久しぶりに本に没頭した。梅田望夫さんの「ウェブ進化論」(ちくま書房)である。リタイア後にHow To本以外で寸時を惜しんで読んだ本はこの本くらいかもしれない。サラリーマン現役時代は某製薬会社の情報システム関連の仕事をしていた。パソコンが勃興を始めたころから激動の10年程度である。そのころ肌に感じていたITの潮流とその後の変化が見事に描かれ、文中にもあるが「ふーん、そうだよね!」とうなづきの連続であった。ITの世界はDog Yearといわれるくらい変化の激しい世界であるが、その動きはムーアの法則とともに今も続いていいるらしい。だから、ITに携わりだしてからの時間は、物理的にはあまり長くないのにずいぶん長年やってきた感じがしている。
dog year
情報技術分野における革新のスピードを表す概念。通常 7 年で変化するような出来事が 1 年で変化すると考える。〔人間の 7 年が犬の 1 年に相当することから〕
この本で筆者は、Googleビジネスを通してインターネットをマイクロソフトが代表する「こちら側」とグーグルが代表する「あちら側」に区分して現状をとらえ未来を予測している。
Googleは「ハーバード大学の生物学科を卒業しエール大学の医学部をでた本職は脳神経外科医のジム・リース(
Jim Reese)という人物を運用部門のトップに据えて、
オープンソース・プロジェクトから生まれたリナックス(
Linux)サーバーを1万台以上使ったシステムであるという。そのあたりに、Googleの「あちら側」文化が現れているように思う。
この本には、Googleが行っている様々な事業が紹介されている。その一つにというかビジネスの中心となっているアドセンス(
AdSense)という事業がある。あまり贅沢をしなければ生活をしていけるだけの年金で暮らしているのでお金を稼ぐという意欲はもうないが、技術的な興味で登録してみることにした。また、この本の中に「恐竜の首」と
「ロングテール」の話が出てくるが、私もGoogleのロングテールの一番先っぽくらいに位置することにしたのである。
ふつうの人よりは少し早い時期に
MP3の楽曲をダウンロード(DL)して収集するようなことをしてきたが、Copy Rightを頑なに守ろうとする「恐竜の首」派のレコード会社などに疑問を持っていたので、広く安く公開することで愛好者が広がるというロングテール派の考えは「あっ、それそれ」というような感じであった。歌手の
Janis Ianは、DLをフリーにしている。決してロングテールに入る歌手ではないが、私は彼女にAgreeする。
インターネットという「不特定多数無限大」の人たちの一人である自分も、インターネットが次世代に移行してきているのを実感している。インターネットがあるから、そしてそれがどんどん進化するから、リタイア後も社会からの疎外感なしに生きていられるのではないかと思っている。
今年に入って自らのブログ・サイト作りに
フローな時間を費やしているが、つぎのような梅田さんのブログのとらえ方に、また「ふーん、そうだよね!」と頷いている。
ブログ 「知的生産の道具」
- 自系列にカジュアルに記憶でき容量に事実上限界がないこと。
- カテゴリー分類とキーワード検索ができること。
- 手ぶらで動いていても(自分のPCを持ち歩かなくても)インターネットへのアクセスさえあれば情報にたどりつけること。
- 他者との間で知的生産の創発的発展が期待できること。
インターネットの世界が今どうなっているのか関心のある方に是非お勧めしたい一冊である。 |
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