1956年夏 海の口牧場のオオウラギンヒョウモン
先月7月12日~14日に八ヶ岳山麓へ行ったとき、国道141号線を清里から松原湖へ向かう途中、海の口を通ったが、私が中学生のころ、そのあたりの牧場で、今は姿を消してしまったオオウラギンヒョウモンが飛んでいたのを思い出した。もう50年以上前のことだ。
オオウラギンヒョウモンは 絶滅危惧種 で現在の産地は中国地方の一部と九州の一部に限られている。
私は小学生、中学生のころ、昆虫少年だった。その頃採集した蝶たちの標本も長く保存していたが、10箱ほどあった標本箱は、引越しの時に状態の良い蝶たちだけを1箱に集めた。その中に「1956年8月23日長野県海の口牧場」というラベルの付いたオオウラギンヒョウモンの♂、♀、裏面(♀)の標本があった。これをさらに小さな標本箱に写し、保存していた。その際、ラベルを新しく書き換えたが、当時のままにしておけばよかったと、今は思う。
1956年(昭和31年)夏、当時、私は中学の3年生で、その中学校の卓球部に入っていた私は、部長先生と仲間10人くらいとで、八ヶ岳山麓の小海線の佐久海の口で夏休みの合宿をした。部長先生が前もって、佐久海の口にある中学校と話を付けてくれていて、合宿中は連日その体育館で、その中学校の卓球部の生徒に交じって練習をした。一週間ほどの合宿だったが、中日に練習休みがあり、3~4名で連れだって、近くの海の口牧場へ行った。もちろん捕虫網は持ってきている。夏の終わり、牧場ではヒョウモンチョウの仲間が多く飛んでいた。どうせウラギンヒョウモンだと思ってとらえてみると後翅縁の銀紋がV字型になっている。オオウラギンヒョウモンだ。次の個体を捉えると、それもオオウラギンだった。個体数も多く、10数頭とらえてもまだ飛んでいた。 (右の写真、標本箱のガラス蓋をはずして撮ろうと思ったが、機密性が高く、開くことが困難だったので、そのまま撮影した。お見苦しいが御容赦いただきたい。)
平成16年(2004年)10月14日発行の依田俊幸さん著「佐久の蝶133種 雑記帳」によれば、オオウラギンヒョウモンが佐久で採集された記録は、1978年「信濃の蝶」(信州昆虫学会)の報告が最後のようである。
同著では、オオウラギンヒョウモンの食草であるスミレは、日当たりのよい裸地や丈の低い草原に良く生育している。そのような場所は人里近く、よく人の手の入るところであるから、近年少なくなったり放置されてしまったところが多い。この環境の変化が絶滅の最大の原因になっていると思えるとされている。