ランプの宿という文字通り電気が通じている気配はない。スマホももちろん通じない。翌日の朝まで、電気のない夜を経験することになった。たまにはいいもんだ。
 この湯には、滝を見ながら浸かれる「滝見の湯」という露天風呂がある。泉質は炭酸泉であり、透明度の高い綺麗な湯である。風呂は、宿の敷地内に 5つありそのうち 2つが露天風呂である。宿の入り口にある「健六の湯」は、内湯ながら窓越しにせせらぎが見える最大の風呂であり、ゆっくりと手足が伸ばせる。
 LED 電球に慣れた眼には、ランプだけの夕食ははじめのうちは、何を食べているのかよくわからないが、段々と目が慣れてわかるようになってくる。

 翌日、八甲田で有名な酸ヶ湯(すかゆ)温泉に向かった。ここの公衆浴場は千人風呂といわれる混浴の広い風呂がある。男女の区分は、低い衝立があるだけである。
 泉質は、酸性硫黄泉(含石膏、酸性硫化水素泉) であり、白く濁っている。酸性がかなりキツイらしい。誤って金属製のバンドの腕時計をしたまま風呂に入ってしまったが、今も動いているところを見ると被害はなかったらしい。
 宿は、八甲田山中の一軒宿で登山帰りに立ち寄る登山客も多いということだ。入浴後、付近を散策してみると、日曜日とあって山登りの服装をした老若男女と多く出会った。

 名古屋に帰る二人(LCC のFDA は、昼前にしか便がない)を青森空港に送って、「青森県観光物産館アスパム」に休息する。りんご以外は土産に買うものもなく、隣接する青森港を見渡せる木製の散策デッキを歩いてみた。近くにねぶた会館があったが、見学する時間がなかった。
 東京に帰る仲間と新青森駅で別れた後、バスは大阪に帰る二人を青森空港まで送ってくれた。 天気に恵まれ、秘湯と緑にどっぷりと浸った、気の合う仲間との思い出に残る楽しい旅であった。

 行程地図を例によって Google Maps API で作ってみた。前回に作成して以来に、マップタイプに地形図がついかされているので、地形図で表現してみた。青荷温泉が、いかに谷底にあるかがよく分かるように思う。



 この旅行では、野鳥の姿をあまり見かけず、写真にも収めることができなかったが、蝶については、何種類かの写真をとることができた。名前を YAMAKO さんに同定してもらうと、こちら関西では見かけない蝶がほとんどであった。

旅行中に見かけた蝶・トンボ
アキアカネ;クリックすると大きな写真になります。 アキアカネ:葛温泉
2014/9/6
Fujifilm HS60EXR
50.9mm 1/160s f/5.0 ISO200
メスグロヒョウモン♂:葛温泉;クリックすると大きな写真になります。 メスグロヒョウモン♂:葛温泉
2014/9/6
Fujifilm HS60EXR
138.4mm 1/160s f/5.6 ISO320
ヒメキマダラヒカゲ:葛温泉;クリックすると大きな写真になります。 ヒメキマダラヒカゲ:葛温泉
2014/9/6
Fujifilm HS60EXR
43.9mm 1/200s f/5.0 ISO200
クモガタヒョウモン:十和田湖;クリックすると大きな写真になります。 クモガタヒョウモン:十和田湖
2014/9/6
Fujifilm HS60EXR
55.0mm 1/900s f/7.1 ISO200
メスグロヒョウモン♀:十和田湖;クリックすると大きな写真になります。 メスグロヒョウモン♀:十和田湖
2014/9/6
Fujifilm HS60EXR
55.0mm 1/480s f/5.6 ISO200
ウラギンヒョウモン:酸ヶ湯;クリックすると大きな写真になります。 ウラギンヒョウモン:酸ヶ湯
2014/9/7
Sony SO-04E
4.1mm 1/160s f/2.4 ISO40


2005年11月29日

晩秋のみちのく

このところ年に1回2泊程度の夫婦旅行をしている。2005年の今年は、紅葉のシーズンが終わったみちのく秋田・岩手・青森へ旅した。今回もFlight&Driveである。行き帰りの飛行機の時間と2泊の宿、レンタカーだけを決め、後は成り行き任せの旅行である。このような予約は、すべてインターネットでできる。便利になったものである。
 秋田空港に2005年11月7日9:30着、予約していたトヨタレンタカー(普段運転している車がマークⅡステーションワゴンなのでトヨタ系にしている)で手続きをする。 カローラと車種だけを指定しておいたが、4WDにスタッドレスタイヤをはかせてある車を用意してくれていた。天気予報では寒くなると言っていたので、心強い。カーナビに、本日の宿泊先乳頭温泉郷にある「休暇村田沢湖高原」にセットし、通過点に角館を指定し、いざ出発。BGMには、MP3 Player を用意した。このごろの車にはテープデッキは付いていないことが多いので、ノイス覚悟でFMを使う無線トランスミッターを持っていった。地方のFM局は数が少ないのか、88.5MHzでセットするとノイズは全くといって無く、快適に好きなJazzを聴きながら、晩秋のみちのくをドライブすることができた。クリックすると大きな写真になります。 天気予報通り、秋田から盛岡に通じる国道46号線上にある角館に着く頃には、にわか雨が降ったりやんだりの天気になった。紅葉シーズンの盛りが過ぎた平日にもかかわらず秋田の有名な観光スポット角館の武家屋敷通り界隈は、観光バスが何台も入って賑やかであった。この界隈の武家屋敷:青柳家の庭に晩秋を感じさせる楓の紅葉が、見事であった。見学した石黒家は、私の素人写真より、以下のページが詳しい。
http://www.hana.or.jp/hana/kigata/5isiguro.folder/isiguro.html


クリックすると大きな写真になります。 46号線に分かれて、田沢湖に向かった。みちのくの冬への変わり目なのか、風雨が強まった。夏にはきっと賑わうのに違いない湖畔も寒々と閑散としていた。枯れ葉舞う湖畔の道を「たつ子の像」までドライブ。なんで、こんな金ぴかの像を建てるんでしょうかね?




クリックすると大きな写真になります。クリックすると大きな写真になります。 一日目の宿泊先「休暇村田沢湖高原」は、田沢湖から岩手山に向う乳頭温泉郷の先ブナ林にある。道路沿いの一面のブナは、すっかり葉を落としている。宿の人の話では、ブナの紅葉は、黄色→赤と変化し、美しい黄色の時期はごくわずかということである。覚悟はしていたが、ここまで幹枝だけになっているとは思わなかった。しかし、ライトに照らされたブナの樹々に囲まれた露天風呂は格別であった。
二日目、46号線に戻って盛岡から東北自動車道に乗り八幡平に寄り道をし、八戸経由宿泊先の奥入瀬を目指した。昨日上ってきた道を下る途中で田沢湖が眺望できるポイントがあったので、パーキング。その時に撮ったデジカメ写真が上右のもの。


クリックすると大きな写真になります。 天気は快晴、雫石を通って盛岡に出る前に小岩井農場の道案内につられて行ってみることにした。北海道十勝あたりの牧場に比べればスケールは小さいが、きれいな牧場が広がっていた。記念にと売店で家内がチーズを求めて頬張る。




クリックすると大きな写真になります。 盛岡ICから東北自動車道に入って、八幡平へ。岩手山SAで休憩中、空は一天掻き曇り、突風と強い雨が降ってきた。気象予報通りである。晴天であれば遅い紅葉が楽しめたであろう。松尾八幡平ICで高速を降りて八幡平へ。夜間には閉鎖となるアスピーテラインを走ることに。あいにくの天候で眺望が悪いので、早々に退散した。途中で、記念に沼の写真を撮ったが、沼の名前が分からない。ガマ沼らしいが。松尾八幡平ICに戻って、東北道・八戸道で八戸へ。ガイドブックで遅い昼食の場所を探したが、適当な店が見あたらず、八食センターへ。 食事は定食もので済ませたが、市場に並んでいる20軒ほどの海産物店にはありとあらゆる海産物が安価に並んで活気に溢れていた。 日持ちを考えて好物のウニ瓶詰めだけしか買えなかったが、近くにこんな場所があればしょっちゅう行っているだろう。
 話は変わるが、今回ETCカードを持参した。もちろん、レンタカーにはETC装置は付いていない(これだけETCが普及してくれば付けてくれればいいと思う)が、前払いしているETCカードを使えばプリペイド部分は割引が効く。プリペイドの制度はなくなり、マイレージ方式になるようだが。なんでも成果主義になるんですね。

クリックすると大きな写真になります。 八戸からカーナビの指示に従って、宿泊先の「奥入瀬渓流グランドホテル」へ。強い風雨が相変わらず間歇的に続いた。車の中では分からないが、気温も下がってきた。北の日暮れは早く、天候のせいもあって宿につくころの4時半にはすっかり暗くなっていた。休暇村に比べると5割ほど料金の高い旅館は、年金生活者には少々贅沢であったが、前沢牛などの夕食と奥入瀬渓流を背にした露天風呂はドライブ疲れを癒してくれた。旅館近くの楓は、まだ赤い色を残してくれていた。


クリックすると大きな写真になります。クリックすると大きな写真になります。 三日目も時雨れたり、晴れ間が覗いたりする冬型の天候だった。十和田湖までの奥入瀬渓流沿いのドライブは、期待通り今回の旅行のハイライトであった。冬間近を思わせる渓流沿いの散策道は、多くの熟年族が晩秋を楽しんでいた。シーズンが終わっているのに、観光バスが何台も走ったり停まったりしていた。10月の最盛期には、大型バスの行き違いが難しいと思えるこの102号線はきっと交通渋滞を起こしているに違いない。渓流には、いくつかの滝から清流が流れ込んでいる。源は十和田湖であろう。

クリックすると大きな写真になります。 十和田湖に上がるにつれて、雨に雪が混じってきた。十和田湖から東北道十和田ICに抜ける峠には、雪が5cmくらい積もっていた。道の積雪はなかったが、4WD/スタッドレスは安心感を与えてくれた。どうやら、みちのくの秋から冬への変わり目に旅したらしい。



クリックすると大きな写真になります。 青森空港で車を乗り捨てるまでには、時間的余裕が十分あったので、家内の発案で弘前城の側にある「津軽藩ねぶた村」という展示場に立ち寄ることにした。夏のねぶた祭りには、一度行きたいと思っていたが大変な人出らしいので諦めていた。展示場では、まばらな来館者を前に、弘前ねぶたの説明や笛と太鼓のはやしの実演までしてくれた。また、同じ展示場内で、若者の津軽三味線の実演もあった。昨晩、旅館であったショウでの演奏よりも活き活きしているようであった。夏にもういちど来るかという思いに駆られている。

 仙台・新潟から北への東北には旅したことは無かったので、今回のFlight&Driveは良い思い出となった。とくに、季節が晩秋だったことも天候が不順だったこともあって、みちのくの寂寥感みたいなものを感じる旅になった。日本は美しい。そして、どこでも四季がある。時節を変えて、しだれ桜の咲く角館や新緑の奥入瀬にもう一度訪ねたいと想う。