私が横浜市保土ヶ谷区に住んで、初めてクロマダラソテツシジミを見たのは、2020年9月30日、県立保土ヶ谷公園の近くの明神台公園だった。地面の近くに咲く、ヒメツルソバに来ていた本種をツバメシジミとばかり思って撮影して、自宅に戻ってパソコンでそのファイルを開いてみると、なんとクロマダラソテツシジミであった。そうとは思っても見なかったのでワンカットしか撮影していない。
パソコンで検索してみると、近年分布を北へ拡大していて、今年(2020年)は三浦半島あたりでも多く発生しているようだとの情報があった。翌々日、クロマダラソテツシジミを狙って再度明神台公園へ行って見たが、柳の下に泥鰌はいなかった。2020年10月13日に三浦半島をドライブし、荒崎海岸でソテツに絡むクロマダラソテツシジミを数頭撮影している。
少し古いが、2001年4月に発行された「離島大好き 最終ガイド 沖縄・宮古編」(蝶研出版) という書には、1992年に那覇空港で発見、はじめて記録された。その後、1993年まで秋から早春にかけて発生が繰り返されたことが確認されたが、その後途絶えた。wikipediaによると、「幼虫はソテツなどソテツ属の若葉を食べる。インドから中国南部、インドシナ半島、マレーシア、インドネシア、フィリピン、台湾に分布し、21世紀には日本の南西諸島から関東地方で見られるようになったが、おそらく南西諸島以外では越冬できず、夏から初冬に侵入して増殖することを繰り返している。」と記されている。私が所持している「原色日本蝶類図鑑」(川副昭人・若林守男 共著 白水隆 監修 保育社 1976年初版)にはこのチョウの名はない。
但しこのチョウはアカボシゴマダラ(中国産亜種)やホソオチョウといった人為的に日本に持ち込まれたチョウではなく、自力で北へ分布を広げてきたのだ。
余談になるが、学生時代の友人たちと、2005年から2015年まで毎年1月か2月にグァム島へゴルフをしに行っていた。その折に、本種を何回か撮影している。
話を元に戻すと、保土ヶ谷区の私が住んでいるところの近くで、私が初めて本種を撮影した以降、機会あるごとに、小さな公園の小さな花壇や、住宅の玄関に置かれた鉢植えのソテツを注意して観察するようになった。
2020年に県立保土ヶ谷公園の近くでクロマダラソテツシジミを見たのは、9月30日だったが、その後、11月2日、14日にはなんと、私が住む集合住宅の玄関の植栽に咲くローズマリーの花に来ていた。
以降、15日~17日まで毎日、そして12月1日には近所の公園で羽化したばかりのような新鮮な個体を含めて複数の個体に会えたのがこの年の最後だった。
さて、翌2021年も、9月10日に本種を確認したが、それは擦れた個体だった。近くの小さな公園で白いセンニチコウの花に止まり、吸蜜を始めた。クロマダラソテツシジミとの再会である。翅に破損があり、擦れている。どこから飛んできたのだろうか?近くで発生したのだろうか?と疑問を持たせる。少なくとも2頭いた。少し近所を歩いてみたところ、個人のお宅の玄関に鉢植えにされたソテツがあり、そこにも1頭来ていた。
2021年の秋は、クロマダラソテツシジミが毎日のように、撮影を楽しませてくれた。玄関に鉢植えのソテツを置かれたお宅の奥さまにはお目にかかって撮影することの許可をいただいた。
しかし、2022年は一度もクロマダラソテツシジミを見る機会はなかった。やはり、関東では世代を繋ぐ越冬は出来なかったのだろうと思った。
2023年は2年ぶりに10月3日にクロマダラソテツシジミを近所の公園に咲くセンニチコウで見つけた。この年は数こそ少なかったが、近所の今まで観察したところだけでなく、2kmほど離れた保土ヶ谷公園に咲くセイタカアワダチソウや、その近くの住宅の中に植えられたソテツの木で確認できている。
以下は2024年の自宅近くにおけるクロマダラソテツシジミの観察記録である。10月2日から11月22日までの間、撮影を楽しむことが出来た。
私の住むところから半径1kmほどのところで、各種の花に来る本種を見ることが出来た。シチヘンゲ、ニラの白い花、黄色いメランポジウム、白いセンニチコウ、ストロベリー・フィールズと呼ばれる赤いセンニチコウ、紅いサルビア、アオイサルビア、ローズマリー、ハナスベリヒユといった園芸種として育てられている小さな花に、普通種のように来ていた。
今年の秋も楽しませてくれることを待っている。
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1.2024年10月2日 この年初めてのクロマダラソテツシジミ
帷子川にかかる常盤橋のたもとに植えられているシチヘンゲの花に、イチモンジセセリとチャバネセセリが集まっていた。ふと見ると、下の方で咲くシチヘンゲでクロマダラソテツシジミを見つけた。
SONY Cyber-shot RX10 Ⅳ 8.8-220mm f/2.4-4 20.1 Mega Pixels
プログラムオートで撮影 ( f4 1/1250秒 220mm ISO200 )
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2.10月4日 自宅近くの小さな公園で
自宅近くの小さな公園は、2023年はその小さな花壇にセンニチコウが植えられ、その花にはしばしば本種が来ていた。ところが昨年(2024年)はセンニチコは刈り取られてヒャクニチソウが植えられていた。郵便局に行った帰り道、その小さな公園の広場の小さな花壇の反対側にある植え込みを見にいく。そこは近所のかたがいろいろ花を植えられている。そこで、この年2頭目の本種を見つけた。
Canon PowerShot G7X 8.8-36.8mm f/1.8-2.8 20.2 Mega Pixels
プログラムオートで撮影 ( f2.8 1/1000秒 37mm ISO125 )
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3.10月24日 個人のお宅の玄関先で -1
自宅へ戻る途中にソテツの鉢植えを玄関先に置かれているお宅がある。そこで3年ほど前には何回か本種を観察することが出来た。ソテツの鉢植えの近くの植えられていたツルニチニチソウの葉に本種が止まっていた。
Nikon Z50 NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
シャッタースピード優先オートで撮影 ( f4 1/1000秒 105mm ISO100 )
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4.10月27日 区役所の花壇で
横浜へ行こうと駅へ歩く途中、区役所の花壇にシジミチョウが来ていた。その中にクロマダラソテツシジミがいた。たまたまポケットに入れていた Canon SX620 HS というコンデジで撮影した。
Canon PowerShot SX620HS 4.5-112.5mm f/3.2-6.5
プログラムオートで撮影 ( f4.5 1/1000秒 9mm ISO80 )
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5.10月31日 個人のお宅の玄関先の鉢植えのソテツに
前述したお宅の玄関先に置かれた鉢植えのソテツに新鮮な美しい本種が止まっていた。本種は裏面で雌雄を同定するのは難しいが、多分♀と思う。
Canon PowerShot G7X 8.8-36.8mm f/1.8-2.8 20.2 Mega Pixels
プログラムオートで撮影 ( f2.8 1/1250秒 9mm ISO250 )
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6.11月1日 信号を待つ間に
区役所の花壇に本種が来ていないかと、105mmマクロレンズを付けた Z50 をぶら下げて家を出た。国道の交差点を渡ろうと信号待ちをしているとき、ふと後ろを見ると、飲食店のプランターに咲く花(ハナスベリヒユ)に本種が止まっていた。少し傷んでいた。
Nikon Z50 NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
シャッタースピード優先オートで撮影 ( f6.3 1/500秒 105mm ISO100 )
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7.11月3日 小さな公園で -1
この日は Z18-140mm のレンズを付けた Nikon Z50 を携えて、クロマダラソテツシジミを探しに散策。自宅近くの小さな公園の植込みで、白いニラの花に来ていた本種を発見した。♀のようだ。
Nikon Z50 NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR
プログラムオートで撮影 ( 6.3 1/500秒 140mm ISO200 )
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8.11月3日 小さな公園で -2
前の写真と同じ個体。開翅してくれた。少し擦れて鱗粉が落ちていた。
Nikon Z50 NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR
プログラムオートで撮影 ( 6.3 1/500秒 140mm ISO160 )
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9.11月3日 個人のお宅の玄関先で -2
鉢植えのソテツにはいなかったが、ツルニチニチソウの葉にきれいな♂が止まっていた。
Nikon Z50 NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR
プログラムオートで撮影 ( 6.3 1/500秒 140mm ISO125 )
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10.11月7日 区役所玄関の植込みで -1
10月27日に区役所の花壇に咲く黄色いメランポジウムの花に来ていた本種を思い出してそこへ行ってみた。そこにいたのはヤマトシジミだけで、本種はいなかった。ところがチラチラと飛んでいるそれらしき姿が目に入った。花壇とは別に、区役所の玄関の両脇に、木の樽のような囲いがあり、そこに花が植えられていてシジミチョウが飛び交う姿が見えた。行って見ると白いセンニチコウの花で本種が吸蜜していた。
SONY Cyber-shot RX10 Ⅳ 8.8-220mm f/2.4-4 20.1 Mega Pixels
プログラムオートで撮影 ( f3.2 1/500秒 125mm ISO100 )
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11.11月 7日 区役所玄関の植込みで -2
これは区役所の玄関である。多くの人が出入りする。この玄関の両脇に樽に植えられた花々が咲いていた。
SONY Cyber-shot RX10 Ⅳ 8.8-220mm f/2.4-4 20.1 Mega Pixels
プログラムオートで撮影 ( f3.2 1/2000秒 10mm ISO100 )
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12.11月 7日 区役所玄関の植込みで -3
そこには、青と赤のサルビア、白と赤のセンニチコウが咲いていた。玄関から出て来られた職員らしき方に、「ここでチョウの写真を撮らせていただいてます」とお断りした。
Nikon Z50 NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
シャッタースピード優先オートで撮影 ( f5 1/500秒 105mm ISO100 )
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13.11月7日 区役所玄関の植込みで -4
開翅した♂。この樽に植えられた花々にはヤマトシジミ、ウラナミシジミ、イチモンジセセリに混じって複数のクロマダラソテツシジミが来ていた。
SONY Cyber-shot RX10 Ⅳ 8.8-220mm f/2.4-4 20.1 Mega Pixels
プログラムオートで撮影 ( f4 1/2000秒 155mm ISO250 )
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14.11月7日 区役所玄関の植込みで -5
赤いサルビアに来た♂。
SONY Cyber-shot RX10 Ⅳ 8.8-220mm f/2.4-4 20.1 Mega Pixels
プログラムオートで撮影 ( f4 1/2000秒 129mm ISO200 )
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15.11月8日 区役所玄関の植込みで -6
翌日も区役所へカメラを持って向かう。しゃがみ込んで撮っていても区役所に来る人は気に掛けないで通り過ぎる。これは白いセンニチコウの花に来た、裏面の美しい一歩寒冷期型に近づいた個体だった。
Nikon Z50 NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
シャッタースピード優先オートで撮影 ( f6.4 1/640秒 105mm ISO100 )
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16.11月8日 区役所玄関の植込みで -7
開翅した♂はきれいなブルーだった。2024年は近所の小さな公園の花壇に咲いていたセンニチコウが他の花に植え替えられていて、それまではそこで良く見られた本種が見られなかった。本種はセンイチコウの、特に白い花が好きなようである。
Nikon Z50 NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
シャッタースピード優先オートで撮影 ( f5 1/500秒 105mm ISO110 )
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17.11月8日 区役所玄関の植込みで -8
玄関の左右に樽の植込みがある。各種の花が咲き、彩もきれいだ。次つぎと本種が現れる。
Nikon Z50 NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
シャッタースピード優先オートで撮影 ( f5.6 1/500秒 105mm ISO110 )
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18.11月11日 区役所玄関の植込みで -9
その後、小さな公園や、帷子川の散策路を歩いても、本種は見られなかった。区役所玄関前に日参することになる。ここは北風が吹く少々寒い日でも区役所の建物の陰に隠れ、南からの日が差すので、暖かい。左側にボケてしまったが、飛び去る♀が見える。
Nikon D5300 TAMRON AF90mm f/2.8 Di macro
絞り優先オートで撮影 ( f5 1/500秒 90mm ISO200 )
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19.11月12日 区役所玄関の植込みで -10
美しい♀が開翅してくれた。
Nikon Z50 NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
シャッタースピード優先オートで撮影 ( f3.2 1/500秒 105mm ISO220 )
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20.11月12日 区役所玄関の植込みで -11
寒冷期型の特徴がでたきれいな裏面だ。白いセンニチコウの花は枯れ始めているのもあるが、元気の良い花には、本種が飛来する。
Nikon Z50 NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
シャッタースピード優先オートで撮影 ( f3.3 1/500秒 105mm ISO200 )
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21.11月13日 集合住宅玄関前の植込みで
午後、買い物から戻ってくると、私が住む集合住宅の玄関前の植込みに咲くローズマリーの花に、本種の姿を見つけた。幸いG7をポケットに入れていたのだが、上手く撮ることはできなかった。2~3年前もここで見かけている。
Canon PowerShot G7X 8.8-36.8mm f/1.8-2.8 20.2 Mega Pixels
プログラムオートで撮影 ( f2.8 1/1250秒 9mm ISO250 )
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22.11月16日 区役所玄関の植込みで -12
青いサルビアに来た完全無欠な個体。
Nikon Z50 NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
シャッタースピード優先オートで撮影 ( f8 1/500秒 105mm ISO450 )
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23.11月16日 区役所玄関の植込みで -13
美しい♀だった。
Nikon Z50 NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
シャッタースピード優先オートで撮影 ( f7.1 1/500秒 105mm ISO560 )
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24.11月17日 区役所玄関の植込みで -14
赤いサルビアに来た♂。
Nikon Z50 NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
シャッタースピード優先オートで撮影 ( f7.1 1/500秒 105mm ISO220 )
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25.11月17日 区役所玄関の植込みで -15
赤いセンニチコウ(ストロベリーフィールズ)の花に来た♂。
Nikon Z50 NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
シャッタースピード優先オートで撮影 ( f7.1 1/500秒 105mm ISO360 )
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26.11月17日 区役所玄関の植込みで -16
翌日から強い寒気の影響で、全国的に気温が急降下し、関東では20日が寒さの底となった。日本の異常に高かった気温も、11月中旬としては40年ぶりの寒さという気候となる。その前日、日当たりの良い区役所の玄関前で、美しい♀が白いセンニチコウの苞の中にある1mmほどのごく小さなな黄色い花に口吻を延ばし吸蜜していた。
Nikon Z50 NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
シャッタースピード優先オートで撮影 ( f7.1 1/500秒 105mm ISO180 )
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27.11月22日 区役所玄関の植込みで -17
この日は快晴で、歩くと汗ばむような暖かい日となった。近所のスーパーへ行くついでにちょっと区役所に寄ったところ、ぼろぼろのクロマダラソテツシジミの♂がセンニチコウで吸蜜していた。持っていたG7Xで撮って記録に残した。これが2024年最後のクロマダラソテツシジミとなった。
Canon PowerShot G7X 8.8-36.8mm f/1.8-2.8 20.2 Mega Pixels
プログラムオートで撮影 ( f5.6 1/1250秒 37mm ISO125 )
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