2008年1月 3日

隠居、ネット時代の「知的生産の技術」を考える①

 1969年に初版がでた梅棹忠夫の「知的生産の技術」は、まだかなり売れているようである。 引退したときに持っていたビジネス関係の書籍はほとんど処分したが、この新書はまだ本棚に残っていた。
 セピア色に変色したこの本を引っ張り出してきたのは由がある。最近読んだ梅田望夫の「ウェブ時代をゆく」の第五章「手ぶらの知的生産」冒頭に、この本が3ページを割いて紹介されていたからである。
 知的生産ということばを作った梅棹さんは、知的生産を以下のように説明する。
知的生産とよんでいるのは、人間の知的活動が、なにかあたらしい情報の生産に向けられているような場合である、とかんがえていいであろう。この場合、情報というのはなんでもいい。知恵、思想、かんがえ、報道、叙述、そのほか、十分ひろく解釈しておいていい。つまり、かんたんにいえば、知的生産というのは、頭をはたらかせて、なにかあたらしいことがら―情報―を、ひとにわかるかたちで提出することなのだ、くらいにかんがえておけばよいだろう。この場合、知的生産という概念は、一方では知的活動以外のものによる生産の概念に対立し、他方では知的な消費という概念に対立するものとなる。

 あさはかな知恵を働かせながら続けている私のブログにも、1日100人以上の方が訪ねてくれるようになった。アクセス解析サービスの Artisan で内容を見ると、やはり How to 的なエントリーへの訪問が多いようである。訪問して、「なーんだ、つまらん」と帰る人がほとんど思うが、いくらか役に立っている部分もあるのかもしれない、と考えると、ひろい解釈で知的生産をしているのかもしれない。 現在のネット時代を背景に読み返してみると梅棹さんが苦労して作り上げられた知的生産の技術が、パソコンの前に座るとほとんどのものが容易に手に入るようになっている。だが、知的生産の意義そのものはまったく変わらない。
 今更、知的生産を目指すような歳ではないが、私にとってはブログは公開日記と思っているので、梅棹さんが日記を航海日誌(英語では、log ですね)的とする次のような考え方と合致する。
日記というのは要するに日づけ順の経験の記録のことであって、その経験が内的なものであろうと外的なものであろうと、それは問題でない。 日記に、心のこと、魂のことをかかねばならないという理由は、なにもないのである。(p.163)

 ブログを続けることに、この本で勇気をもらった。梅田望夫さんも先の本で触れておられるように、
個人が、しらべ、読み、考え、発見し、何か新しい情報を創出し、それをひとにわかるかたちで書き、誰かに提出するまでの一連の行為(「ウェブ時代をゆく」 p.146)
である「知的生産」の仕方を、40年前の「知的生産の技術」を、今のネット時代で実施するとどのようななるのかを、浅薄な知識は承知の上でシリーズで模してみたいと思う。それが、どんな意味があるのというようなことは問わないで欲しい。なにしろ隠居日記に書いておきたいだけだから。

知的生産の技術
知的生産の技術 (岩波新書)
梅棹 忠夫
岩波書店 (1969/07)
売り上げランキング: 3727

トラックバック

» 隠居、ネット時代の「知的生産の技術」を考える②:発見の記録 from Atelier Shuhei Weblog
 このエントリーは、私の同年代ではパソコン恐怖症で、いまだに昔の情報整理にこだわっておられる方も多いので、死ぬ前に、革命が起こっているネット時代を覗いてみ... 続きを読む

» 隠居、ネット時代の「知的生産の技術」を考える④ from Atelier Shuhei Weblog
 「ネット時代の『知的生産の技術』を考える〓」では、梅棹流読書法は、このネット時代ではどうなるかについて考えてみた。今回は、「知的生産の技術」第7章「ペン... 続きを読む

» 隠居、ネット時代の「知的生産の技術」を考える⑤手紙 from Atelier Shuhei Weblog
 今回は、「知的生産の技術」8章の「手紙」をネット時代では、どのように考えるかについてふれてみたい。 梅棹さんは、「知的生産の技術」を発刊された1969年... 続きを読む

» 隠居、ネット時代の「知的生産の技術」を考える⑥日記と記録など from Atelier Shuhei Weblog
 私と同じように、「知的生産の技術」の現代的意味を読み解いておられる中学校の理科の先生がおられる。学校の先生らしく、深く深く読んでおられる。多分、そのよう... 続きを読む

» Atelier Shuhei Weblog の一年を振り返って from Atelier
 今年も、多くの方々に、Atelier Shuhei Weblog に訪問いただ... 続きを読む

コメント

>edaatsさん
コメントありがとうございます。

MTのVer4も狙っているのですが、何かきっかけがないと動きにくい。
先日のシステム・ディスクご臨終まじかのときに、Viataにしようかなともおもったのですが、私のサイトへの訪問者では、まだ3%くらいですので、急ぐことはないかとおっとりと構えています。

FC2というブログ・サービスがが良さそうですね。

私も少しは知的生産性を高めた成果を発揮したいです。
2008年、じっくりやりましょう。
書き書きも、少し復活させます。^_^;

最近は変なところで勇気が出なくなりました。MTもVer4にしたいのですが・・・・・。

今年もどうぞよろしくお願いします。m(__)m

コメントする

(初めてのコメントの時は、コメントが表示されるためにこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまでコメントは表示されませんのでしばらくお待ちください)