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2008年2月 5日

隠居、ネット時代の「知的生産の技術」を考える④「かく」

 「ネット時代の『知的生産の技術』を考える③」では、梅棹流読書法は、このネット時代ではどうなるかについて考えてみた。今回は、「知的生産の技術」第7章「ペンからタイプライター」について考えてみたい。

 梅棹さんは、この章にかなりのページ数を割いておられるが、要するに、日本語というやっかいな言語体系のなかで「かく」ことの効率化の話である。効率化を求めて、鉛筆→万年筆→ローマ字でのタイプライター→カナモジタイプライター→ひらがなタイプライターと発展させた話である。推定であるが、その変遷の期間は 20 年余りと思われる。

 「知的生産の技術」が出版されてから、10 年後の 1979 年に東芝のJW-10 というワードプロセッサが発売された。当時、私は新薬メーカーの経理部員として、新薬開発部門の生産性を見ていた。新薬の認可を受けるためには、トラック1台分くらいの書類を厚生省に提出しなければならなかった。(現在は、デジタル化した資料になっていると思う) この書類の手書きでの作成、印刷、校正、修正には薬剤師の資格を持った女性達を中心に多大な労力を要していた。
 JW-10の発売を知り、一も二もなく購入を勧めたことを覚えている。価格は、確か450万円くらいしたと思う。JW-10については、次のPDF文書に詳しくでているので参照してほしい。
日本語ワードプロセッサーの誕生とその歴史

 その後のワープロの進化は、皆さんご存知の通りである。1988年の11月に、梅棹さんの編集で、「私の知的生産の技術」という本が出版されている。この新書には、岩波新書創刊50年を記念した募集論文「私の知的生産の技術」の入選作12篇に、梅棹さんのエッセイが付いている。そのエッセイの中で、ワープロについて次のようにふれられている。
 『知的生産の技術』のなかでは、日本語の現在の表記法のままではタイプライターにのらないことをのべ、ひらがなタイプライターなど、その点を克服するたのくふうについてのべた。それがワープロの出現によって事情は一変したようである。(中略)
 とにかくワープロによって日本語は機械にのった。人びとは悪筆コンプレックスになやませれることもなく、むつかしい漢字にふりまわされることもなく、らくらくと文書をたたきだすようになった。この数年間におけるワープロの普及ぶりは、まったくおどろくばかりである。これもまオフィスばかりか、家庭のなかにまで着実に浸透しつつある。

 余談であるが、梅棹さんの文書を引用させていただいてパソコンから入力しているときに気がついたが、梅棹さんはできるだけ漢字を使わないようにされているのではないかと思う。はじめ、それはひらかなタイプライターを使っておられたせいと思っていたが、どうやらそうではないらしい。先の引用の続きに、このような文章がある。
 しかし、ワープロによって問題のすべてが解決したのではけっしてない。ワープロによって、事務革命は完成したわけではないのだ。近代文明語としての日本語の問題点は、単に機械化がむつかしいというばかりではなく、学習の困難さ、国際化への障害など、いくつも難点がある。ワープロの発達は問題を解決しないで、むしろ先送りしたともいえる。

 これに関して思い出すことがある。富士通のOASYSのワープロで親指シフトのキーボードが、一時流行したことである。(今も愛用されている方も多いようだが。)ワープロの日本語入力の主流は、QWERTYキーボードでローマ字入力だとおもう。機械式英文タイプライターのキー配列は、早く打ちすぎると機械の方が追いつかなくて故障してしまうことから, QWERTY配列が、de facto standard になってしまったようだ。私も、完全ではないが、QWERTYキーボードのブラインド・タッチを習熟してしまった。
残念ながら、IT の国際言語は英語である。ネット時代になって、日本語の国際化はますます困難である。

私の知的生産の技術
私の知的生産の技術
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梅棹 忠夫
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