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2008年11月11日

読書日記「菜菜ごはん」「ますます菜菜ごはん」(カノウユミコ著、柴田書店)


 3年前に女房を亡くしてから月に1回だが、料理教室に通いだした。

 レシピ、特に調味料のさじ加減を間違わないとしっかり、ちゃんとしたものができる。ちょっと料理がおもしろくなってきた。しかし先月、ハンバーグの付け合わせに作った「人参のグラッセ(人参の砂糖、バター煮)」には、いささか辟易した。もっと素朴な野菜料理が食べたくなる年齢なのに。

 ニューヨークに野菜料理の勉強に行っている次女が先日、一時帰国。紹介してくれた数冊の本の一つがこれ。「菜菜」は「なな」と読むのだそうだ。

 二女は外では肉や魚を食べることはあっても、作る料理は野菜が基本(ブログ「ニューヨークベジ生活」だそうだが、この本も「野菜・豆etc・すべて植物素材でつくる満足レシピ集」とある。それでも、本棚にあるいささか精進料理くさい「粗食のすすめ」(幕内秀夫著、東洋経済新報社)のレシピ集(春夏秋冬ごとに4冊)より、魅力的な料理が並んでいる。

  • キャベツの豆腐ソースグラタン
      キャベツとマッシュルーム、長ねぎを炒め、塩で下味。ミキサーにかけたリーブ油、レモン汁のソースをかけ、パン粉をふってオーブンで焼く
  • 大根の塩味グリル
      オリーブ油と塩をまぶした大根の表面ににんにくをのせ、天板をはさんでオーブンで焼く
  • 大豆のパエリア
  • 油揚げの焼き豚風
  • アスパラとエリンギの酒かすソースグラタン
  • セロリの葉と納豆のチャーハン
  • 万能ねぎのとろろ焼き
  • もやしのベトナム風お好み焼き


 カラー写真の出来もよいのだろう。見るからにおいしそうなのがいい。レシピが簡単で、ちょっと作ってみたくなるのもいい。
 この2冊。芦屋市立図書館に申し込んだら、最初の「菜菜ごはん」は三田市立図書館がから回ってきて、後の「ますます菜菜ごはん」だけ芦屋の図書館にあった。それだけ、借りられるまで時間がかかった。よく分からない仕組みだ。

最近、読んだ本
    •   「ボックス」(百田尚樹著、太田出版)  
      この著者の本を、このブログに書くのは「永遠の〇」「聖夜の贈り物」に続いて3冊目だが、いささか拙速感が・・・。
       高校ボクシング部を取り上げた青春小説だが、ストーリーの盛り上がりは、もう一つ。表題の「ボックス」というのは「レフエリーの"戦え"という合図」という説明から始まって、ボクシングのテクニックの紹介に多くのページが割かれる。
       「エピローグ」で、ボクシンブの顧問でこの小説の語り部役だった女性教師がつぶやく。
      ――その時、誰もいないリングに風が吹いたような気がした。・・・『あの子は・・・風みたいな子やった』

       そう、そんなさわやかさはたっぷり味わえる。
       文中に「英和辞書で『science』を引くと『ボクシングの攻防技術』と書かれていた」という記述がある。これは、知りませんでした。私の電子辞書には載っていなかったけれど。


    •   「詩のこころを読む」(茨木のり子著、岩波ジュニア新書)
        スタジオ・ジブリのプロデューサである鈴木敏夫氏が著書「仕事道楽」のなかで「宮崎駿監督に勧められた」と書いている本。
       茨木のり子という詩人は気になる作家だったが、当方は根っからの散文的人間。昔から、詩というものがサッパリ分からずにきた。読んでみたが、やはり詩が分からないことを再認識した。
       ただ、引用された詩への茨木のり子の静ひつさに満ちたコメントが分かりやすい。「詩というのも、いいものだな」。ちょっと、そう思えた。


    •   「折り返し点 1997~2008」(宮崎駿著、岩波書店)
       「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」「ハウルの動く城」から、最新作「崖の上のポニョ」完成までの、企画書、エッセイ、インタビューなどを収録したもの。「仕事道楽」と一緒に借り入れの申し込みをしたのが、やっと手元に届いた。
       同時に何冊かを借り、返却期限が迫ったので、500ページのほとんどを読めなかった。そのなかで、2001年の「千と千尋の神隠し」の記述から、気になった箇所をいくつか。
       かこわれ、守られ、遠ざけられて、生きることがぼんやりしか感じられない日常のなかで、子供達はひよわな自我を肥大化させるしかない。千尋のヒョロヒョロの手足や、簡単にはおもしろがりませんよウというぶちゃまくれの表情はその象徴なのだ。けれども、現実がくっきりし、抜きさしならない関係の中で危機に直面した時、本人も気づかなかった適応力や忍耐力が湧き出し。果断な判断力や行動力を発揮する生命を自分がかかえていることに気づくはずだ

        『現実を直視しろ、直視しろ』ってやたらに言うけれども、現実を直視したら自信をなくしてしまう人間が、とりあえずそこで主人公になれる空間を持つっていうことがフアンタジーのだと思うんです

         ――両親をなぜ豚に変えてしまったのですか
       千尋が主人公になるために邪魔だったからです。『はやくしなさい』の連呼とかフレンドリーにご機嫌をとる両親の下では、子供は自分の力を発揮できません

       ――豚になった千尋の両親たちは、自分が豚になっていたことを覚えているのでしょうか
       覚えてないですよ。不景気だ、エサ箱が足りないって今もわめきつづけているじゃないですか


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    3 再度レビューします
    5 簡単!おいしい!大満足のレシピ集
    5 驚きました
    5 これは感激
    5 動物性,砂糖ゼロのアイスにびっくり

    ますます菜菜ごはん―野菜・豆etc.素材はすべて植物性楽しさ広がるレシピ集
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    5 野菜嫌いの方にも
    1 見た目はよいが・・・
    2 一般人には不向き?
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    5 図書館で借りて二日間(3時間半)で読了
    4 おもしろいおもしろい
    5 名作マンガ「ピンポン」と「柔道部物語」をあわせて読んだ感じ
    5 カタルシスは訪れない。
    5 今年のマイベスト!

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    5 本書を読めば、詩を読んでより広く、深く反応するヒントをもらえる
    5 ずっと手元に置いておきたい本です
    4 すばらしいのだと思います。
    5 小さな宝物のような本
    5 詩・文学への優しい優しい招待状

    折り返し点―1997~2008
    折り返し点―1997~2008
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    4 「もののけ姫」「千と千尋」まで
    5 子供のために
    5 12年間に渡る作品の軌跡


    (追記)
    読書日記「菜菜おつまみ②」(カノウユミコ著、柴田書店)=2011年6月17日
     先日、JR芦屋駅前の市立図書館大原分室に行ったら、返却棚でこの本を見つけ"衝動借り"してしまった。

     「菜菜ごはん」を買ったのがもう2年半も前だったのに改めて驚いたが、この「おつまみ」編にも、魅力的野菜料理が並んでいる。

     例えば、半分に切って焼いた米ナスに、とろろとオリーブ油、レモン汁、ネギの小口切りを合わせたソースをたっぷりかけた「焼き米ナスのねぎとろろがけ」。「マーボかぼちゃ」に「焼きごぼうのみそ添え」「いんげんの塩蒸し」・・・。

     蒸したブロッコリーに、充填豆腐などのソースを合わせて「ブロッコリーのベジマヨネーズサラダ」は、昨夜のビーフシチューのすばらしいわき役となった。

     最近、干し野菜にいささかこっているので「きゅうりの天日干し、カレー炒め」は、プランターのきゅうりがそろそろ食べごろなので、さっそく試してみよう。
     簡単なピクルス、漬物類に挑戦してみるのも楽しみだ。

2008年10月20日

読書日記「仕事道楽」(鈴木敏夫著、岩波新書)


 宮崎駿著の「折り返し点 1997~2008」(岩波書店)という本と、この本は「まるであらかじめ企画されたように相補的な照応関係をなしている」。読売新聞の書評欄で分子生物学者の福岡伸一氏が書いているのを見て図書館に借り入れを申し込んだが、この著書が先に借りられた。

 本の軸になっているのは、「もののけ姫」や「千と千尋の神隠し」などをヒットさせたプロデューサーの著者と、宮崎駿、高畑勲両監督との仕事を通じての葛藤ぶり。

 「高畑・宮崎の二人との出会いは強烈でした」と、著者は切り出す。アニメ雑誌の記者だった著者は、二人ともっとつきあいたいと思い、そのためになんとしても「彼らと教養を共有したい」と思う。そのため、二人が言ったことを全部、ノートに書きまくる。分かれた後は喫茶店に入って、一生懸命思い出しながら抜けているところを埋める。家に帰って、もう一度ノートに書き写す。寝る時間は極端に減ったが、それを毎日続ける。「これをやらないと、この人たちと五分につきあえないと感じていたのです」

 "取材記者″の基本と言ってしまえばそれまでだが、おかげで著者は二人の魅力に引きずりこまれ、スタジオ・ジブリのプロデューサーになってしまう。

 二人には「この本読みましたか」と、よく聞かれたという。

 高畑監督からは、ドナルド・リーチという人の『映画のどこをどう読むか」という本を教えてもらい、スタンリー・キューブリック「バリー・リンドン」という映画のおもしろさを知り、目からうろこが落ちる。

 宮崎監督には、中尾佐助の「栽培植物と農耕の起源」(岩波新書)のことを聞かれ、読んでないと言うと「無知ですね」とやられる。「日本の精神性と生活の基盤に・・・照葉樹林文化が存在する」とした」(福岡伸一氏)この本は「もののけ姫」などの発想につながっていく。

 高畑監督が「おもいで」というアニメを制作する時のこだわりがすごい。

 「おもいで」にとりかかった時に、NHK人形劇「ひょっこりひょうたん島」が雑誌で特集されており、高畑氏は、そのなかの2曲をどうしても聞きたいという。ところが、NHKの録画ビデオ、コロンビアのレコード、作曲家の自宅にも残っていない。しかし、高畑監督はあきらめない。そこで、いわゆる「マニア」の子に事情を話し、5日後に北海道の子が持っているのが見つかった・・・。

 「おもいで」のテーマは、山形の紅花摘みがテーマ。監督は、紅花作りの現場を見に行き、資料を集めて1冊のノートを完成させる。これを読んだ米沢の紅花の達人が言う。「これはたしかに、いちばん正しいやり方だ」

 紹介されているアニメ制作の職人気質のエピソードもおもしろい。

 「となりの山田くん」の顔はやたらと大きく、二頭身。これをアニメに描くのは至難の業らしい。そこで、職人気質の二人が話しをする。「どうやって歩かせてる?」。まかされている職人は、2本指を足に見立てて動かせてみせる。「やっぱりそうですよねえ」。「なんか武芸者同士の会話みたい」と、著者はおもしろがっている。

 ジブリには4つのスタジオがあるが、ちょっと離れたところに借りた一軒屋があり「力はあるが、時間がデタラメという人は、ここで仕事をしてもらう。一度は辞めたいと言ったある絵描きはここにおり、今回の「崖の上のポニョ」でもすごい力を発揮したらしい。

 ジブリの作品が大当たりばかりだと、いささかやっかみ半分の批判も飛び出してくる。

 文藝春秋10月号の書評欄には、宮崎監督の作品について″エコブームに悪乗り"めいた批評が載っていたし、雑誌「正論」の11月号にも「もののけ姫などに隠されているメッセージは『上の世代になにをされても恨むな』ということ」という、なんだかよく分からない評論が掲載されている。

 しかし、技術者だけで1000人を越えるというディズニーからの提携の申し込みを断わり"町工場"に徹するスタジオ・ジブリの手法は、悩める日本の産業に大きな示唆を与えているように思える。

 今年で、高畑監督73歳、宮崎監督67歳、鈴木プロデューサー60歳というシルバー軍団に、バンザイ!

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4 楽しく大変に
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4 聞き書きは共著にするべきだ

折り返し点―1997~2008
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