▽ <読書日記「消えたカラヴァジョ」(ジョナサン・ハー・著、田中 靖・訳、岩波書店)>
1月の初めに日経新聞の書評に載っていたのを見て、芦屋市立図書館に貸し出しを申し込んだが、在庫なし。新規購入申し込みをしたら、1週間もたたないうちに手元に届いた。財政赤字に悩む自治体にしては、なかなかやります。
先週のブログで書いた「カラヴァッジョへの旅 天才画家の光と闇」(宮下気規久朗・著、角川選書)に、こんな記述がある。
「一九九一年、アイルランドの片田舎の僧院から劇的に発見されて話題になったのが《キリストの捕縛》・・・」
「カラヴァッジョの真筆が世に出るというのは奇跡的であり、しかももっともありえない西洋の辺境から出てきたということで、半信半疑だった人々も、これを一目見た瞬間に、正真正銘のカラヴァッジョだと納得するほどの絵だった」
「消えたカラヴァジョ」は、この《キリストの捕縛》発見をめぐるノンフィクション。
著者は、米国マサチューセッツ州在住のノンフィクション・ライター。映画化された前作「シビル・アクション」(1995年)は、全米批評家賞最優秀ノンフィクション賞を受賞している。
登場人物がどれもユニークなキャラクターで、筋の展開も波乱万丈。イタリア・ローマの街の描写やカラヴァッジョの生涯も詳しく「どこまでが本当のノンフィクションなのか」と少し疑いながら、引き込まれるように読んでしまう。
訳者の田中 靖は「あとがき」で、この本について
ナヴォナ広場、トリニタ・ディ・モンティ教会、スペイン広場と、ローマ中を古ぼけた青いスクーターで駆け抜けるヒロインが、文書庫で見つけたのは、『キリストの捕縛』の購入者からカラヴァッジョへの支払い記録。そして、その絵がこっそり海外に持ち出されたことを示す許可証までも。
舞台は、とつじょアイルランドの首都・ダブリンへ。国立ギャラリーに勤めるイタリア人絵画修復士が、イエズス会の司祭から宿舎(僧院)にある一枚の絵を見てもらうよう頼まれ、一目でそれがカルヴァジョの作品であることを見抜く。
館長の思惑や一攫千金を夢見る骨董商などがからむなかで、一人の新聞記者が、この世紀の発見をスクープする、というおまけまでついている。
画竜点睛を欠くのは、肝心の「キリストの捕縛」の絵が、本のカバー表紙の右側に少し載っているだけで、全体の図版が掲載されていないこと。Wikipedia を調べるとありました。
「カラヴァッジョへの旅」のなかで、著者の宮下気規久朗・神戸大学大学院准教授は、この絵について説明している。
すぐにでもダブリンに飛んで、この絵に会いたい・・・。かなわないであろう、そんな夢が膨らんだ。
岩波書店 (2007/12)
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カラバッジョ・ファンは必読
コメント
「消えたカラヴァッジョ」読みました。「これがノンフィクションか?」と、一気に読んだのは貴君と同じです。ジョナサン・ハーという著者、すごい男だね。貴君と小生が違うのは、小生はまだ本物の作品を目にしていないことです。見に行きたいなあ。
昨年1月、NHK教育テレビの新日曜美術館で「カラヴァッジョvsレンブラント」の番組があり、壇ふみさんが「カラヴァッジョが好きというと、変な目でみられそう」といいながら、現地で見てきたいくつかの作品についての思い入れを語っていたのを思い出します。また、昨年秋、日経の読書欄で☆がたくさん付いていた「怖い絵」(中野京子著、朝日出版社)に、カラヴァッジョが出ていたと思い、めくってみました。ドガの「踊り子」がなぜ怖い?というのに引かれて、興味深く読んだ本でした。とりあげていた20の作品にカラヴァッジョの項はなく、おかしいなと、ページをめくると「ホロフェルネスの首を斬るユーディト」(アルテミジア・ジェンティレスキの作)「いかさま師」(ラ・トウール作)の項にカラヴァッジョの同名の作品が対比してありました。いずれもカラヴァッジョに倣って描かれたものですが「カラヴァッジョよりも怖い」。怖くもあり、面白い本でした。
18日にお会いしましょう。 KI
Posted by: 市原 賢 | 2008年3月12日 22:48
コメント、ありがとうございます。
書きましたように、ダブリン国立美術館にあるというカラヴァジョの「キリストの捕縛」は、私も見ていません。いつの日か、見たいものです。
中野京子の「怖い絵」、気になっている本でした。私も、読んでみます。ありがとうございました。
masajii
Posted by: masajii | 2008年3月13日 06:31