2008年9月 7日

知床紀行①「エゾジカ 繁殖の危機」(2008年8月16-20日)

 このお盆に、世界遺産・知床を訪ねた。そこで見たものは、人間と野生動物たちとの、あまりにも危い"ニアミス"ぶりだった。

 着いた日の午後8時から「ナイトシアター」と称する夜の野生動物探索に出かけた。「ヒグマの遭遇する危険がある」ということで、探索は、自然ガイドが運転する小型バスのなかからだけ。携帯用のサーチライトで照らすと、エゾジカが道路わきの斜面の芝生を食べていたり、キタキツネがトコトコ歩いていたりするのに出会う。5日間滞在している間には、ホテルの前庭や庭園、滝見物に行く途中の草原、散歩中の白樺林の近くなど、最後にはいささかうんざりなるほど多くのエゾジカに遭遇した。

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 写真①=ホテルの前庭に群がるオスジカ。見えている白い草花は食べない  写真②=散歩中に遭遇したオスジカ。どんどん近づいてきて、いささか恐怖感を抱く直前に、藪のなかに飛び込んだ

 人はこわがらないが、ある距離以上は近づかず、奈良公園のシカのようにエサをもらうこともない。あくまで野生の動物だから。しかし、人間との距離が「あまりに近すぎる!」というのが、率直な印象だ。

 知床にいるエゾジカは、世界遺産区域の山林を含めて、ざっと1万5千頭。秋の繁殖期の後には、それが2万5千頭近くまで増え、厳冬の厳しさでオスジカと0歳ジカの多くが生き残れず、春にはもとの1万5千頭に戻ってしまうという。それでも、厳しく保護されている世界遺産区域の山林を含めても、かなり高密度な生息ぶりだ。

 明治時代には、極端に頭数が減っていたエゾジカが繁殖したのは、天敵のエゾオオカミが害獣として駆除されたりして絶滅したから。自然循環のバランスが崩れてしまったのだ。

 それによって、なにが起こったか。まず「世界遺産・知床から、花が消えた」(自然ガイドのHさん)。

 知床5湖へのオプションツアーの途中で、原生林のなかに2メートル近い木の柵で囲まれた区域があった。エゾジカに荒らされない植生を再生する実験だという。囲みのなかでは、昔から知床に生えていた草花が戻ってきているらしい。

 地下水が岩から湧き出し、オホーツク海に注ぐフレペの滝近くの草原には、キオンと呼ばれる黄色い花畑が広がっていた。エゾジカが嫌う種類であるため、生き残ったのだ。
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写真③=フレペの滝:知床海岸探訪のクルーザーから 写真④)=キオンと呼ばれる黄色い花畑が広がっていた 写真⑤=エゾジカに樹皮を食べられ、立ち枯れたイチイの木(フレペの滝近くで)

 冬になると草が食べられなくなったエゾジカは、イチイ、ミズナラ、エゾマツなどの柔らかい樹皮を選んで食べてしまう。水を吸い上げる樹脈?は樹皮のすぐ裏にあるので、おかげで樹木は枯れてしまう。世界遺産区域の何箇所かで、下の樹皮をシカに食べられ立ち枯れた樹木をいくつも見た。

 知床が世界遺産に選ばれた最大の理由は「海と森の生態が共生している」(自然ガイドのKさん)こと。だが、エゾジカの異常な繁殖は、海と共生している森の生態を崩しかねない。

 エゾジカの天敵、オオカミを再導入しようという考えもあるらしい。しかし、人間と野生動物との距離が、これほどまでに近い知床では、現実の議論にはなりにくそうだ。

 世界遺産区域を持つ、北海道斜里町では、樹皮や農産物を食い荒らすエゾジカを害獣として捕獲、食肉加工までをする民間企業「知床エゾジカファーム」を設立したという。馬肉を「サクラ」と呼ぶのに対し、鹿肉は「モミジ」と言うらしい。だから、この会社が作るエゾジカ肉特産品の名は「知床もみじ」。

 知床から帰ってから読んだ、椎名 誠の「『十五少年漂流記』への旅」(新潮社)のなかに、こんな記述があった。
 「鹿肉は、日本ではゲテモノ扱いだ。いま日本各地で野生の鹿が増えている。・・・阿寒湖ではエゾジカが害獣指定され、・・・毎日何百頭と撃ち殺しているが、その肉をうまく流通させているとはいえない」

 「鹿の無駄死はあまりにむなしい、というのでエゾジカを食卓にあげようと運動もおきているが・・・鹿肉軽視の習慣をこわすところまではいっていない」


 食肉論議をする前に、人間と野生動物の距離をもう一度引き離して、共生の道を探るのには、日本の国土はあまりに狭すぎるのだろうか。

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5 シーナ流思索に耽る旅行記


2008年8月28日

読書日記「アウシュビッツの沈黙」(編集・解説:花元 潔、インタビュー:米田 周、東海大学出版会)


 お盆明けのNHKハイビジョンで、BBC制作のDVD「アウシュビッツ強制収容所 解放から60年」を放映していた。

 そのDVD は丸善から売られているようだが、元ユダヤ人収容者だけでなく、アウシュビッツに勤務した旧ナチス親衛隊員、捕虜として収容されていたポーランドや旧・ソ連人たちが、大量虐殺や人体実験だけでなく、終戦で解放された人々の衝撃的な事実を証言していく。

 戦慄を感じずには見れない作品だが、同時に対ナチス戦争の戦勝国であり、ユダヤ人に差別意識を持ったかもしれないゲルマン民族の一国営放送局が作成した、という背景も、なんとなく感じてしまう。

 それは多分、この放映を見たのが、花元 潔、米田 周両氏による「アウシュビッツの沈黙」を読んだ直後だったからだろう。アウシュビッツには直接関与していない日本の2人のジャーナリストが、強制収容所のうすれかけた記憶を記録するために、ヨーロッパに出かけて苦労を重ねたことに、驚きと尊敬の念を感じずにはおられない。

  実はこの本は、東海大学の企画で1988年に制作されたビデオ「夜と霧を越えて」(米田 周監督)を活字化したものである。

 「ユダヤ人」「連れ去られた子どもたち」「人体実験」「収容所」の項に分かれて、23人の元ユダヤ人収容者の証言が、克明に再現されている。

 
「(何枚かのレントゲン写真を示しながら)・・・一四歳だった女の子は、骨を削られて、足が湾曲してしまいました。・・・こちらは、横に出来た壊疽です。これは私の片足。両足をやられましたが、片方が特にひどい。これも壊疽のあと。これも骨の手術。これも骨の手術。もういいでしょうか・・・?」(人体実験を受けたスタニスワヴァ・チャイコフスカ=バフイアの記憶)
「(処刑があるようなときには)雨が降ろうが、陽が照りつけようが、じっと立って・・・広場に立たされ、死刑の執行を見せられました。処刑される人々は、たいてい他のひとを助けようとした人々でした」(スタニスワフ・マイフジャックの記憶)
「(ガス室の瓦礫の前で)ここで服を脱ぎ、中に入ったのです。・・・チクロンBが投入され、二〇分後には、全員死亡でした。ドイツ人は、自分たちが毒にやられないため、しばらくガス室の扉を開け、風を通しました。それから死体を運び出し、金歯や指輪といった金目のものを奪いました」(ゾフイア・ウイシの記憶)


著者・花元氏は、あとがきで、こう語る。
「アウシュビッツ第二収容所の構内には、今も列車の引込み線が当時のまま敷設されている。・・・アウシュビッツに敷かれた石は、なにも語りかけることなく・・・死者もまた叫ぶことも語ることもしない。・・・アウシュビッツの真実を語るのは、実にこの死者たちの沈黙なのである」


花元氏は前書きでは、こう問いかけている。
「第二次世界大戦は、じかに私たちの時代とつながっており・・・あの戦争で失ったもの、得たものが、大なり小なり、今日の世界を形作っている」
 「数百人の人々を虐殺した強制収容所の歴史は、人類がいかにその生命を愚弄できるかという、もっとも恥ずべき実例であり、この事実から目をそらして、私たちの今日を語ることは許されない」


 アメリカの原爆投下、日本人が行った虐殺行為、そして、今でも世界各地で絶えない"人間の生命を愚弄する行為"。花元氏と2001年に急死した米田氏は、これらの事実からも目をそらしてはいけないと、問いかける。

 実はこの本、友人Mの薦めで芦屋市立図書館に新規購入申し込みをしたのだが、生来の愚者、新たな視野を拓くきっかっけになるのかどうか。

アウシュビッツの沈黙

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2008年8月12日

読書日記「おとなの味」(平松洋子著、平凡社刊)


 独居老人になってから、月に1回、料理教室に通い出した。

 「なるほど」と思ったのは、レシピ通りに作るのが基本ということ。とくに、醤油、砂糖、みりん、酢、オイルなどの調合さえ間違えなければ、煮魚でもロールキャベツでも、タコとセロリーのサラダでも・・・。ちゃんと食べられる。

 しかし、この著書に盛り込まれた45篇の小品と20の写真集を読むと、料理の知恵、おとなの味はいかに奥深いかを知らされる。「ヘー!ホー!」と、我が男の料理の底の浅さを思い知る。

  • 自慢の味
    「すいかを切るとき、種がすくないところを表面にするためには縞模様のあいだに包丁を入れる」
    「冷や麦をゆでるときには火を止めたあとふたをして一瞬蒸らすとぐっとおいしくなる」
     豆腐は水を切ると味がしっかりし、炒めるときもおいしさが跳ね上がる
    と著者。

     「さいきんの自慢をひとつ」というレシピをさっそくやってみた。ゆでたほうれん草をザクザクに切り、しっかり水切りして崩した豆腐と和える。味つけは塩、オリーブオイル、黒こしょう。

     「ウーン」。もうひとつピンとこなかった・・・。しかし、水切りして大きめに割りほぐした豆腐をまずきつね色がつくまで焼く、というチャンプルは一度、挑戦してみよう。


  • ひとりの味
     「立ち呑みはひとりが似合う」。大阪キタの梅田新食堂街の立ち呑み屋が込んでくると「ダークする」。おたがいの肩がぶつかり合わないように「(コーラスグループの)ダークダックス」さながらの構えをとる。「キタの立ち呑み屋の風情は天下一品だ」


  • 水の味
     京料理「菊乃井」の三代目主人の話し。「関東の水で炊いた米は粒が立って硬めやから、がちがち食べんといかん。ところが京都の水はにやにやっとした炊き上がり。やわらこうて、もちっとしている。関東の水は硬度が高く、京都の水は軟水やからね」「東京の水は、僕らにしてみると喉にひっかかんねんな」


     実践女子大学の数野千恵子准教授の言葉。
    「ヨーロッパは硬水だからこそ、硬い肉や野菜をじっくり込んでシチューをつくったり、スープストックをつくる。長時間煮込むと、硬水の素材から抽出されたイノシン酸やアミノ酸とよりよく結合して濃いうまみになります」


     ヘー、知りませんでした。

     甘鯛をアクアパツツアで作る時、軟水は魚のうまみが穏やかに出た澄んだ味。硬水は魚の骨太なうまみがぐいっと前面に押し出された味になる。
    山形県鶴岡市のイタリアンレストランのオーナーシェフの話し、という。
  • >

  • 泣ける味
     あん肝、からすみ、酒盗、いかの塩辛、くちこ、このわた、塩雲丹、ばくらい、にがうるか、・・・じこい、浜納豆、豆腐の味噌漬け・・・。「豆皿にほんの少し取り分け・・・ちびちび舐める。啜る。齧る。すると、そのたびに酒の味わいがくっきりと際立ち、また一献」


     ウーン、味わったことのない珍味がある・・・。


  • もうしわけない味

     この本にはいくつか「おとなの味」が楽しめる店やレストランが登場する。この欄に出てくるのが、名古屋・広小路伏見角の居酒屋「大甚」。著者たちは、ここで開店直後の午後4時過ぎに飲みだすという桃源郷を味わう。
    「お客のすがたはぽつり、ぽつり。しんと静まって、こころなしかみなおとなしい。けれども、どこかうれしそうだ」


     この店で、二十年ほど前に,友人と午後4時の桃源郷を味わったことがある。バタヤン、こと田端成治。中日新聞名古屋本社の根っからの芸能記者だったが、酒を浴びるように飲んで・・・。本紙に連載されたコラムをまとめた「ちりとてちん」(非売品、中日新聞本社出版開発局)というすごい本を残して、逝ってしまった。1998年、享年56歳。

     このお盆、バタヤン帰ってこないか?と、なつかしい本を繰る。


  • 深山の味

     もう一店。石川県白山麓の摘草料理「うつお荘」。
     「ふきのとうの辛味噌だれは、箸の先にのせて舐めるたび、辛さの刺激がぴりりと容赦ない。イチジクのごま味噌だれは、時間をかけてじっくり擂ったにちがいなく、こっくりと濃厚な密度に夢中になる。・・・ずいきのしゃくしゃくっと切れのよい歯ごたえ。目にも芳しい翠いろのもち草の葛寄せには、青々とした苦みが走る。大葉ぎぼしは、噛むうちわずかに滲み出るぬるみが愉しい。もみじがさはこりこりっと軽やかかでーーー」


  •  死ぬ前に一度は、と夢見つつ。 

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    5 味覚の階段上る♪

    2008年8月 9日

    読書日記「『たえず書く人』辻邦生と暮らして」(辻 佐保子著、中央公論新社)


     故辻邦生氏の奥様である著者が書いたエッセー「辻邦生のために」(新潮社刊)を、数年前に読んだことを思い出した。

     長く住んだパリのアパルトメントに、特別の許可を得てプレートをつけたことや、熊が大好きな辻邦生が大きなくまのぬいぐるみを自宅に届けさした話しなど、ともに歩いて作品を生み出していったお二人のエピソードがいっぱいつまっていた。

     今回の著作は、名古屋大学名誉教授で、ビザンチン美術の専門家である佐保子夫人が、新潮社から刊行された辻邦生全集(全20巻)の月報のために執筆したもの。それぞれの作品が成立した契機や"種"を明かすという、辻邦生ファンにはたまらなくなる本である。

     第四章「背教者ユリアヌス」の項には、こう書いてある。
     映画狂(シネフイル)を自認する辻邦生には「砂嵐のなかをシルエットのように進むユリアヌスの葬列の最終画面は、すでに構想の段階から鮮明に焼きついていた」
     「戦陣や隊列の組み方、砂嵐や吹雪のなかでの露営など、軍国主義時代のさなかに軍事訓練や剣道の稽古を経て育った<男の子>とはいえ、よくここまで詳細に戦闘の様子を描写できたものと驚嘆する」
     「中学時代の『世界地図』の教科書をいつまでも大切な宝物にしていた辻邦生にとって、ローマ帝国の広大な領土を舞台とする『背教者ユリアヌス』ほど、各種の歴史地図や大地の起伏を描く鳥瞰図が有益だった作品はない」


     第九章、第十章では「春の戴冠」についての秘話が明らかになっている。
     「一九五八年、辻邦生のフイレンツエとの最初の出会いは、駅前で興奮のあまり鼻血を出したことに始まり、手についた赤い血の色と夏の盛りのカンナの赤い花が『春の戴冠』の原点となった」
     「『背教者ユリアヌス』ですら、長すぎるという声が私の耳のも聞こえてきたが、『春の戴冠』はそれよりはるかに長大である。そのためか、再販が出るまで二〇年以上も絶版が続き、ついに文庫本にはならなかった。うちでは『背教者ユリアヌス』を『ユリちゃん』、『春の戴冠』を『ボチくん』と呼んでいた。『ユリちゃん』ばかり文庫本増刷の通知が届くため、『かいそうなボチ君』と言うのが口癖だった」


     ところが第十章の最後に、こんな「付記」が載っていた。
     「このたび中央公論新社から、本書の刊行(2008年4月)とあわせて、『春の戴冠』を文庫版四冊として刊行するという夢のような企画が実現されることになった」


     中央公論新社に聞いてみると、すでに①②が刊行され、③は8月25日の予定。④は未定だという。文字の大きさは、どうだろうか。1977年の初版本(上・下)の字を追うのさえ、もうしんどくなっている。

     第十四章の「西行花伝」は、このブログでも書いたが、この作品が辻 邦生の最後にして、最高の作品であることを知った。
     「西行をめぐる多数の人びととの声を、転調・反復しながらひとつの大きな流れにまとめてゆく手法は、これまで試みてきたさまざまな小説作法の最終的な集大成のように思われる」

     「ともあれ『西行花伝』が長い執筆活動の究極の到達点を示す作品になったことを、今は心から『これでよかった』と思っている」


     第二十章「アルバム、年譜、書誌など」に、こんなことが書いてある。
     亡くなる前年の夏、二人は夕方になると、リヒャルト・シュトラウスの「これがもしかしたら死なのだろうか」という歌曲をよく聞いた。「最後の一週間あまり、山荘の窓から浅間山の方向をじっと眺めて座っていたとき、耳に聴こえていたのは、今から思うとこの最後の詩句だったのではないだろうか」


     こんな本を読むと、著作とは別の世界をのぞかさされたような気がして、もう一度、一連の作品を読み返したくなる。困ったものである。

    「たえず書く人」辻邦生と暮らして
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    4 辻邦生ファンにはたまらない
    5 ソウルメイトの愛を感じ取れますよ

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    5 邦生と佐保子の物語
    4 辻邦生との生の日々を夫人が語る

    2008年8月 1日

    読書日記「イカ干しは日向の匂い」(武田 花著、角川春樹事務所刊)


     「おひさしぶりです、武田 花さん」。一度もお会いしたことがない10歳も年上の見知らぬ男が、こんな風にお呼びする失礼をお許しください。

     実は私、お母様の故武田百合子さんの大ファンです。「富士日記」(上、中、下、中央公論新社刊)は3、4回。「犬が星みたロシア旅行」「ことばの食卓」「日々雑記」だけでなく、武田 花さんが写真を撮られた「遊覧日記」も、もちろん読みました。お父様の故武田泰淳さんの本は、1、2冊をのぞいただけなのに。

     「富士日記」で、☆マークがついているところは、お母様でなく武田 花さんが書かれたのでしたね。この本の舞台となった富士山麓「武田山荘」が建てられた昭和39年当時は、確か立教中等部に在学されていた。

     庭でスキーを楽しんだり、愛犬「ポコ」のびっこを心配したり・・・。作文を書いているような中学生らしい一生懸命の文体がほほえましかった。

     ところが、武田 花さんの新しい写真エッセイを一気に読んでびっくりしました。「天衣無縫の文章家」と評された武田百合子さんの文体そっくりだと。

     お母様そっくりと言われるのは不本意でしょうが「にやり」「くすり」としながら読んだいくつかの文章を引用させてください。

     飼い猫の「くも」に伊勢神宮を見せてやろうとバッグの中から首だけ出してやったら、若い神主に、四つ足は入ってはいけないと注意された。

     「四つ足がいけないって?お狐様や狛犬や神馬は四つ足だぞ。因幡の白兎を助けた大国主命は神社関係者じゃないのか。四つ足は人間よりずっと上等だぞ・・・」(生き物)

     日本海岸の半島で通りかかった家の座敷で、白無垢姿の花嫁さんが椅子にかけて俯いている。留袖や割烹着の女たちが出てきて、障子やガラス戸を開け放った。

     「途端、眩しい光が射しこんで、花嫁さんの背後に日本海が広がる。まるで唐組のお芝居のラストシーン。空が黒雲に覆われ、海が荒れ狂っていたら、もっといいのに・・・。」(花嫁)

     旅の途中で見つけた造り酒屋で店のお嬢さんらしい若い人が出てきて、利き酒をさせてくれた。

     「三つのお猪口それぞれに注いでくれたお酒を私が味見していると、トクトクトク、いい音がするので目を上げたら、後ろ向きで俯き加減になったお嬢さんがガラスのコップに酒を注ぎ、くいーと一息に呷ってしまった。・・・また奥から一本。そして、私のお猪口にトロッ、自分のコップにドクドクドク、後ろ向きになって、くいーっ。『お客には、お猪口かい』・・・」(土産話)

     ローカル線の駅前にしゃがんでアイスクリームを舐めている高校生らしい少女。

     「制服がはち切れそうなむちむちとした体格。短いスカートから剥き出した太腿の逞しいこと。よく日に焼けた頑丈そうな少女から、付けまつ毛や青いアイシャドウを取り除いたら、棟方志功の版画のふくよかな天女にも似ていそうで・・・」(雲の行方)


     「インドのホテルで、ドキドキ」は、大変でしたね。

     今日、図書館で「季節のしっぽ」の借り入れ申し込みをしました。楽しみです。

     時々、ちらっと登場される正体不明の「家人」様によろしく。

     
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    5 拝啓  武田花様


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    5 気ままで、飾らない。理想的な生活
    5 足が地に着く。
    4 淡々と。
    5 奇跡のような
    5 日記といえば、、、

    犬が星見た―ロシア旅行 (1979年)
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    5 思い出は皿の上の果物のようにごろんとそこにある
    5 唯一無二のエッセイ
    5 純粋無垢というよりは野性的な感覚
    4 ほかに誰も書けない
    5 とっても新鮮なセンスを楽しめますよ

    日日雑記 (中公文庫)
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    5 ブラックにユーモアで孤独
    4 年月の澱を背負い込んで
    3 テンポ
    4 好きな日記
    5 何気ない毎日の中で。

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    5 いわゆる見物
    4 結局は「富士日記」を超えられないか
    5 ありのまま。

    季節のしっぽ
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    2008年7月27日

    読書日記「止島」(小川国夫著、講談社)


     今年4月に80歳で亡くなった作者の略歴を見ると、旧制静岡高等学校に入学直後にカトリックの洗礼を受けられたようだ。霊名は、おそれ多くも私と同じアウグスチノ。

     小川国夫氏は、カトリックとプロテスタント諸教会が取り組んだ新共同訳聖書の国語委員でもあった。翻訳者兼編集委員として一緒に仕事をされた和田幹男・聖トマス大学名誉教授(カトリック箕面教会主任司祭)は「不必要な言葉を削り、詩的に文章を構成される節度ある作業が印象的。言葉を非常に大切にされる方だった」と追悼されていた。

     この話を聞いた直後に、遺作短編集「止島」と遺作随想集「虹よ消えるな」が同時発売された。地味な作風もあるのか、図書館ですぐに借りることができた。

     最初の「葦枯れて」は、収録されている10作品中唯一の時代小説。戦乱の末に、敵味方に分かれた幼なじみのいとこを殺した自分を責めてあちこちで告白を続け、ついにいとこの弟に殺されてしまう。犯した罪の懺悔をやめないやさしきキリスト者を思う。

      残りの9作は、郷里での出来事や思い出で綴られる。

     「琴の想い出」は、祖父の家に出入りしていた車夫・亀さんの孫、琴との淡い恋と別れを描く。祖父が死んだ夜、訪ねてきた亀さんが立ち去るのを見て「私の胸には琴の暗さがよみがえりました。忘れていないまでも、おおかた過去になっていた暗さでしたが・・・」

     「止島」は、いくしむように可愛がられた祖母が病気になり、深い孟宗竹の藪に囲まれた二階家に閉じ込められたように寝たきりでいる話し。それを見舞う作者。「本当か、裏二階に怖気をふるったのではないのか。裏二階は止島にされちまったんじゃないのか。お前も、胸に手を当てて考えてお見」。そして祖父の死。二人をモデルにしてやさしく、かなしい生と死を描く。

     これは、私小説なのだろうか。ちょっと違うような気もするが、よく分からない。

     「未完の少年像」では、作者の小説観が語られる。ある障害者施設で講演をした後、旧制高校の同級生だった園長と文学談義が始まる。
     文章を書く場合は、必ずあて先があります。ところが、小説を書く場合は、ブカブカする浮島の上を歩いているかのようで、とりとめがないのです。

     所詮小説は言葉による実験です。何を書いたっていい、自由な世界なのです。だから甘えが出てしまい、かえって本来の厳密さを見失ってしまうのです。

     随想集「虹よ消えるな」には、もう少し分かりやすい説明がされている。
    小説家とは、自己の見聞を書く者ということです。たとえば私は私の祖母を見ていますし、その声を聞いています。・・・ですから・・・祖母から書き始めなければならないと気付いたのです。彼女から始めて、今後の私の見聞は孫の世代に及ぶでしょうから、その間ざっと百五十年です。・・・一人の小説家の目と耳は意外と長い時間に及ぶものだなあ、と思います。

     小説家として生きることを書くことは、これほど厳密に、ひと時、ひと事を見続けることなのかということを、心に深く思いいたされる。

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    5 真摯な生き方を教えられる

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    2008年7月15日

    読書日記「日本は没落する」(榊原英資著、朝日新聞社)


      新聞記者をしていた頃は、よくビジネス書を乱読したものだが、最近はほとんど読まなくなった。というより、なるべく読まないようにしている。読んだ後で、なんだか損をした感じがすることが多いのだ。

      先月の日経・書評欄で「なぜビジネス書は間違うのか」(フイル・ローゼンツワイグ゙著、桃井緑美子訳、日経BP社刊)という本を紹介していたが、ビジネス書の欠陥をうまくまとめてあった。「業績の好調さだけからリーダーシップや価値観まで高く評価してしまう」。

      20数年前に、本棚にあふれる本を整理するために、古本屋さんに来てもらったことがあるが、ベストセラーだったビジネス書を1冊も引き取ってもらえなかったことがある。一言「この種の本、まったく売れまへんのや」・・・。 替わりに、中里介山の「大菩薩峠」、確か角川文庫全27巻にポンと1万円を出されたのにはびっくりした。

      以来、本棚にたまったビジネス書は、市役所の廃品回収の日に出すことにした。

      今でも本棚のビジネス書のなかで残しておきたいと思うのは「花見酒の経済」(笠 信太郎著、昭和三六年)、「柔らかい個人主義の誕生」(山崎正和著、昭和59年)、「人本主義企業」(伊丹敬之著、1987年)くらいだろうか。

     「日本は没落する」が昨年末に出た時には、「ミスター円」の異名を取った元財務官僚の作ということもあって、けっこう評判がよかった。図書館に申し込んだが、希望者が多く、先日、半年ぶりにやっと借りることができた。やはり新鮮さはほとんど霧散していた・・・。

     ただ「ポスト産業資本主義の時代に移って、資本=マネーの果たす役割が、前世紀と根本的に異なってきた」という記述にひかれた。
     恒常的な金余り現象で、デリバティブなどの金融テクニックで膨れ上がった資金がIT技術を駆使してさらなる膨張の機会を求めて駆け巡る「ファンド資本主義」が横行している。
     産業資本主義の時代は「お金を追いかける」時代だったが、ポスト産業資本主義時代は「お金が追いかける」時代だという。

     最近の原油や穀物の異常な高騰の原因も、これでかなり説明できそうだ。

      もう一つ気になったのは、榊原氏が「日本没落」の最大原因として挙げている日本の教育水準の低落ぶり。

     最近になって見直されようとしている「ゆとり教育」も、日本の子どもたちの学力、学習意欲低下のあらわれと見る。中国・清華大学には、優秀な留学生を獲得するため、米国の有力大学がスカウトに日参しているが「日本に来たという話しは聞いたことがない」。

     しかし、有名学習塾が駅前に軒を並べる阪急・西宮北口駅などが、夜間や日曜日に小学生のラッシュ・アワーになるのも異様な風景だ。小学校低学年から塾通いを強いられる彼らの未来は、どんな「没落・日本」なのだろうか。



     最近読んだ、その他の本

    • 「チューバはうたう」(瀬川 深著、筑摩書房)

       第23回太宰治賞を受けた小児科医の小説。中学生の時にチューバに出会ったのをきっかけに、ひとりでチューバを吹いてきた若い女性の物語。同じインディペンデントの仲間と出会い、世界一のチューバ吹きとコラボレーションをやってしまう。チューバに惚れこむ清新さと、チューブを吹く描写に引き込まれる。

      読んだ後、2回ほどコンサートに出かける機会があった。チューバだと思っていた楽器が実はホルンだったと、後で分かったのはお粗末でした。

    • 「食堂かたつむり」(小川 糸著、ポプラ社)

        いつまでも本屋に横積みしてあるので気になり、図書館に借り入れを申し込んだら、やはり半年後に読むことができた。

        インド人の恋人に逃げられるなどのショックで声を失った若い女性が、確執が続いている故郷の母(おかん)のもとに帰り、食堂を開く。1日1組だけの客に出すメニューがなんとも食欲をそそり、食べた客たちになぜか幸せが訪れる。

        病魔におかされたおかんの再婚と死。その披露宴に、長年、愛し、育ててきた豚のエルメスを供する描写に最後まで引き込まれる。


    日本は没落する
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    榊原 英資
    朝日新聞社
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    おすすめ度の平均: 3.5
    4 読んでおいて損はありません、勉強になります
    5 悪くないです
    1 自分たち役人が日本を食いつぶしてきた事
    5 なんとなく黄昏は感じている昨今
    1 ■課題の認識や提言が軽薄に感じられました

    なぜビジネス書は間違うのか ハロー効果という妄想
    フィル・ローゼンツワイグ
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    2 "同じ穴のムジナ"だな、これも。
    5 結局、業績向上のための定石はないのか
    5 あーあ、言っちゃった
    5 世のビジネス書のいい加減さを痛快に暴露する

    チューバはうたう―mit Tuba
    瀬川 深
    筑摩書房
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    おすすめ度の平均: 4.0
    4 音楽に興味のないひとにも勧めたい
    4 変わり者の幸福
    4 すべての音を貫いて、地平はここに作られる。

    食堂かたつむり
    食堂かたつむり
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    小川 糸
    ポプラ社
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    おすすめ度の平均: 3.5
    3 一気には読んだけれど
    3 食堂じゃなくてセレブレストラン
    1 残念無念
    4 真っ赤なトマト
    4 ポプラ社のおしごと

    2008年7月 3日

    読書日記「ブータンに魅せられて」(今枝由郎著、岩波新書)

     
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     「ブータンって、どんな国?」。友人Mに聞かれ「国民総幸福(GNH)を国家の理念にしていて・・・」とまで言って、それ以上答えられなかった。

     ちょうど、ブータンが今年から国民の多くが望んだ国王親政を国王自らが廃止し、立憲君主・議会民主制に移ろうとしている一方で、隣国ネパールでは議会が王制廃止を決め、国王が王宮を追われるニュースが流れた。

     そんな時に、この本を書店で見つけた。チベット仏教を学んだ著者は、鎖国状態にあったブータンに5年がかりで入国し、たまたま国立図書館顧問に就任したことから、10年もの長居をして、この国の魅力に取り付かれてしまう。

    butan.jpg そして、第4代国王ジクメ・センゲ・ワンチェック=写真=の信任を得て、国王の人柄を忠実に反映したブータンの近代化を体験する。

     GNHを提唱する第4代国王政治の特色は「開発は必須だが、伝統文化や生活様式を犠牲にはしない」ということ。

     1980年代初め、観光政策の一環として登山が解禁された。7000メートル級の未踏処女峰が世界の登山家の垂涎の的となった。登山のポーターとして農民が駆り出された。しかし、農民たちは国王に直訴した。「仕事もない人たちのために、わたしたちの仕事ができません」。登山永久禁止条例が作られた。

     インドに輸出され、国家歳入の40%を占める水力発電も、巨大なダムを建設して村落が水没したり、生態系に危害がおよんだりすることがないよう、川の流れの落差を利用したものしか建設されない。

     衆愚に近くなってきたどこかの島国大国の民主主義に比べ、1本筋が通った国家の運営の見事さに感銘させられる。

     もう1冊。同じ著者が訳した「幸福大国ブータン 王妃が語る桃源郷の素顔」(ドルジェ・ワンモ・ワンチェック著。日本放送出版協会刊)を図書館で借りた。

     副題にあるように、著者は、4代国王ジクメ・センゲ・ワンチェックの王妃。

     ブータンの冬の首都だったプナカ県の小さな村に育った王妃は、自然と人間が共生する桃源郷の姿を生き生きと描きだしている。

     ブータンの近隣諸国では森林が伐採され、地下資源の採掘で空気が汚染されているのに、ブータンでは、40年前には国土の5割以下だった森林面積が72%にまで増えた。

     虎、雪豹、サイ、レッサーパンダ、オグロヅル 、アカエリサイチョウ、ニジキシといった世界では絶滅が心配されている動物たちも快適な生息地で繁殖している。

     海外から来た旅行者は、ブータンの澄んだ空気と透き通った河川の水に目を見張る、という。

     ブナカ・ゾンなど、自然と調和した白亜の城塞や動物、植物などの多様性を実感できる王立マナス自然公園、温泉での湯治など、王妃はブータンの魅力を誇らしげに語る。

     世界各国では、環境保護の法律や規制があるのに環境が破壊されているのに、ブータンでは自然が守られているのは、ブータン仏教の教えに根ざした価値観が打ち立てられているからだという。

     日本には伝来しなかったブータン特有の仏教は「生きとし生けるものを敬う」ために、食べるために動物を殺すことに強い抑制が働くし、木、森、山、川、湖、岩、洞窟などの自然に神が宿っていると信じられている。

     王妃は、ブータンという国を有名にした「国民総幸福(GNH)」という指針も、仏教的人生観に裏打ちされたものだと、話している。

     GNHは、どんな指標を集約したものかと、著書「ブータンに魅せられて」でも探しまわったが、具体的な記述がない理由が分かった。GNHとは、ブータンの人たちの生き様を現したものなのだ。

     「国民の約97%が幸福と感じている」。2005年の国勢調査で、こんな信じられないような結果が出たのもうなずけないではない。

     もう1冊。ブータンのことを少し書いた本「太古へ ニュージランドそしてブータン」(辰濃和男著、朝日新聞社刊)を、本棚で見つけた。

     ブータンの項は青いけしを見つけに行く話しだが、ガイドとの間でこんな会話が交わされる。
      「このごろ野犬がふえました。でも犬は殺しません。仏教の教えです」

      「牛や鶏は」「殺しません」「蝿は」「殺しません」

     「でも肉は好きでしょう」「大好きです」

      「そこが問題ですね」「そこが問題です」

      「ですから、私たちはヤクの肉を食べます。輸入肉も食べます」


     最近、読んだ本

    • 「月の小屋」(三砂ちづる著、毎日新聞社)

       リプロダクティブヘルス(女性の保健)を中心とした疫学という専門分野で国際的にも活躍した津田塾大学教授が、初めて書いた短編小説。

       ラジオの著者インタビューで知ったが、最後の「小屋」がおもしろい。

      年頃になった娘は昔、月経小屋に入る習慣があった。そして、母親や地元の老女から女性の体やセックス、出産の不思議さについて実地教育を受ける。67歳の独居老人が、これまで知らなかった世界を知る気品ある作品。

    • 「オニババ化する女たち 女性の身体性を取り戻す」(同、光文社新書)
      同じ著者が2004年に書いたベストセラー。

      「このままだと、女性の性と生殖のエネルギーは行き場を失い、女性は総てオニババ化する」と予測する怖い本。


    ブータンに魅せられて (岩波新書 新赤版 1120)
    今枝 由郎
    岩波書店
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    3 GNHの秘密には迫り切れていないかな・・
    4 仏教が生活と一体化した国の奇妙な日々
    5 豊かさとは? 人間らしさとは?

    幸福大国ブータン―王妃が語る桃源郷の素顔
    ドルジェ・ワンモ・ワンチュック
    日本放送出版協会
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    太古へ―ニュージーランドそしてブータン
    辰濃 和男
    朝日新聞社
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    月の小屋
    月の小屋
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    三砂 ちづる
    毎日新聞社
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    オニババ化する女たち 女性の身体性を取り戻す (光文社新書)
    三砂 ちづる
    光文社
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    おすすめ度の平均: 2.5
    2 オニババとは?
    4 力のある本だとおもいます
    5 実感を言葉に紡ぐ過程
    5 一本の糸で繋がりました!
    5 必要な声だと思う

    2008年6月24日

    読書日記「西の魔女が死んだ」(梨木果歩著、新潮文庫)


     児童書、童話はほとんど読まないのだが、数年前に新聞の読書欄で何人かの童話作家の作品を紹介しているのを見て数冊を購入、そのなかで一番おもしろかったのがこの本。

     童話作家に興味を持っていた娘に紹介したところ、自分のブログに書き込んでいた。
     私もそのうち書こうと思っていたが、映画化されたのを知り、別に追い立てられる必要はなかったのだが、この作品のことを急に書きたくなった。

     中学生になったまい は、登校拒否になってしまい「もう学校には行かない」と宣言する。グループの仲間たちと仲良くするための駆け引きが何となくあさましく思えてきたのでやめたところ、一人ぼっちになってしまったのだ。

     「昔から扱いにくい子だったわ。生きていきにくいタイプの子よねえ」と、単身赴任しているパパに電話しているママの言葉に傷つきながら、自宅から車で1時間ほどの山の中に住むイギリス人の祖母に預けられる。

     木々と草花の庭に囲まれた山荘で鶏を飼い、ノイチゴのジャムを作り、大きなおけに入れた洗濯物を足で踏んで洗い、森のなかにポッコリあいたお気に入りの陽だまりを見つけて"よみがえる"。

     「まい は、魔女って知っていますか」
     祖母が突然、聞いてくる。祖母の母は超能力の力を持つ魔女だったし、祖母もその修行をした。精神を鍛えれば、まい でも魔女になれると祖母は言う。「まず、早寝早起き、食事をしっかり取り、よく運動し、規則正しい生活をする」

     祖母にすっかり乗せられて始まった魔女修行。まい はこう言えるまでに成長する。「おばあちゃんはいつもわたしに自分で決めろと言うけれど、わたし、何だかいつもおばあちゃんの思う方向にうまく誘導されているような気がする」
     おばあちゃんは、目を丸くしてあらぬ方向を見つめ、とぼけた顔をする。

     二人は「死」についても、話し合う。

     「パパは、死んだらもう最後なんだって言った。もう何もわからなくなって自分というものもなくなるんだって」

     「おばあちゃんは、人には魂っていうものがあると思います。・・・死ぬ、ということはずっと身体に縛られていた魂が、身体から離れて自由になるということだと思っています」


     パパの単身赴任先に家族が合流して2年後。祖母の急死で山荘に駆けつけたまい は、サンルームの汚れたガラスに指でなぞった跡を見つける。
     
      ニシノマジョ カラ ヒガシノマジョ ヘ

      オバアチャン ノ タマシイ、ダッシュツ、ダイセイコウ


       WEB検索をしていて、「ほのぼの文庫」というサイトを見つけた。児童書の良書を紹介しているのだが、梨木果歩の作品に出てくる植物の見事なカラーアルバムを楽しむことができる。

     「西の魔女が死んだ」のアルバムでは、まい が最初に祖母とママで作るサンドウイッチにはさんだキンレンカの葉、ジャムにしたワイルドストロベリー、洗濯したシーツを広げて匂いを移すラベンダーの茂み、畑の虫よけに飲ますミントとセージのお茶、作品で大切な役割を果たす朴の木に銀龍草・・・。

     梨木の他の作品「家守綺譚」「からくりからくさ」の植物アルバムもそろっている。たっぷろと楽しませてもらった。

     6月22日付け朝刊に米国バーモント州にすばらしい園芸園を作り、絵本作家としても有名だったターシャ・テューダさん(92)が死去されたという記事が載っていた。「東の国のマジョが死んだ」。合掌!

    (追記:2008/7/4) 映画「西の魔女が死んだ」鑑賞記
      大阪ツインタワーの映画館で見てきた。
     いつも、小説などが映画化されたのを見ると、ガッカリしたり、ヘーと思ったり・・・。
     「小説と映画は、別の作品」という思いを強くするのだが、この映画は梨木香歩の世界をかなりうまく再現しているように思える。
     ブログには書かなかったが、ゲンジという隣人との葛藤を通じて成長していく少女まい の心の動きが映像を通じて、小説以上に伝わってくる。
     シャーリー・マックレーンの娘で日本に12年間住んでいたという、祖母役・サチ・パーカーのおっとりした日本語がよい。母親役・りょうの演技もひろい物。
     山梨県清里高原にロケ用に建設され保存されている「魔女の家」には、東京からバスツアーまで出る評判らしい。
     この庭の花を見ながら、ワイルドストロベリー・ジャムを塗ったパンをカリッと・・・。いささか少女趣味すぎるかな?

    西の魔女が死んだ (新潮文庫)
    梨木 香歩
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    おすすめ度の平均: 4.5
    5 著者の最高傑作!
    4 ポイントは想像力!?
    5 読後感がスゴイ☆
    5 ターシャ・チューダーを思い出す
    5 祖母が死に際に窓に残したまいへの言葉が素晴らしい

    家守綺譚 (新潮文庫)
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    梨木 香歩
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    おすすめ度の平均: 4.5
    5 心に染みる一冊
    5 異界との接点
    5 心に根付く
    5 読み応えあり
    5 日本むかし譚

    からくりからくさ (新潮文庫)
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    おすすめ度の平均: 4.0
    5 魂の奥深く懐かしい世界
    4 心の奥に静かな潤いを感じることのできる佳品
    5 大きな影響を受けた一冊
    3 大人になったときにもう一度読み返したいです
    3 "変容"のとき
     

    2008年6月12日

    読書日記「中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす」(遠藤 誉著、日経BP社)


     チベットでの反政府デモ、それに続く聖火リレー騒動、四川大地震への対応など、連日中国をめぐるニュースが絶えない。それを見聞きするたびに、隣の大国のことをちっとも分かっていなかった自分に気付くことが多くなっている。

     このブログでも紹介した「あの戦争から遠く離れて」という本でも、著者の城戸久枝さんは