読書日記「少年譜」(伊集院静著、文藝春秋刊)
伊集院 静
文藝春秋
売り上げランキング: 54444
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やっと読むことができた「トンネル」文芸評論家の北上次郎が、読売新聞の書評やNHK・衛星放送の番組「週刊ブックレビュー」で、この本を激賞していた。
その番組を見て、芦屋市立図書館公民館分室にあるのをホームページで確認、午後になって借りに行ったら、すでに貸し出しずみ。油断大敵でした。それでもなぜか翌日、借りることができた。
北上次郎によると、著者・伊集院静は「少年小説の名手」だという。そういうジャンルが本当にあるかどうかは知らない。だが〝少年〟をテーマにしたこの短編集は、静ひつでいて、凛とした情緒にあふれている。そのうえ、なにか洗練されたセンスの良さも感じさせてくれる文章である。
・「少年譜 笛の音」
捨て子を養子にした老夫婦に育てられ、寺で修行していた少年・申彦はふとした縁で植物生態学の権威である博士の養子にと請われる。少年は養父母と一緒に生きたいと願うが、少年の将来を願う養父母や寺の和尚にさとされて東京に行き、苦労を重ねながら植物学者として大成する。
申彦博士は、久しぶりにふる里を訪ねて養父母の墓に参り、義父が作ってくれた横笛を吹いた。
陽が傾きはじめたのに気づき、博士は立ち上がると、もう一度ゆっくりと墓石を見つめ、かすかに微笑み、山道を下りていった
やわらかな山の風が博士の背中にやさしく吹きよせていた
やわらかな山の風が博士の背中にやさしく吹きよせていた
・「古備前」
鮨屋として独立したイサムのもとに見習いで入った少年・悠(ユウ)は、イサムが独立した時に人間国宝の陶芸家から送られた古備前の器を誤って壊してしまう。
イサムはカウンターに入ると、悠の肩をそっと叩いた。・・・
『ユウ、欠けらを拾おうか』
イサムはそう言って悠としゃがみ込んだ
悠の肩が震えていた
『職人は人前で泣くもんじゃない』
悠の涙は止まらなかった
『ユウ、欠けらを拾おうか』
イサムはそう言って悠としゃがみ込んだ
悠の肩が震えていた
『職人は人前で泣くもんじゃない』
悠の涙は止まらなかった
イサムは、小学校時代に学校の大切な壺を壊してしまうが、校長先生がやさしく許してくれたことを思い出していた。
各篇に共通している座標軸は、一心不乱に人生に挑戦する少年と、その少年を自らの幼少体験を大切にしながら見守る大人との交流ということだろうか。
直木賞作家である著者は、朝日新聞書評欄のインタビューでこう話している。
子供は国の宝。血がつながっていなくても大人みんなの宝という発想が必要
自我が確立する少年期で最も学ぶべきは、他人の痛みを共有できるかどうか。だがその痛みがいや応なくやってくるのが人生。そのことを書きたかった
自我が確立する少年期で最も学ぶべきは、他人の痛みを共有できるかどうか。だがその痛みがいや応なくやってくるのが人生。そのことを書きたかった
この本の題字、著者名、各編のタイトルは、のびやかな書体で書かれている。それが、文章のリズムと不思議にマッチし、心をなごませる。
女流書道家・華雪の作品である。
・余談・本屋大賞のこと。
今年の本屋大賞で2位となった「のぼうの城」(和田竜著、小学館)をやっと図書館から借りることができた。
なぜかえらく評判が高くて購読希望者が殺到、借りられるまで半年以上待たされたが、読後感は「おもしろくないとは言わないけれど、ウーン」という感じ。
石田三成の大軍を苦しめた北条氏配下の城をまかされた「のぼう様(でくのぼうの愛称という)」の人物設定、戦略はそれなりに楽しめるが、なにかもうひとつ盛り上がりに欠ける。
どうも最近の本屋大賞は、出版社と大手書店が共同で繰り広げる多彩な宣伝で売れた本が選ばれる傾向があるようだ。
今年の1位になった「告白」(湊かなえ著、双葉社)にいたっては、出版社と首都圏の書店員が「湊かなえプロジェクト」というチームを立ち上げ、その会議の結果で表紙、タイトルまで決めた、という。芦屋市立図書館の購読申込者を先日見てみたら、176人。借りれるまで、数年はかかりそうだ。過熱人気も、ここまでくると、いささか鼻につく。
本屋大賞はこれまで、小川洋子の「博士の愛した数式」(新潮社)や恩田陸の「夜のピクニック」(新潮社)など、すばらしい作品を選んできた。だが、来年からはちょっと眉につばをつけて、用心しながら見ていこうという気になる。
和田 竜
小学館
売り上げランキング: 866
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本屋が薦めるのって......お高いラノベ
読者層を選ばない
新世代の時代小説
乗り出したらやめられない
湊 かなえ
双葉社
売り上げランキング: 108
双葉社
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嫌悪感だけが残った第一章は素晴らしいが・・・・
現代社会へのアンチテーゼ
本屋大賞には。。。
もう一章「執筆者」を足しては?
博士の愛した数式 (新潮文庫)
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小川 洋子
新潮社
売り上げランキング: 6388
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「ああ、静かだ」胸にじわっとくるのもありよね。ちょっとしんみりしたい、本。
やさしい気持ちになりました。
陳腐
大好きな本です。
夜のピクニック (新潮文庫)
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恩田 陸
新潮社
売り上げランキング: 6405
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苦痛!後味の良い小説
事実は小説より奇なり
歩行祭というイベントが青春時代の想い出とマッチしていた
青春小説